「アパート・マンション経営の専門家」大長伸吉の不動産投資、成功の法則
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2019年1月31日(木)
コワーキングスペースを狙ってやるべき? 手を出すべきでない?
働き方が変わり始めています。会社が建物などの大きな不動産やリスクを抱え込むことが主流の時代が終わろうとしています。
そして、建物をシェアする時代が始まっています。
2019年年明けには、“住宅地にシェアオフィス 職住近接に向けて規制緩和”とのニュースも流れました。
政府は自宅の近くで仕事ができる「職住近接」の環境づくりへと動き出しました。
例えば、団地などの住宅地にシェアオフィスや商業施設を設けられるよう都市計画などの規制を緩和するとのことです。
個人事業主が企業から仕事を引き受けて部分的な業務を効率化し、成功を収めるという事例も出てきました。
しかし、起業間もない事業家や会社では、事務所の家賃も大きな負担となります。
そのような課題を解決するものとして、コワーキングスペースが話題となっています。固定の事務所を持たずに仕事をする人をノマドワーカーと呼ぶこともあります。
コワーキングスペースを活用する人、また運用を始めようとする人に現在の実態を知ってもらうことを目的として、コワーキングスペースの事例と利用のメリット、そして運用をするために注意すべき点などをお伝えします。
コワーキングスペースとは
コワーキングスペースは、独立した個人や事業者が、場所と設備(机、椅子、ネットワーク機器)などの実務ができる環境を共有し、仕事をする場所と定義付けられ、月極めや時間制で場所を借りる形式のものも数多くあります。
また、類似のものにレンタルオフィスがありますが、異なる点はスペースを利用する人同士が積極的に交流し、ときには共に働くといったコミュニティが形成されることで、これがコワーキングスペースの特徴でもあります。
つまり、コワーキングスペースは積極的に交流を持とうとする人が集まる場といえるでしょう。
コワーキングスペースの利用者の活用事例
コワーキングスペースは、完全会員制や月額などの定額料金を設定しています。
これに加えて、利用場所や利用時間を記録し、利用した分の費用を請求されるドロップインというシステムもあります。
移動時間が多い人や、外出先で仕事をする場の確保をしたい営業マンなどに向いており、中小企業だけでなく、大企業でも利用が始まっています。
また、カフェや宿泊施設が装備されているものがあります。
現在では多種多様なコワーキングスペースがあるため、コワーキングスペース運用者は競合よりも魅力的な施設にする工夫が必要となります。
利用する人の属性は、会社員、経営者、個人事業主、学生、フリーターなどです。
コワーキングスペースは、起業から間もない事業主が利用するイメージがありますが、実際に最も多く利用する属性は、会社員です。
東京では、カフェでパソコンを使って作業している人も目立ちますし、また満席で利用ができないカフェが多くありますので、確実に机と椅子、コンセントや通信環境を確保できるコワーキングスペースを利用する人が増えていることも納得できます。
また、コワーキングスペースを利用している会社同士が交流をする機会も多くあります。ビジネスマッチングに繋がり、ここで出会った他社との協力を築き、新しいビジネスを創造している事例が多く存在しています。
その他にも、コンサルディングサービスや銀行から融資を受ける機会、民間からの出資を得られる機会があるなどファイナンスに関わるサポートを受けられるところも存在しています。
利用者のメリットとデメリット
自社でオフィスを持つよりも、利用者は家賃、光熱費、機器や設備費用などを低く抑えることができます。
また、駅から至近の立地にあるコワーキングスペースが多くあり、営業に向かうときやクライアントとの打ち合わせでとても便利だったという経験者の意見もあります。
さらに、法人登記ができるコワーキングスペースも多くあります。
また、従業員が利用する場合として、利用した履歴が残るため、企業は従業員の労務管理ができ、それぞれの社員の利用を一括で支払いすることもできるというメリットもあります。
コワーキングスペースの主なメリット
・オフィス所有によるコストを節約
・移動時間の短縮
・業務提携、事業協力、出会い、情報交換
・コンサルティングやセミナー
・クライアントのシェア
・融資や出資の機会
以上に加えて、各コワーキングスペースでは利用者への特典が準備されています。
デメリットとしては、利用スペースは個室がない場合が多く、機密が保持される環境を必要とする人には向いていません。
使用経験者が考えるコワーキングスペース運営のツボ
コワーキングスペースを運営する場合は、どのような属性を利用者のターゲットとするかについてを慎重に考えることが有効です。
また、利用者が最低限のこととして求めているものは、快適な作業場所です。
そして、作業場所としての品質を向上させるために重要なことは設備の充実です。
さらに、継続して利用をしてもらうためには、利用者同士の関わりを深くするコミュニティを形成することも大切でしょう。
そのスタートとなるのは、運営スタッフと利用者との交流です。
コミュニティの質を上げるための一つの事例は、利用できるのは特定の業種に絞り込むことです。
これにより、特定の業界情報が集約される場所として注目を集めます。
そして、既にオフィスを所有している会社であっても、特定の情報を得るためにコワーキングスペースを活用する人が増えるという効果があります。
コワーキングスペース運営のツボ
・立地の選別、駅至近、近隣の駅よりも乗降者数が多いことも有効
・スペースの広さ
・賃貸をする場合、家賃が高くならないこと
・競合となるコワーキングスペースの有無
競合との差別化を図るために、コワーキングスペース事業と共に、カフェの運営や他種のスクールを運営するなど、複数の事業を併用すればスペースの有効活用と他との差別化につながり、継続した利用者を増やすことができます。
場所や設備があることだけでは、コワーキングスペースは成立しません。コーディネーターとスタッフが必要不可欠なのです。
運営者のメリットとデメリット
運営者のメリットは、利用する多種多様の業態の人と交流ができることです。
デメリットは、一人で運用することが難しいことです。
その理由は、利用者が自由に利用するためには、一日の開始を早め、終了時間を遅くし、できるだけ休業日を減らす必要があるからです。
複数で運営する場合でも、スペースに滞在する時間が長くなり、外に出る機会が少なくなる傾向があります。
また、賃貸で運用をする場合、不特定多数の人が出入りするので、貸主から許可を得られにくいこともあります。
さらに、オープン前の設備準備などで費用がかかることに加えて、オープン初期は利用者が誰も来ないという事例もあります。
時間をかけて、ゆっくりと利用者は増えてくるものですが、それまでの間の出費に耐えられる資金の準備と、運営者の忍耐が必要になります。
アパートで運営する上での注意点
コワーキングスペースは、月の家賃収入よりもより多くの売り上げを出すことが可能で、かつ社会的な貢献度が大きいものです。
しかし、ただ広いスペースの確保、立地はアパート用地のように駅徒歩10分以内であればよいなどの考えではいけません。
利用する会社は多くの人との打ち合わせや営業で頻繁に飛び回っているため、駅徒歩5分でもよい立地とはいえず、競合のコワーキングスペースでは、駅から徒歩0分のところもあることを知っておくべきです。
物件の特徴を生かすことでチャンスが生まれますが、アパートのように一度入居すれば長く住んでもらえるというわけではないため、極めて好立地で常に新しい設備を導入していく必要があります。
そして、ただ場所を提供すればよいわけでなく、利用する事業者へのコンサルティングなどの支援サービスを取り入れることも重要です。
アパートオーナーが「コワーキングスペースなら簡単にできる」と考えているのなら、利用者の満足度を上げることは難しいといえます。
コワーキングスペースの運用を成功させるには、利用者の管理や代金の回収、コピー機や飲食の無料提供・販売、コンシェルジュサービス、他にはない空間デザイン、コワーキングスペースならではの運営ノウハウが必要となります。
そのため、スペースだけをコワーキングスペースの運営業者に貸し出すという選択もあります。
まとめ
世の中の働き方が変わり、建物をシェアする時代になりました。
政府も、職住近接などとの政策転換を始めています。
事務所の家賃や管理費用などの大きな負担を減らすために、事務所を持たずコワーキングスペースを利用している人が増えています。
特に移動時間が多い人や、外出先で仕事をする場の確保をしたい営業マンなどに向いています。
利用している会社同士が交流をする機会も多くあり、出会った他社との協力関係を築き、新しいビジネスを創造している事例が多く存在しています。
しかし、場所や設備があることだけではコワーキングスペースは成立しません。
コーディネーターとスタッフが必要です。
アパートオーナーが運営をする場合の注意としては、賃貸借契約さえあれば毎月家賃が入ってくるわけではなく、利用者へのコンサルティングなどの支援サービスを取り入れることも重要です。
そのため、スペースだけをコワーキングスペースの運営業者に貸し出すという選択もあります。
近年ではコワーキングスペースが増えているため、より利用しやすく、他にはない魅力ある運営をすることがとても大切です。
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著者紹介
大長 伸吉大長 伸吉
ランガルハウス株式会社 代表、年金大家会 主宰。
生涯所得の1/3ほどの住まいにかかる出費をゼロにするために、賃貸併用住宅を活用して、サラリーマンや事業主をサポート。
千葉大学大学院工学研究科卒、新築及び中古1Rマンション、中古アパート、世田谷/北関東/多摩新築アパートなど各種の不動産賃貸業の経験をもとに、主にサラリーマンのアパート経営の支援。建築サポート実績127棟。通算2050人の聴講者と2450回を超える相談会にてサポートを継続中。著書に『サラリーマン大家の「クズ土地」アパート経営術』『王道アパート経営で「マイ年金」づくり』など
所持資格:宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、FP2級技能士