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星野陽子の金持ち母さん投資術

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地方の空き家にも手が打てる!分散ホテルという方法

目次

3月の繁忙期が終わりましたが、みなさまの物件は満室となりましたでしょうか?

「今年は退去が少ない」と言う大家さんが私の周りには多かったです。借主が引っ越しを考えたとしても、「引っ越し料金が高額なこと」や、「業者に引っ越しを請け負ってもらえない」という話をよく聞いたので、レオパレスの違法建築問題で引っ越しを要請された人たちなども多くいて、引っ越し業者が人手不足なのかもしれません。

空室対策については、「大空室時代」での空室対策①入居付けの場合「大空室時代」での空室対策②退去を防ぐ場合でも以前書きましたので、参考にしてください。

今回は全く別のアプローチから、空室対策の方法について考えてみようと思います。

アルベルゴ・ディフィーゾ(分散ホテル)とは

現在、単身者世帯は増えているものの、人口が減少して空室率が上昇しつつあり、空き家問題に自治体や民間企業だけでなく、個人の大家もさまざまな方法で取り組んでいます。
地方の空き家については、家賃を補助するなど自治体の援助がないと難しいのではないかと思っていました。

そんなときに、2019年1月6日の日経新聞に「アルベルゴ・ディフィーゾ」(以下、AD)というイタリアで生まれたスタイルの宿が紹介されている記事を読みました。
もしかしたら、観光地ではない地方の空き家でも、この方法が利用できるのではないかと思います。

ADとは「分散ホテル」という意味で、町全体をホテルと見なします。
フロント機能を持たせた建物を本館とし、町に点在する空き家を客室として使います。

宿泊先の提供だけでなく、ホスト(経営者)はゲスト(宿泊者)を案内したり、ゲストのためのイベントを開催したりします。
ゲストは提携しているレストランで食事をしたり、イベントに参加したりして、旅行者として滞在を楽しむと同時に、地域住民とふれ合うことができるのです。

新聞に紹介されていたイタリアのあるADでは、トリュフ狩りをしたり、料理教室を開催したり、食後に歌やダンスをしたりしていました。

ADという仕組みを応用すれば、田舎の空き家を上手に活用できる可能性があるのではないでしょうか。一つのエリアに複数の空き家を持っている経営者なら、ADを作ることができると思います。

長年住んでいる人たちは「何もない」と思っているような場所でも、別の場所から来た人たちにとっては、「自然の中でリラックスできる」「星空がきれいに見える」といった新鮮な経験や、新たな発見があるかもしれません。

ほかにも地場野菜の収穫や、海や川での遊び、地元の食材を使った料理教室などのイベントがあったら、さらに盛り上がりそうです。

ドイツで家を借りて森や湖を楽しんだ思い出

ADではありませんが、私は子どもたちが小さい頃、ドイツの田舎の貸し家に1~2週間滞在したことがあります。

小さな湖から徒歩10分ぐらいの所にある一軒家を借りて、私と元夫と2人の子どもたち、義理の両親の6人で泊まりました。
朝は義父が焼き立てパンを買ってきてくれて、義母が家の裏にある小さな牧場から買ってきたミルクやバターや卵、地元の野菜やフルーツを使って料理をしてくれました。

日中は家の周りの森を散策したり、家の庭に置いてある卓球台で卓球を楽しんだり、家のオーナー家族と話をしたり、車でスイスやフランスへデイトリップをしたりしました。遠く離れて暮らしていた私たちは同じ時間を一緒に楽しみ、良い思い出になりました。

欧米の人たちは、昔からそうやって一つの場所に長く滞在して現地の生活を楽しんだりしていますが、日本でもだんだんそのようになってきている気がします。

日本における「分散ホテル」

実はADは日本にもいくつか存在しています。多くは田舎で作られているのですが、都心でもADを作ることが可能です。

先日、東京都台東区谷中にある「Hanare」というADに行ってきました。フロントは、Hanareの宿泊棟と少し離れたところにある、もともとは萩荘という名の「HAGISO」という、築60年の木造アパートを改修した「最小文化複合施設」の2階にあります。

HAGISOにはカフェ、ギャラリー、レンタルスペース、ホテルのレセプションとショップ、設計事務所が入っています。Hanareに宿泊する人は、HAGISOの「HAGI café」で朝ごはんを食べることができます。

階段は上り下りをするとぎしぎしと音を立てますが、そんな木の古さも、おしゃれで文化的で素敵な空間に感じられ、居心地良く過ごすことができました。

この古いアパートはもともと解体が決まっていたそうですが、解体の前にアーティストたちがグループ展を開催したところ、大勢の人たちが訪れたことがきっかけで、改修されることになったそうです。

大切にされている古い建物に、私も価値を感じました。

分散ホテルでの楽しみ方

HAGI CAFEでは、宿泊をしなくても食事をすることができます。ちなみに和定食はドリンクとセットで850円。一つひとつの食材にこだわったお料理が、素敵な和食器で提供されます。

宿泊客は、このカフェ以外にも提携先の飲食店を「ホテルのレストラン」として利用でき、町の銭湯が「ホテルの大浴場」として使えます。Hanareのそばにある、観光客に人気の谷中銀座商店街は「ホテルの土産店」として機能しています。

ほかにも尺八を作ったり、人力車に乗ったり、着物を着て町を散策したり……というような、日本文化や町を堪能できるような要素がたくさんあります。

それぞれの出来事に、運営している人たちの宿泊客への心づかいが伝わってくるようで、不思議な心地よさを感じました。
海外から旅行でいらっしゃる人も多く、きっと温かな「おもてなし」が感じられたのではないかな、と思います。

Hanareは、京成線日暮里駅から徒歩5分。日暮里は成田空港から京成スカイライナーを使えば36分で着くので、海外からの旅行者には非常に便利です。

不動産賃貸業にインバウンド事業を取り入れるときの注意点

国内外の旅行者が多く訪れる場所は、混み合うような場所ほど、地価も上がっています。

物件を持っている経営者は、不動産賃貸業だけでなく旅館業や飲食業などほかの事業にチャレンジすることで、空室問題を解決できるだけでなく、人を喜ばせる事業で利益を得ることができるのではないでしょうか。

気をつけなくてはならないのは、地震などの災害があった場合についてです。外国観光客向けの事業ではしばらくは収入が見込めないので、余裕を持って取り組まなくてはなりません。
2011年の3月に東日本大震災が起こった後、震源地ではない東京都内でさえ、外国人向けシェアハウスは数カ月間ほとんどが空室になってしまったと聞きます。

また、不動産賃貸業(大家)では成功している人たちが、飲食業など違う業種では失敗するという例はよくあるため、AD事業を行う場合にも注意が必要です。

ADとして宿泊業や飲食業を行う場合、1,000万円以上売り上げると課税業者になります。また、非課税の家賃とは違うのでその点も注意しましょう。

空き部屋や空き家の活用方法として、今回はADという方法を取り上げました。

HAGISOのような古い建物は、解体せずにリノベーションしたり、民泊として使ったりすることも使い道の一つです。視野に入れておくのも良いでしょう。

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著者紹介

星野 陽子
星野 陽子

不動産投資家。著者。特許翻訳者。
東京都出身。外資系メーカー、シティバンク勤務を経て、イスラエル国籍のユダヤ人と結婚。子ども二人に恵まれるも離婚。フリーランスとして在宅で翻訳の仕事をしながら、シングルマザーとして子ども達を育てた。東欧からの移民の子で、14歳から働き、資産ゼロから財産を築いたユダヤ人の義父からは不動産投資を学び、投資物件(6億円)などの資産を築いた。著書に『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』『ユダヤ人大富豪に学ぶ お金持ちの習慣』『貧困OLから資産6億をつかんだ金持ち母さんの方法』がある。オンラインサロン「マネサロ」主宰。 オフィシャルブログも定期更新中。

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