石川貴康の超合理的不動産投資術
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2019年1月24日(木)
「お金は無いけど不動産を買いたい」という相談への答えは「●●が先!」
不動産投資をしたことがない方から共通して質問されることがあります。
その質問は、「不動産を買いたいけど、お金がない。どうすればいいですか?」というものです。
この質問に対する私の答えは決まっています。「お金を稼ぎ、貯金するのが先です。お金がないのに不動産投資をするというのは薦められません」というものです。
もちろん、ストレートには言わずに、優しく、オブラートに包んで言います。
私はいろんな場所で、「稼ぐ力、貯金する力ができてから不動産投資をすべき」と繰り返し述べています。
そもそも投資とは、自分で稼ぎだした富の再活用であって、ゼロからは何も生まれないと考えるからです。それに、ある一定のお金が用意できない人が不動産投資をするなんてハイリスクだと考えています。
実際私も、貯金して、その金で恐る恐る買い始めたのです。
それではなぜ、「お金が先か」を私なりに述べてみます。もちろん、反対の人もいるでしょう。でも、一つの意見として聞いてくださいね。
不動産投資をするにはそもそも「リスク対応力」を身につけることが必須
不動産投資というのは、それなりのリスクがある投資になります。
金額が大きいので、なにか起きると対応が大変になる恐れがつきまといます。
リスクに対応する力がないと危ない投資なので、「リスク対応力」を身につけたあとに投資をすべきだというのが私の持論です。
では、リスク対応力とはなんでしょうか。私はふたつあると思っています。
ひとつは、「お金を稼ぐ力」です。もうひとつは「お金をコントロールする力」です。それでは、ひとつずつ解説しましょう。
不動産投資の「リスク対応力」のひとつは「お金を稼ぐ力」
不動産投資は大きなお金が動きます。投資金額は少なくて数百万円から大きくて数億円、数十億円のお金が必要です。
こうした多額のお金を自己資金で賄えるのは限られた人でしょう。
自己資金で買えることを前提とすると、やはり稼ぐ力がないと、そもそも買えないわけです。
また、全額自己資金で投資できない場合は、当然金融機関に融資をしてもらう必要が生じます。
金融機関は保守的ですから、融資を検討する際、そもそもどれくらいの収入がある人なのかを厳しく見てきます。
収入が安定しない場合は融資対象になりませんし、それなりの金額が稼げないと相手にされないのです。
最近でこそ、フルローンという言葉が一般化し、物件価格の全額が融資されることもありますが、今まではそうではなかったのです。
少なくとも頭金10%は自己資金がないと、そもそも融資の俎上にもあげてもらえなかったのです。
しかも、10%は最低限で、通常は30%や50%の自己資金を入れてくれと言われたものです。
また、金融資産がどれくらいあるのかも重要な指標でした。
貯金があることが当然で、しかも数千万単位の金融資産があることが要求されたものです。
もし返済が滞った際は、金融資産から返済ができるかどうかも審査の対象でした。
はっきり言えば、不動産投資というのはある時期までは、稼ぐことができる人々に限られた投資だったのです。
稼ぐ力があれば、そもそも投資余力があり、返済が滞った場合でも回収可能な人として評価されて融資がついたのです。
融資されない場合は、買うことができなかったのです。
差別的と言えば差別的ですが、もしもの時に稼ぐ力がないと投資家も金融機関も不幸になるのですから、仕方ない面もあると思います。
逆に言うと、もし何かあった時に家計が破たんしない人ができる投資が不動産投資だということもできます。
私が不動産投資を始めた2002年は、サラリーマンが不動産投資するというと金融機関に胡散臭く見られたものでした。融資は門前払いで、しかたなく現金で初めてのワンルームを買ったのです。
私自身も大きな借金は怖いので、必死に稼いで現金買いを繰り返しました。
手持ちの現金で買えば、もし何かあっても投じたお金を失うだけで、大きな借金が残ることもなく、なんとか立ち直れるだろうと考えたのです。
その後1棟物の購入に進み、大きな金額のローンを組んでいきましたが、本業はやめず稼ぐ力を継続的にアップさせました。
おかげで融資は通りやすくなりましたし、なにか起きてもリカバリーできるようになりました。
これは失敗談ですが、東日本大震災で複数の物件が被災した際、地震保険に入っていなかったため、修繕は数百万円になりました。
保険はなかったのです。すべて自己資金での修繕になっても、何とか乗り切れました。
不動産投資は大きな金額が動きリスクも高いので、稼ぐ力は維持し、もしもの時にも破たんしない力を身につけたうえで、稼ぐ力を金融機関に示していきましょう。
優良顧客として融資をしやすくしてもらうことで、継続的に物件を買い続けていくことが可能になるのです。
だから、私はリタイアを勧めません。本業で稼ぎ続け、そのお金のプール先のひとつとして不動産を選ぶのです。
稼ぐ力が弱い時点で一発逆転を狙うような投資姿勢は、大きなお金が動く不動産投資では怖いと思います。
不動産投資の「リスク対応力」のもうひとつは「お金をコントロールする力」
しかし「稼ぐ力」が弱いからといって、不動産投資をあきらめる必要はありません。
貯金をすればいいのです。貯金ができるということは、自分の稼いでいるお金の「入」と「出」をコントロールする力があるということです。
「貯金をする力」があるなら、その力で種銭、頭金を貯めて、地道に増やしていけばいいのです。
貯金ができるということは、リスクに備える意味でも重要です。つまり、「リスク対応力」のもうひとつは「お金をコントロールする力」なのです。
不動産投資は、順調に行けば収入が増えることでしょう。
しかし、その増えた収入を贅沢や遊興に使ってしまうと、あとで大きな資金需要があった時に対応ができなくなります。
やはり、それ相当に残すことをしなければならず、入った金額を全部使いきらずにプールするストイックな姿勢が必要になるのです。
自分の贅沢にお金を使わなくとも、不動産ではそれなりにお金が流出します。
税金は大きなインパクトがあり、最後に税金を支払えるだけのお金を残しておかねばなりません。急な修繕もありますし、借入金は待ったなしで返済しなければなりません。
もし、修繕や退去でお金が入らない時に、固定資産税や所得税、法人税を支払わなければならないとなると、貯金を取り崩さざるを得ません。
結局不動産収入にできるだけ手をつけずにプールする、ということが必要になります。
私は怖くて不動産収入を贅沢に使うことができませんし、生活費に入れることもしていません。
ひたすら貯金し、余裕ができれば新たな投資に振り向けるのです。
その上、お金をコントロールできれば貯金も増えますから、金融機関に対しては信用力を積み上げることになります。
定期積金なども設定して、「この人は贅沢せず、コツコツとお金を貯めていくことができる地道な人だ」との評価をいただければ、融資をしてもらいやすくなります。
お金をコントロールする力は、金融機関への信用力のアップにもなるのです。
ですから、私は物件を買うと必ず修繕積立の意味で、物件ごとに定期積金を始めます。そうした姿勢は、信用に繋がっているようなのです。
不動産投資は、規模が大きくなっていくと融資を活用していくことが当然になるので、金融機関の信用を勝ち取るためにも「お金をコントロールする力」の結果として「貯金する力」が重要です。もちろん、ここで貯まった貯金は、何かあった時のリスク資金として使えます。
どこまで行っても、不動産投資は「お金を稼ぐ力」と「お金をコントロールする力」が必須の投資なのです。
その意味で、「不動産を買いたいけど、お金がない。どうすればいいですか?」という不思議な質問への答えは「稼ぐ力をつけるのが先!」であって、あわせて「お金をコントロールする力」をつけるべきだということなのです。
おもしろくもなんともありませんが、「お金を稼いで」、「貯金して」、そのうえで投資しましょう、というのが私の信条です。
私のような考えはだいぶ保守的らしく、太い物件をオーバーロンとかでどんどん買っていくことが良いという風潮もありました。
しかし、私はそうした姿勢には組みせず、地味に、地道に、ゆっくりと自分の身の丈にあった投資で増やしていくことが重要だと今でも思っています。
つまらないかもしれませんが、やっぱり不動産投資は怖い面を持っているので、保守的にならざるを得ないのです。みなさんは、どうでしょうか?
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など