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『融資地獄』連載

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第4回 死ぬ思いでローン返済するくらいなら、払わなくてもいいって本当!?

目次

スルガ銀行、レオパレス21……。名だたる企業が今ニュースに登場し、惨憺たる不動産業界の現状が露呈しています。しかし、これらは不動産業界において公表されていなかった氷山の一角に過ぎません。

本連載では、全ての不動産投資家がこれらを対岸の火事として受け止めず、自らが融資地獄への一途を辿らぬよう、事件の発端を振り返りながら、万が一の際の救済方法を伝授します。

※本連載は2019年4月、幻冬舎より発売予定の書籍『融資地獄「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ不動産投資ローンの罠と救済策 』の内容を一部抜粋・改編したものです

無理を重ねて借金返済するのは正しい判断ではない

「ヤバい、月々の返済が苦しい」

赤字が続くようになったあげく、月々のローン返済が困難になったとき、絶対にしていけないこととは何でしょうか。

新築シェアハウス「かぼちゃの馬車」のケースでは、毎月安定収入が入るといわれてサブリース契約を結んでいたにも関わらず、運営会社のスマートデイズ社の破綻によって家賃収入がゼロになりました。

月々のローン返済は数十万円に及び、それをサラリーマン大家さんが給与から補填するという事態となったのです。

家賃収入がいきなり無くなるというケースは稀ですが、空室の増加やリフォーム費用の発生などで、所有するアパート・マンションの収支が合わない状態に陥ることは珍しくありません。

借りたものは必ず返さなければならない。それが最低限のモラルである――このような固定観念を持つ方は多いですが、それは基本的には正しい認識です。

しかし、生活を顧みずに無理をして、別のところから借金を重ね、家族や知人に迷惑をかけてまでローン返済をしているのであれば、それは大変危険な状態だといえます。

人は追い込まれると正常な判断ができなくなる

多額の借金に追われ、返済に行き詰ってくると、ほぼ全員といっていいほど認知能力が下がり、正しい思考ができなくなります。
「不安やストレス、焦り、緊張、パニックは、人を愚かにする」ということは、皆さんもご理解いただけるのではないでしょうか。

危機感を抱いた時点で、大半の人がすることはインターネットにおける情報収集です。このとき、インターネット記事の中で、根拠があって信憑性が高そうなものを選んでいくと、自然と弁護士の先生が書いているサイトに行き着くことになると思います。

このとき、高等教育を受けた人であっても、弁護士の先生が「何を言っているのかさっぱりわからない!」という状況に陥るのがほとんどでしょう。なぜなら、弁護士の先生の中には会話の水準を下げたり、話の目線を下げたりすることが不得意であったり、話の受け手への配慮が不足がちな方もいらっしゃるからです。

また、間違った説明を書いてしまうことを避けようとするあまり、記事の内容は、「正しいが、不親切でわかりにくい」専門用語が多くなってしまいがちです。

法律は日本語のようで日本語ではなく、相当に噛み砕かないと素人には全く理解できないのが普通です。
その結果、精神的に追い込まれている人間にとっては理解が難しい……端的にいうと「言葉もわからない、話も見えない、いったい何をいいたいのか意図も不明な呪文やお経、または暗号文」のような代物になってしまいがちなのです。

弁護士の先生側で、相当に「伝える努力」をしていただかないと、一般の人からすれば「南無妙法蓮華経法蓮」と、「ありがたそうだが内容がさっぱり理解できない、お経のようなもの」になってしまいます。

危機感を抱き、救いを求めてインターネット上を何時間も彷徨っても、そこに出てくるのは、読んでもさっぱり理解できない呪文や暗号文でしかない、という状況に直面します。

これが「返済でしくじりそうになって、ヤバい状況に陥ったサラリーマン大家さん」に多くみられるケースです。

「わからないこと」そのものがリスクであり、わからないことをわからないまま放置して、無自覚に前に進むのは地獄に飛び込むのと同じです。

これは、不動産投資でも「弁護士に人生の大事を依頼する場合」でもまったく同じといえます。

大切なのは、無理な借金返済への固執をやめること

今のところ毎月のローンは、貯金や給与、賞与のやりくりで何とか返済できていても、このまま続けば新たな借金をして対応しなければならない。そうなると金銭的な負担が重くのしかかり、地獄に落ちそう……。

そんな状況であれば、まずは「無理をして返そうとすること」をやめましょう。

多くの人は、子供の頃から「借りたものは必ず返さなければならない。それが最低限のモラル」という教育を受けてきています。

しかし、返済地獄から上手に抜け出すためには、その「モラル」を疑うことから始めなければなりません。

借金は生活を極限まで切り詰めたり、消費者金融からお金を借りたり、家族や友人に頼るなど、無理をしてまで支払うものではありません。
ましてや「死んで責任を取ろう」などと、考えることは大間違いです。

そもそも無理をすること自体が間違っているのです。
お金を借りるときに「返済できる」と判断しても、実際に払える状況になければ、お金はもう返せないのです。

返せる可能性がほぼないのに金策に走り、家族や友人まで「必ず返すから!」とお金を無心するのは、家族や友人を騙すことになります。そうなると家族との関係も崩れてしまいますし、友人を失うことになりかねません。

実に多くの方が、そこまでして借金を返すために頑張ってしまいます。
しかし、借金問題を扱う弁護士からすれば、「“(到底返せない)借金であっても、無理をして周囲に迷惑をかけてまで返さなければならない”というのは誤った固定観念であり、捨て去るべき偏見」というのが常識です。

もちろん、「借りた金は必ず返さなくてはいけない」という考えは正しいものです。普通に生活をして、周囲に無理や迷惑をかけずに返済できるのなら、借りたものはきっちり返すべきです。

しかし、そうしたモラルにこだわるよりも、「返せなかったら無理をしない。対応すべきだと考えない」という諦めの思考を持つこともまた大切です。

素直に「もう返済できない」と認めるのはなかなか難しいかもしれませんが、それもまた大切な判断なのです。

寝る間を惜しんでアルバイトをしたり、家族を働かせたり、別の借金を作ったり、友人を巻き込んだり……ということをしているのであれば、それはすぐに止めてください。

一度立ち止まって「もっと別の打開策を探すべきではないか」という風に考えてみましょう。

【執筆協力】
畑中 鐵丸
【法律監修】
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所

 
埋まらない空室、度重なる修繕、重いローンの負担……。
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著者紹介

小島 拓
小島 拓

一般社団法人首都圏小規模住宅協会 代表理事
大学卒業後に不動産会社の営業職に従事し、以来10年以上にわたって、不動産投資のプロとして個人投資家の資産形成をサポートしてきました。しかし不動産投資の初心者を狙った悪質な業者の話を耳にすることや、自身が勉強不足なまま、先行き不安な物件に投資しようとする人を目の当たりにするにつれ、投資用不動産業界をもっとクリーンで、多くの人が正確な知識を持って安全に投資できるようにする必要があるという思いが募り、2018年度より、不動産業者としての立場に一旦区切りをつけ、投資用不動産業界の健全化を目的とした「一般社団法人首都圏小規模住宅協会」を発足しました。不動産投資による被害や失敗を減らしていく取り組みを随時行ってまいります。

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