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2度目の決算報告延期からレオパレス問題を振り返る

目次

株式会社レオパレス21は9月9日、11日に発表予定だった2021年3月期第一四半期決算の発表を9月末まで延期。当初は8月7日の発表予定でしたが、監査手続きの遅れなどで9月11日に延期しており、2度目の延期。そして決算報告にて、ソフトバンク傘下企業から巨額出資を受けることが発表されました。

買収に至るまでに何があったのか、当記事ではレオパレス問題について振り返ります。

2度目の決算延期の背景

2度目となった決算延期の理由についてレオパレス側は、新型コロナウイルスの影響で、緊急事態宣言の解除後も時差出勤や在宅勤務を続けている中、希望退職への応募により決算に関わる担当者が想定以上に減少し、決算プロセスに支障をきたしたため、と説明しています。

要するに物理的に手が回らなくて間に合わない、というのです。

なぜ、そんなことになってしまったのでしょうか。

レオパレスの前期(2020年度3月期・2019年4月〜2020年3月)の業績は、売上高が4335億円(前年比14.2%減)、営業損益が364億円の赤字(前年は73億円の黒字)、純損益が802億円の赤字(同686億円の赤字)となっています。2017年3月期には200億円を超える黒字となっていたのが、2期連続の赤字です。

同社は構造改革の一環で、6~7月に1000人の希望退職者を募集し、1067人から応募があったといいます。これが、同社の説明でいうところの「決算のプロセス」に支障をきたすことになりました。

・2020年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
https://www.leopalace21.co.jp/ir/library/pdf/2020/4Q/kessan_tanshin.pdf

レオパレス21は、土地を持つオーナーに営業をかけて新築アパートの施工契約を勝ち取り、建てたアパートをサブリース契約で管理する手法で、猛烈に業績を伸ばしていました。

特に近年では、法人の社宅契約が順調に伸びており、サブリース契約を取りながらもレオパレス21にリスクが少ない収益モデルが出来上がっていました。

業績不振の引き金となったレオパレス問題

しかし、好調だったレオパレス21に影を差したのが、サブリースの悪質契約問題です。

2017年12月、テレビ東京「ガイアの夜明け」で、レオパレスのサブリース契約に伴うトラブルの実態がスクープされました。

同社は30年保証のサブリース契約をうたっておきながら、実際には保証される家賃が途中で減額されたり、築10年過ぎた物件はサブリース契約が解除されたりといった、一方的な契約変更が「終了プロジェクト」の名の下で組織的に行われていたことが発覚したのです。

さらに同年放送から5ヶ月後の2018年5月には、第2弾が放送。レオパレス物件の天井裏には遮音や防火のための「界壁」が設置されていなかったことが判明しました。

建築基準法の違反になる界壁の不設置に対してレオパレスは、番組の放送直前に緊急会見を開きました。建築基準法違反の疑いとその施工管理責任については認めましたが、問題の原因を「現場の施工業者の誤解と認識不足によるもの」などと釈明しています。

もともと、ネットでは、「チャイムを鳴らしたら住民全員が出てきた」「ティッシュを取る音が聞こえてくるのは当たり前。携帯のポチポチ音が聞こえてくることも」「壁に画鋲を刺したら隣の部屋から悲鳴が聞こえた」など、真偽のほどは定かではありませんが、同社物件の壁の薄さを茶化すジョークが有名でした。

ガイアの夜明けによってスクープされた界壁問題によって、都市伝説があながち間違ってもいないことが証明される結果となりました。

不誠実な対応で事態がさらに悪化

その後も、レオパレスの対応の悪さにより、事態は混迷を極めます。

ガイアの夜明けのスクープ第4弾は、界壁問題の発覚後も、物件の調査や補修工事の対応が遅々として進んでいないことが指摘されました。

ある物件では、レオパレスの社内調査によって回壁のない物件が「問題なし」と判定され、オーナーと行政の申し入れによって改めて不備を認定する、というお粗末な展開が紹介されています。

その後も第4弾のスクープで、同社一番の人気シリーズが、界壁がないのは国土交通省のお墨付きであるとして、施工業者に界壁のない図面での施工を指示していたことが発覚。

これに対し、国土交通省は同社の主張を完全に否定しています。

一連の不誠実な対応により、レオパレスは各メディアから袋叩きにあう結果に。

2期連続の多額の赤字で経営再建を余儀なくされることになりました。

問題は終わっていない

決算延期の最中にある2020年9月8日、同社の一級建築士1名と元社員の一級建築士2名が、施工不備問題に関連して国土交通省より行政処分(免許取消)を受けています。

9月28日、最終損益が142億円の赤字になる見通しだと発表した。118億円の債務超過になる見込みと発表がありました。ただでさえ業績不調だったのが、新型コロナウイルスで追い討ちをかけられた格好です。

問題はまだまだ終わっておらず、同社の行末についても今後が注目されます。

レオパレスは9月30日に開いた取締役会で、米フォートレス・インベストメント・グループ傘下の企業から、出資や融資などによって計540億円の支援を受けることを決定した、と発表しました。

米フォートレスはソフトバンク・グループの傘下です。

レオパレスはこれにより借入金の返済や社債の返還などを行い、財務体質の健全化を図る、としています。

ますます、レオパレスから目が離せません。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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