星野陽子の金持ち母さん投資術
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2018年9月26日(水)
「大空室時代」での空室対策①入居付けの場合
現在、日本では人口が減少しているのに賃貸の部屋は増え続けており、「大空室時代」と呼ばれるほど空室が増えている状況です。アパート経営も難しくなってきています。これほどの空室時代において、不動産経営をするうえで空室対策は必要不可欠な施策となります。今回は空室対策について、特に入居付けに関してどのような対策ができるかご紹介したいと思います。
首都圏でも空室率が上がっている理由
まず、空室対策についてお話する前に、日本の現状について述べたいと思います。
実は2015年以降、首都圏でも空室率が急上昇しています。原因はアパートの供給過剰と言われています。2015年1月1日より相続税及び贈与税の税制が改正され、相続税が増税となったことから、現金を持っているよりも賃貸物件を持っている方が評価額が下がるため節税になるとして、新築アパートがたくさん建てられたからです。すでに金融緩和をしているところに2016年以降のマイナス金利導入で金融機関が不動産を購入する人たちに積極的に融資をしているという背景もあります。
横浜市でアパートを持っていた不動産投資家の知人はどんなに入居付けをがんばっても、新築アパートを建てる会社があらゆる手を使って入居者をつけるので、中古物件での入居付けが非常に難しくなったため、アパートを売却したそうです。
不動産投資は本当に危険か? そうとは言い切れない4つの理由
このように関東の都市圏でも空室を埋めるのが難しい時代です。空室対策の本や特集記事はたくさんありますし、空室対策のコンサルタントという人たちもたくさんいますが、ちょっとがんばったり、コンサルタントに相談したりすれば「空室だらけの物件がすぐに満室になる」と安易に考えるのはよくないことだと思います。しかし、だからといって、「不動産投資は危険だ!」と言って検討すらしないのは極端ではないでしょうか。悲観して不動産投資をやめる必要はないのではないかというのが、今の私の正直な気持ちです。私は次のように思っているからです。
① 外国人をいまだに受け入れていないオーナーが多いが、日本に旅行や、留学しに来たり、働いたりする外国人が増えているので、そういう人たち向けに部屋を貸せるのであれば優位に立てる。
② 「所有」にこだわらなくなっている人たちが増えている。
③ 競合となる大家で、不勉強な地主や相続でアパート経営をしている人たちが割といる。(ただし、新築アパートが続々と建っている場所で、さらに建設をしている会社があの手この手で入居者を奪い合っているようなエリアだと、競合が大家というよりそういった業者になるので、難しいかと思います)。
④ 空室率と一括りに言っているが、利便性のよくないところの有り余っている土地に相続税対策として多くのアパートが建てられているケースが多々ある。そういう場所は大変かもしれないけれども、それ以外の場所であれば、大騒ぎするほどのことではないかもしれない。
つまり、変化する賃貸ニーズをしっかり読み取り、競合する物件よりも自分の物件を魅力的なものにしていくことで、満室経営も不可能ではないと思うのです。簡単なことではないかもしれませんが、チャレンジする価値はあると思います。
入居付け対策に入る前に準備しておきたい3つのこと
厳しい環境ではあるけれども、チャンスはあるのではないかという気持ちで、空室対策について書いてみます。
自分がオーナーであるという心構えを整える
オーナーが空室対策の当事者であり、リーダーです。管理会社や不動産会社に関わる人たちは、あなたの物件に関してはある意味他人事です。ですから、あなた次第で協力的にもなれば、無気力な対応になることもあります。協力してくれている人たちといい関係を築くのが大切です。結果がなかなかでなくても、文句を言ったり怒ったりせず、どうしたら部屋が埋まるのかを一緒に考えて、行動してもらうようにするのがいいと思います。
一番の空室対策が物件の質であることを念頭に置く
一番の空室対策は、物件を購入する時に、空室になりにくい場所に空室になりにくい物件(部屋)を買うことかと思います。少しでも良い物件を購入することが、何よりの空室対策であるという当たり前のことを念頭に置いておきましょう。
政策や人口予測を知る
すでに人口が減少している自治体では財政力が弱くなっていて、自治体のサービスが不十分になってきているところがあります。例えば都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画では居住を誘導すべき区域や居住誘導区域外からの移転を支援する措置などが定められています。人口の予測は各自治体のホームページで確認できることもあります。今後、人が減らないと予測される場所に物件を持つと空室に悩まされにくいかと思います。
入居付けに取り組む際に注意すべき12のポイント
①諦めない
空室になりにくい場所にある空室になりにくい物件は、高額であったり、利回りが低かったりするので、普通の人が購入する物件はどこかで妥協をしているケースがほとんどではないでしょうか。人口が少ないのに賃貸の部屋が過剰に供給されているエリアなどに空室になりやすい物件を買ってしまった場合、損になったとしても売却して、やり直しをした方がいい場合もあります。しかしながら一旦物件を購入したら、そのエリアで、建て替えをしない限りその物件で入居者の募集をするしかないので、諦めたり、腐ったり、怒ったりせずに、入居付けに取り組んでみることをお勧めします。
私は10年以上いろいろな空室対策をとっており、友人や知人の不動産投資家から入居付けのアイデアを聞いて試してきました。その経験から次のようなことをお伝えしたいと思います。
②入居付けに良い時期を狙う
入居付けに良い時期というのは、賃貸募集の繁忙期(1月から3月)です。異動になった人やその家族、4月に入社する社会人や入学する大学生など多くの人が部屋を探すこの時期は、できる限りのことをして空室を埋めます。オーナーにとって好条件で部屋を貸すことができやすい期間でもあります。これを逃すと入居付けが大変になり、家賃を下げたり、広告料を増やしたりしないとならないかもしれません。私の地域ではファミリー向け物件はこの期間以外にも若干の動きがあるようです。繁忙期以外では、家賃交渉に応じたり、プレゼントをつけたりということをしています。
③競合物件を調べる
地域の不動産会社に以下のようなことをヒアリングして、競合物件に勝てるか調べます。
・賃料に競争力があるか(周りの物件よりも割高でないか)
・設備が劣っていないか
・募集条件はどうか(敷金礼金など)
もし劣っているようでしたら、許容できる範囲で賃料を下げるなどの対策を行いましょう。
④どの不動産会社に募集を任せるかを厳選する
入居付けをする不動産会社に委託して入居者を募集するのが一般的ですが、入居付けに強い会社に依頼する、また多くの不動産会社に依頼をする、というのが大切かと思います。
不動産会社と結ぶ契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」があります。一般媒介契約をすれば多くの会社に入居付けを依頼することができますが、各社における優先度は低くなります。専任媒介契約は一社に仲介をしてもらいますが、オーナーが入居者を見つけるのも可能です。専属専任媒介契約は一社だけが仲介でき、オーナーが入居付けをすることもできません。自主管理をしている人を含む多くの人は一般媒介にして多くの不動産会社に依頼しています。入居付けを少しでも多くお願いしたくて、営業の人と飲みに行ったり、ごちそうをしたり、プレゼントをしたりするオーナーもいます。
私は2棟目を購入した後、21戸中3戸が空いたままで、なかなか入居者が決まりませんでした。そこで思い切って、満室であることが多い1棟目の管理会社に2棟目の管理もお願いすることにしました。一社にすることで、管理会社が倒産した時などのリスクがありますが、入居付けに強い管理会社の方がいいと思ったのです。するとあっという間に満室になりました。
この管理会社は、空室になると自社で入居募集もしますが、募集図面を協力会社に配りに行きます。入居の契約が成立となると仲介手数料の家賃1カ月分が管理会社に入ります。客付け業者のために私は広告料を出しています。
④広告料は家賃の1~2カ月分を出す
その広告料についてですが、具体的には、私は広告料(ADとも言われています)を家賃の1カ月あるいは2カ月分を出しています。2カ月出す時には、仲介してくれた会社に2カ月分の家賃の使い方を任せます。つまり、2カ月を広告料として受け取る会社もあれば、1カ月をフリーレント(家賃を1カ月無料にすること)にし、1カ月を広告料にする会社もあります。後者の会社は、1カ月をフリーレントにする方が成約しやすいという考え方です。物件供給過剰のエリアでは広告料を5、6カ月出さないと入居者が決まらないという話を聞いています。
⑥募集図面(マイソク)は想定している入居者にアピールできるようなものを作成する
募集図面では物件(アピールできる設備、窓からの景色、仕切りを取り外せば大きい部屋にできるなど)やエリアの魅力(駅や小学校やコンビニやスーパーに近いなど)を伝えます。私は管理会社に作ってもらっていますが、不動産会社の図面は同じようなものが多いので、自分で工夫して作っている人もいます。図面も写真も想定している入居者にアピールできるようにします。
⑦ネットに露出させる
インターネットで物件を検索する人が多いので、物件検索にかかりやすいようにすることと、魅力的な写真を掲載してもらえるようにします。
⑧ネット検索にかかるために家賃と共益費を分けるなどの工夫をする
例えば家賃7万2千円、共益費3千円で募集している物件を「家賃の上限7万円」の検索にかかるよう家賃7万円、共益費5千円で募集するなど工夫をします。入居者に人気の設備をつけるのもいいかと思います。
⑨物件に旗を立てるなど現地でアピールする
空室がある物件では「入居者募集中」のサインや旗を出してもらっています。近所で物件を探している人たちが割といるからです。
⑩部屋の魅力的な写真を撮る
部屋を明るく見せるために、仕切りを外して光をたくさん入れて写真を撮ったこともあります。カメラに詳しい人から「露出補正をするといい」というアドバイスをもらいました。また広く見せるために、広角レンズを使い、対角線方向に撮影をしました。そしてデータを客付け業者に渡したりします。私の物件の魅力的な写真を掲載してくれている不動産会社に聞いたところ、女性店長さんが普通のデジカメで写真を撮っているのですが、窓の外に上半身を目いっぱい反らして撮ったり、窓やドアを開けて室内を明るくして撮ったり、たくさんの写真を撮って良いものを選んでいるとのことでした。
⑪募集条件は特典をつけるか、条件を緩くするかの工夫をする
初期費用を抑えたい人がいるので、敷金と礼金をゼロにしたり、フリーレントを1カ月つけたり、成約特典としてプレゼントをしたりということをしている人たちがいます。私の物件では、礼金はゼロですが、敷金は1カ月分もらうようにしています。成約特典として余計な設備はつけていません。設備が多ければ多いほど修繕に時間とお金がかかるからです。
募集条件はできる限り緩くした方が内見者をより多く獲得できます。私の物件ではペット可にしたり、ファミリー向け物件でもルームシェア可にしたり、高齢者でも保証人がいれば可にしたり、生活保護受給者も可にしています。ただし管理会社の方針で水商売は不可としています。
⑫内見の準備を済ませておく
客付け業者がせっかく内見者を連れてきてくれた時に、部屋が整っていないと成約につながりません。成約につながりやすい部屋には、内見者を案内してくれる業者が多いので、部屋をきれいにしておきます。
壁紙、畳、フローリングがきれいな状態であること。クリーニングもきちんと済ませてあること。
空気の入れ替えをし、トイレや洗面台やキッチンの流しの水を流して変なにおいがしないようにしておくことを心がけています。
内見用に空室にはキーボックスを設置し、内見者を連れてきてもらいやすいようにしています。
ブレーカーは給湯器の凍結が心配される冬を除いて、照明をすべてつけておきブレーカーを下げておきます。内見時にブレーカーを上げるとすべての照明がつくようにして部屋が明るく見えるようにするためです。
内見用にモデルルームを作ったり、ホームステージングと言って部屋に家具を入れたり、飾り付けをしたりしておく人もいます。私もいつか試してみようと思っています。
内見は入居付けにおける一番大切なイベントです。ここで決めてもらうために、できることは可能なかぎりするようにしましょう。
入居付けを諦めないで! ダメな部屋だと思っても粘る価値はある
ダメな物件と決めつけてすぐに諦めない!
入居付けがうまくいかないと物件に問題があるのかと諦めてしまうかもしれませんが、ダメと決めつけずに、世の中いろいろな人がいるということを覚えておきましょう! 条件を緩めたり、壁紙を張り替えたりするだけで入居が決まったりすることもあるので、魅力のない部屋だと思っても魅力を生み出す努力をしてみましょう。
狭い部屋は本当にダメか?
狭い部屋は、確かに入居がつきにくいです。私も、15平米程度の狭いワンルームは供給過剰かと思い手放したことがありましたが、立地が良ければ、寝るだけでいいという人たちもいますし、最近はモノを持たない主義の人たちも増えているので(スマホがあればなんでもできるという感じ)一概に狭い部屋だからダメとは言えないかと思います。狭い部屋でもアピールできるポイントをしっかりアピールすれば、一部の人のニーズに応えることができると思います。
駅から遠い部屋は本当にダメか?
多少遠くても広めの部屋(または安めの部屋)がいいという人たちもいます。駅から離れていたほうが静かでいい、という人もいます。そういう人たちに向けてアピールできるようにしましょう。
事故物件は本当にダメか?
事故物件でも気にしない人たちや、安ければいいという人たちもいます。また、条件を緩くしてとにかく一度入居者を入れてしまえば、次の募集では告知義務がなくなるので、また入居付けがしやすくなります。空室が続くからと安値で手放すようなことはせず、いろいろと試してみる価値はあると思います。
以上、思いつく限りの空室対策をご紹介しました。このように、入居付けが難しいと思われる物件であっても、考え方や、やり方次第ではマイナスポイントを魅力に変えることもできます。すぐ諦めずに、満室になるように頑張ってみてください。
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著者紹介
星野 陽子星野 陽子
不動産投資家。著者。特許翻訳者。
東京都出身。外資系メーカー、シティバンク勤務を経て、イスラエル国籍のユダヤ人と結婚。子ども二人に恵まれるも離婚。フリーランスとして在宅で翻訳の仕事をしながら、シングルマザーとして子ども達を育てた。東欧からの移民の子で、14歳から働き、資産ゼロから財産を築いたユダヤ人の義父からは不動産投資を学び、投資物件(6億円)などの資産を築いた。著書に『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』『ユダヤ人大富豪に学ぶ お金持ちの習慣』『貧困OLから資産6億をつかんだ金持ち母さんの方法』がある。オンラインサロン「マネサロ」主宰。 オフィシャルブログも定期更新中。