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不動産投資家なら知っておきたい「借地借家法」とは

目次

「借地借家法」をご存じでしょうか?借地借家法とは、土地や建物の賃貸借に関わる借家人・借地人の権利を保護するために設定された民法の特別法です。特別法とは一般法よりも狭い対象を規定する法律で、特別法に当てはまらないときは一般法が優先して適用されます。

不動産投資家は借地借家法でいえば地主にあたり、権利が制限される場合です。
最低限知っておきたい借地借家法についての知識を解説します。

借地借家法とは

なぜ借地借家法が必要なのかというと、不動産の借主は「法的弱者」にあたる、と考えられているからです。不動産は借主の生活の重要な基盤ですから、オーナーの都合で一方的な要求をできないようになっているのです。

また、一般的な賃貸借(借家)と借地では規定が異なり、借地の借主のほうが手厚い保護を受けるようになっています。

たとえば、一般的な賃貸借と借地の場合で、不動産のオーナーから借り主が追い出される場合を考えてみましょう。

一般的な賃貸借の場合でも追い出されるのは困りますが、別の家を借りて引っ越せばいいだけ、という見方もできます。

ただ借地の場合、土地を更地にして返さなければいけませんから、借り主が借地の上に建てた建物は取り壊して退去しなければいけなくなります。当然、多額の取り壊し費用がかかるので、借り主にはかなりの損害が出ます。

取り壊し費用が出せずに退去できない、という場合が出てくるでしょう。

そのため、借地契約を結ぶ借主には借地借家法による特別の保護があるのです。

マンションオーナが背負う義務

借地借家法では、オーナーは次のような義務を背負うことになっています。

使用収益の義務

借家人が最低限の生活ができるような状態で部屋を明け渡す義務のことです。階段や廊下、ゴミ置き場といった共用部分が使用できるように整備・メンテナンスすることが含まれます。

費用を償還する義務

雨漏りの補修など必須の工事を借家人が費用を立て替えて行った場合、その分の費用をオーナーに請求することができません。請求された費用を返還するのは、オーナーの義務となります。

費用を償還する義務があるのは建物にとって必須の工事に限られ、ウォッシュレットをつけた、エアコンをつけた、といったプラスアルファの工事については借家人がオーナーに費用を請求することはできません。

修繕をする義務

読んで字のごとくですが、借家人が住むのに支障がないように部屋を修繕する義務です。

壊れてしまった部屋の鍵や雨漏り、水漏れなど、放置していては借家人が生活できないような不具合はオーナーの負担と責任で修繕しなければいけません。

仮に借家人が修繕を拒否したとしても、オーナーは修繕を実行することができます。

自力救済禁止の義務

簡単に言うと、オーナーの実力行使を禁じる義務です。

たとえば部屋の立ち退き命令が認められて賃貸借契約が解除になったのに、借家人が家に居座ったとします。

このような場合でも、実力行使で追い出したり、外出中に鍵を替えて締め出したりしてはいけません。必ず、公権力を通して所定の手続きを踏む必要があります。

余談ですが、かつては自力救済禁止の義務を悪用し、競売にかかった物件が落札されてから「占有屋」と呼ばれる人間を居座らせ、物件を買った人から余分な立ち退き料をせしめようとする輩がいました。「競売物件の怖い話」の代表的なケースです。

押さえるべきポイント

気をつけたいのは、借家借地法は契約書の内容に勝る、ということです。

たとえば、「ドアの鍵の破損は借家人負担にする」と賃貸契約書に書いてあったとしても、借家借地法の規定に反するため無効となります。

また、「家賃滞納の際は退去の強制執行をする」と契約書に書いてあっても同様に無効です。自力救済禁止の義務が優先されます。

法律にうとい借家人であれば、契約書が法律違反であることに気づかずに泣き寝入りしてくれるかもしれません。

しかし、借家人が弁護士や警察に相談したら一発アウトで、法律違反の契約書を作成していた責任を問われてしまいます。繰り返しますが、司法は借家人寄りであるということを忘れないようにしてください。

法律の知識がトラブルを防ぐ

法律の知識はプロにお任せ、として勉強しない投資家は多いです。しかし、普段接している管理会社の担当者は宅建すら持っていないことも多く、あまりアテにならない人もいることは覚えておいたほうがいいでしょう。

投資家を救うのは、自分自身の知識武装しかないのです。何かあった際に正しく戦えるだけでなく、知識はトラブルを未然に防ぐ役にも立つことでしょう。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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