不動産投資の最新動向
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2021年1月31日(日)
不動産会社が「売れ残り物件」を奪い合う、知られざる理由とは?
「売れ残り物件」とは、売りに出したものの、1年や2年以上といった長期間、売れない状態が続いている物件です。新築マンションや中古マンション、戸建て、区分所有の部屋と、物件の種類を問わず、売れ残り物件が発生します。
買い手の個人からは不人気な売れ残り物件ですが、実は、売れ残り物件をあえて狙う不動産会社が多く存在し、なかには奪い合いになるケースもあるのです。
売れ残ってしまった物件にもかかわらず、なぜ業者が群がるのか? その背景を解説しましょう。
物件が売れ残ってしまう理由とは?
「なるべく高値で売りたい!」というオーナーの希望が叶わず売れ残ってしまう物件には、主に以下のような特徴があります。
①築年数が古い
売りに出した時点で建物の築年数が古い中古物件の場合、売れ残ってしまう可能性が高くなります。
築年数が古い物件は、居住するにしても賃貸に出すにしても、使用するにあたって大規模な修繕が必要となります。売り出しの物件価格が割安でも、不動産購入後における修繕費用の負担額が読めない築古物件は、買い手から敬遠されてしまいます。
そもそも、購入しようとしても、古すぎる物件には融資が降りません。ローンが降りない物件は、購入可能な人自体がかなり限られることになり、買い手の幅を狭めてしまいます。
②土地や建物が大きすぎる、または小さすぎる
不動産の売買において、土地や建物の広さは非常に大切です。
単純に、広ければいいというわけではありません。広すぎる土地には、固定資産税が高くなるという側面もあり、特に都市部の広い物件は、買い手が見つかりにくい傾向にあります。
逆に、小さすぎる土地や物件は、使いづらいので好まれません。売却したい土地が狭すぎる場合は、隣地を買い上げて広くしてから売るといった工夫が必要です。
③最寄駅が遠い
多くの買い手は駅から近い土地・物件を好むので、駅から遠い不動産は売る難易度が高くなります。特にマンションにおいては、住まいとして検討する場合、近隣エリアの生活利便性がかなり重視され、「駅から遠い」という理由は敬遠される大きな要因となります。
ただし車社会の地域では、「駅からの距離」よりも「スーパーや病院などの生活利便施設からの距離」のほうが重視される傾向も見られます。
④建築基準法違反の物件である
建築基準法違反の物件も、売却が難しくなります。
建物が建てられた当初は建築基準法に則っていたとしても、法改正によって法規違反となる場合があります。このような物件を「既存不適格」と呼びます。
既存不適格だけでなく、増改築したことで建ぺい率や容積率をオーバーしてしまったという物件もあります。これも建築基準法違反の物件で、新規のローンが基本的に降りないというデメリットがあります。そのため、買い手を見つけるのはかなり難しくなるでしょう。
⑤事故物件である
「騒音問題」「ご近所トラブルが多い」「自殺や事故があった物件」「近隣に反社会的勢力の事務所がある」――状況はさまざまですが、こういった事故物件も当然売れ残ります。売るとしても、相場よりかなり低い金額で手放す覚悟が必要です。
事故物件である事実は、不動産会社が買い手に告知する義務があるので、ごまかして売ることもできません。
業者が奪い合う「売れ残り物件」とは?
前述した「売れ残り物件」に該当する場合、物件はなかなか売れません。
しかし、一定期間売れ残ってしまい、価値が下がった物件に群がる不動産業者や大手ハウスメーカーは多く存在するのです。
不動産会社が売れ残り物件を狙う理由を解説しましょう。
思惑①「まわし物件」として利用したい
長期間売れ残っている物件にもかかわらず、業者が「提示価格より高い金額で売れます!」と売主にアプローチしてくる……こんなケースには注意が必要です。
業者の本音としては、物件を売る気はさらさらなく、専任媒介契約を結んで「まわし物件」として利用しようという魂胆があるのかもしれません。
「まわし物件」とは、ほかの好条件な物件を際立たせるために、当て馬として買主に見学させる物件のこと。「専任媒介契約」とは、売却の依頼を1社の不動産会社に任せる契約のことです。専任媒介契約を結べば、対象の売り物件を他社から手が出せないように、顧客を囲い込むことができます。
専任媒介契約を結んだ業者は、売れ残り物件を「まわし物件」として活用します。すなわち、本命物件の引き立て役として、たくさんの人に「売れ残り物件=まわし物件」を見学させるのです。
売れ残り物件の売主からすると、物件に人気が集まったように見え、「高値で売却できるかも……」と期待してしまいますが、まわし物件が成約に至る可能性はほとんどありません。専任媒介契約を結んだ業者は、売主が諦めた時期を見計らって、数百万円もの大幅値引きをしてほかの業者に流すことを考えているのです。
思惑②二束三文の値段で買い取りたい
売れ残り物件のオーナーは、とても弱気になっています。長期間問い合わせすらないケースであれば、なおさら及び腰になっているでしょう。
不動産会社は、そのような売主の思考を読んで、格安での買い取りを狙ってアプローチしてくることがあるのです。
業者にとって、弱気になったオーナーをうまく丸め込むのはお手のもの。「これ以上長引くと曰く付き物件だと思われて、売れる可能性はゼロになりますよ」「業者買い取りだと、個人に売るよりはかなり安くなるのが通常です」……そんな嘘か本当かわからない根拠でオーナーに値切り交渉を迫ってきます。
結果、売主が折れてしまえば、二束三文での買い取りが成功するわけです。売却を半ば諦めているオーナーの場合、「不動産投資ローンや住宅ローンの支払いにいくらか充てることができれば、手元に残るお金が少しでもかまわない」と考える人もいるからです。
どんなに長く売れ残っている物件でも、安く仕入れて販売価格を安く売り出せば、買い手は必ず現れます。
くわえて、不動産会社は最低限のリフォームで物件の魅力を高めるバリューアップのノウハウを持っています。販売して売却利益を出す算段は十分にあったうえで、タイミングよく売れ残り物件にアプローチしてくるのです。
オーナーを騙す不動産営業マンの思考回路については、過去のコラムでも詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
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思惑③「担ボ」で儲けたい
「担ボ」とは「担当者ボーナス」の略で、不動産業界で使われる隠語の一つです。
住戸を販売する仲介業者の営業マンに対し、オーナーから仲介手数料とは別に個人への成功報酬として支払われる謝礼金を、「担ボ」と呼びます。
悪質な不動産営業マンは、売れ残り物件を抱えたオーナーの弱気につけ込み、「担ボの支払いを条件に、物件を優先的に仲介します」と価格交渉を持ちかけるケースがあるようです。
いうまでもなく、担ボの要求は、所属する会社に対する営業マンの背任行為です。このような取引を持ちかけてくる担当者は、非倫理的な行為を平気で行なう人間ですから、甘い誘いに思えても、絶対に乗ってはいけません。
なお、「担ボ」をはじめとした不動産業界の隠語については、以下の記事でも詳しく解説しています。
不動産業界の実態を知って慎重な取引を
売れ残り物件というのは、悪質な不動産会社からカモにされやすい物件です。
売れ残り物件を抱えるオーナーとしては、不動産会社から買取相談の声がかかると、「これまで売れる気配がまったくなかった物件が、やっと売れるかもしれない!」と、前のめりになってしまいがち。
ここで大事なポイントは、そんなときこそ冷静になって、自分にとって最適な売買がどんな条件なのかを確認し、ブレずに判断することです。
売り出した物件が売れ残り物件になった後、業者から突然「買い取りたい」と連絡があった場合、まずは疑いの目で見るようにしましょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。