「アパート・マンション経営の専門家」大長伸吉の不動産投資、成功の法則
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2019年7月30日(火)
平成と令和の不動産事情を整理し、令和の時代にやるべきことを考える
平成が終わりを迎え、新元号の令和の時代が始まります。元号が変わることにより、人々が感じる時代のとらえ方も変わります。
時代が大きく変化する時期に平成を振り返り、令和を予想することはとても大切なことです。不動産投資の市況を確認する上で主要な項目である「1.土地建物価格」、「2.銀行融資」、「3.買主の動向」について、平成の末期と令和の初期を比較しながら、これから来る時代を予想し、やるべきことを考えていきます。
1.平成末期の不動産事情
1-1.平成末期の土地建物価格
全国平均の基準地価は、2008年のリーマンショック以降下がり、5年後の2013年より2018年にかけて、少しずつ上昇しています。2019年の公示地価でも上昇が見られています。
2019年3月の公開データでも、引き続き地価の上昇が見られ、その影響が全国各地にも波及している様子が見られました。(引用:国土交通省地価公示都道府県地価調査データ)
建物価格においては、2018年1月の首都圏の新築戸建て価格は3,773万円、2018年12月は4,095万円と8.5%ほど上昇をしていました。(引用:東京カンテイ・市況レポートデータ)
平成末期は、安倍政権による景気拡大施策の住宅ローン控除などにより、住宅取得者が増えました。これにより建築業者に多くの依頼があったものの、建築現場では働き手(職人)がいなくなるという実態がありました。そのため請負契約の依頼を受けても現場では職人がそろわず、予定時期に建物が完成せず、建築業者にペナルティーが付与される場合もありました。
また、建築業者が買主の価格交渉に対して、減額をしてまで請け負う必要がないと判断した事例も多くあり、建物価格が値下がりしませんでした。
1-2.平成末期の銀行融資
土地や建物の価格上昇の主な原因に、買主が銀行から融資を受けやすいことが挙げられます。低金利で借り入れができるなど緩和政策の影響もあり、銀行はより融資の協力をしてくれるようになったのです。
ところが、2018年に通称「かぼちゃの馬車」事件と呼ばれるシェアハウスへの不正融資が発覚。それがきっかけで、2018年の中盤以降はスルガ銀行などの業務停止があり、特に投資用不動産への融資においては、一気に銀行の融資審査が厳しくなりました。
1-3.平成末期の買主の動向
近年は寿命が長くなるにつれて、資産を作ろうとする方が増えています。その資産形成と維持のために、資産を分散させることは基本的なポイントで、現金・有価証券だけでなく、不動産を持つことも有効であることが一般の人にも知れ渡りました。
自分が高齢になり、働くことができなくなったときにどのように生活費を捻出すればよいのか、多くの人が真剣に考えるようになりました。
しかしながら、平成末期に銀行融資審査が厳しくなり、買主が購入意思を示しても融資が厳しく、購入資金不足により思うように投資物件を取得することができなくなりました。この事実は都会に限らず、日本中に広まりました。
2.令和初期の不動産事情
2-1.令和初期の土地建物価格
令和元年の10月に、消費税が10%へと増税されます。この増税前に、一部の消費税増税前の買い込みが起こる見込みです。
しかし、新築建物の施工契約においては、平成31年3月31日までに施工契約を締結した場合は消費税8%で、この日を過ぎた施工契約の場合は消費税10%が建物代などに適用されるため、すでに消費税8%での対応期限は過ぎています。
また、平成末期の建築現場での働き手(職人)不足は今後も続きます。そのため、建物価格はなかなか下がらないことが予想されます。
しかし、建物の値が下がらなければ、購入をやめる買主も増えてきます。その対策として、建物価格を下げるために、建物の構造・材質・仕様・設備などのグレードが低下することが予想されます。
2-2.令和初期の銀行融資
2018年に発生した不正融資に対する金融庁や、銀行の融資審査の厳格化はまだまだ整理されていないため、令和初期でも銀行の融資は依然厳しい状態が続くことが予想されます。
しかし、その中でも三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行のメガバンクよりは資金調達力がやや低いものの、メガバンクの次に従業員を多く抱えている地銀は事情が異なります。
それは不動産への融資が減ることで、銀行の収益確保が厳しくなるためです。
地方銀行は、収益不動産への融資が活発になる可能性があり、私が経営している不動産投資コンサルティング会社の事例でも、最近になり地銀から融資を受けられるようになり始めました。
今後、大きな課題として残るのは、日本の人口減少です。2004年までは日本では人口が増加しており、2004年12月の12,784万人がピークでした。そこから人口は減りつつあるものの、2045年でもまだ人口は1億人以上であるとの予想が出ています。(引用:総務省・我が国における総人口の長期的推移)
銀行は、不動産の融資期間30年ほどの先を見越しても人口が大きく減るわけではないことを認識し、賃貸経営を行う投資用不動産に融資が出ていました。
しかし、2050年には人口が1億人以下となることが総務省で予想されています。このような状況では、賃貸経営において空室や家賃の下落を想定しておく必要があり、人口減少を理由として銀行が融資審査をより一層厳しくすることが予想されます。
これは不正融資問題が解決した後でも、引き続き大きな課題として残ります。
2-3.令和初期の買主の動向
令和元年10月には消費税増税があります。増税前と同様に、建売物件、分譲物件や中古物件では駆け込み需要が見込まれます。
令和2年には東京オリンピックが開催されます。
近年、土地建物価格は上昇している一方、オリンピック以降の景気減退のニュースが多くなるにつれ、積極的に購入をする人は少なくなる見込みです。
しかしながら、行動には現れなくとも心理的な購入意思は、必要に駆られて増えてくることが予想されます。
一見、矛盾のように感じますが、理由は平均寿命の長寿化です。弊社独自の調査では、収益物件を購入する理由として多いのは、老後の生活資金づくりでした。平均寿命は今後も伸び続けることが予想されています。
長寿は喜ばしいことですが、生活資金がなくなることも大きな心配事として話題になっています。若く働けるうちは、多種多様な仕事があります。しかし、年金支給が減少する中で、70歳80歳を過ぎて体力が落ち、ばりばり働けなくなったとき、どのように収入を得ていけばよいのか不安に感じる人はたくさんいます。
現在、定職以外の株や投資信託で、毎月の定期収入を得ている人はわずかです。高齢の方で大きな定期収入を得られている最も多い事例は、家賃収入です。これは高齢でも不動産投資を家主として実行できているという事実といっていいでしょう。令和の時代は、平成よりももっと家賃収入や賃貸経営をやろうという意思を持つ方は多くなるのではないでしょうか。
しかし、不動産投資をやりたいという意思はあっても、銀行融資が厳しくなる事情から、実際に不動産投資ができる方は平成の時代よりも少なくなることが予想されます。
令和の時代は、人口減少と高齢化という大きな課題があり、地方の過疎化や財政の悪化など寂しいニュースが増えることでしょう。この課題に対して、どのように対応できるのか、今から考えておく必要があります。
まとめ
昭和は高度成長期と呼ばれ、平成は人が元気で活力があった時代だったといわれるかもしれません。令和の元号は多くの人に歓迎されていますが、平成の時代以上に変化が大きくなり、日本人の底力が問われる時代となる可能性が高いといえます。
平成の末期は土地建物の価格が上がりましたが、令和の日本全体ではこれよりも大きく上がることは難しいことでしょう。また、銀行では地方銀行から財政難となり、銀行だけでなく地方の自治体の財政も厳しくなることが予想されます。
さらに、今後は地球温暖化により、自然災害も増えるといわれています。その上で、将来にわたりどのように準備をして、豊かに暮らしていくのか、落ち着いた生活を迎えられるのか。
今こそ徹底的に情報を得ること、より一層勉強し知識を得て経験を積んでおくこと、そして次の行動と生活のために資金を作り、蓄えることが大切となります。
令和の時代は一人ひとりの行動が問われる時代となることでしょう。
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著者紹介
大長 伸吉大長 伸吉
ランガルハウス株式会社 代表、年金大家会 主宰。
生涯所得の1/3ほどの住まいにかかる出費をゼロにするために、賃貸併用住宅を活用して、サラリーマンや事業主をサポート。
千葉大学大学院工学研究科卒、新築及び中古1Rマンション、中古アパート、世田谷/北関東/多摩新築アパートなど各種の不動産賃貸業の経験をもとに、主にサラリーマンのアパート経営の支援。建築サポート実績127棟。通算2050人の聴講者と2450回を超える相談会にてサポートを継続中。著書に『サラリーマン大家の「クズ土地」アパート経営術』『王道アパート経営で「マイ年金」づくり』など
所持資格:宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、FP2級技能士