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「アパート・マンション経営の専門家」大長伸吉の不動産投資、成功の法則

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海外の不動産投資のメリットとデメリット

目次

近年は平均寿命が伸びるにつれ、資産を作るチャンスが増えています。

その資産を形成し維持するために、資産を分散させる必要があるということは基本的な考え方です。現金、有価証券だけでなく不動産を持つことも重要なことです。

さらに、日本だけでなく海外に資産を分散させることも有効な選択肢といえます。
資産として、お金とは種類の異なる不動産を海外に持つことは、資産形成の検討をするうえで有効です。

海外の不動産投資のメリット

不動産を所有していると、インカムゲインという家賃収入が得られ、また不動産価値が値上がりすることによるキャピタルゲインが得られるというメリットもあります。

特に海外での不動産投資では成長が期待できる国が多く、キャピタルゲインの効果が期待できる不動産が数多くあります。

国内を例にあげると、東京の世田谷にある先祖代々から土地を受け継いできたある農家では、昭和に入りどんどん所有している土地の価値があがり、所有地を切り売りしているだけで膨大な資産ができたそうです。
また近年の上海では、10年前に1000万円で購入したファミリー向けマンションが、現在は5000万円に高騰し、不動産価値が5倍以上になったという事例があります。

世田谷の事例は東京の成長があり、上海では中国の成長と共にその不動産価格が何倍にも上昇しました。都市が成長するにつれて、不動産の値上がりを期待するということは不動産投資において基本的なことでもあります。
しかしながら、近年の日本では急激な成長は期待できません。そのため、これから急成長が期待できるアジア諸国などの海外で、キャピタルゲインを見込んで不動産投資をするのです。

発展途上の国や都市の不動産価格はまだまだ低く、同じ面積の東京の不動産に比べて大幅に低い価格で不動産を取得できるということもメリットの一つです。

さらに、資産の分散において、日本国内だけでなく海外に資産を移すメリットとしては、他にも外貨と同様に海外不動産を所有することで、万が一日本円の価値が下落した場合のリスクに備えられるということもあります。
そうすれば日本円が暴落したときに海外不動産を現金にして、価値の高い外貨で暴落した日本円を大量に購入するということも可能になります。つまり、海外通貨との為替差益も期待できます。

現在の日本の不動産では大きなキャピタルゲインが見込めないため、不動産を共同所有しても大きな利益は上げられません。しかし海外では共同所有であっても利益を上げられることがあります。
ここでのメリットは不動産を共同所有することで初期費用が少額となり、オーナーの負担を減らすことができるという部分です。

海外の不動産投資のデメリット

メリットについては先にお伝えしましたが、問題となるのは海外不動産のメリットよりも実はデメリットの方が数多くあるため、特に注意が必要だということです。メリットを大きく超えるほどの金額的な損失があることがデメリットといえます。

そのため、海外不動産投資を一言で表現すると「メリットは確実にあるが、デメリットも大きい投資」となります。そのデメリットについて説明をします。

海外は言葉通り海の向こうの国であり、よく知っている日本の事情と比べて不確かなことが多くなります。そのため、不動産の価値は立地で決まりますが、どの立地が良いのかを選択することがとても大変です。

発展途上国ではまだまだ鉄道や地下鉄が完成していないことも多くあり、地下鉄駅が近くに造られるという情報を得ても、本当に想定した場所に駅ができるのか、それがいつなのか正確にはわかりません。予定していたところに駅が造られなかったとか、線路がいつになっても完成しない、などということは珍しいことではありません。

なかったところに鉄道ができれば、土地の価値は一気に高騰します。しかし、発展途上国は国自体が安定していないため、予定の工事が止まってしまうことも多々あります。これはリゾート地でも同様で、リゾート地自体の開発が進まずにその近隣不動産も開発されず、荒れ野原のままという事例もあります。

日本で海外の不動産を取得するには、海外の不動産業者やコンサルタントのサポートを受けることが必要になります。しかし、この不動産業者やコンサルタント自体が信用できない場合があります。「この土地は値上がりする」、「この不動産は完成前だが、完成したら何倍にも価値が上がる」などとの営業トークは信用できないことが多々あります。

また、不動産業者やコンサルタントが誠実で信用できる人であっても、外国の法律が変わってしまい、予定していた不動産が建築されなかったり、不動産を取得できなかったりすることもあります。このようなことは人的リスクともいえます。

このとき、コンサルタントは「法律が変わってしまったから予定通りにいかなかった」と言い訳をすることがありますが、これはある意味正しい回答ともいえます。

これに対して日本の法律は、変化が少なく安定しています。日本では想像ができないことが海外では起こります。法令の不確実性により損害を生じるリスクもあります。

また、不動産の登記においても同様のことがいえます。私の経験した事例として、海外の不動産購入が完了した後、建物の所有権の登記が完了するまでに1年ほどかかったことがありました。
日本では登記手続きは1週間ほどです。登記に1年を要するということは、その間の期間でいろいろなトラブルが起こることも想定されます。

こうした登記において、海外では一般的には外国人に土地の所有権を与えることが少なく、建物所有権だけが認められます。また、海外であるが故に日本からはなかなか現地を見に行くことができません。

不動産を取得した後は、物件の管理が必要になります。この管理費用も予定していた金額よりも高くなることもあり、また管理の品質も日本で想定していたレベルよりも劣ることが多々あります。

また、共同所有ができるシステムがあることは良いことでもあるのですが、共同所有であるために、数人の中の一人が物件を売却し現金に換えたいと思っても、簡単には現金にすることができません。

同様に、為替による損害リスクも起こる場合があります。さらに、不動産を取得するために海外に移した高額のお金とその利益を合わせた金額を日本に戻そうとするときには、そのまま一度に日本に戻すことはできません。また一度に戻すときには高額の手数料がかかってしまうなど、費用がかかるリスクにも注意しなければなりません。

まとめ

資産を形成し、維持するために、資産を分散させるということは基本的なことです。そして海外不動産の検討をすることは有効なことだといえます。
不動産には、家賃というインカムゲインと不動産価格の値上がりでキャピタルゲインを得られるというメリットがあります。特に国自体が急激に成長している発展途上国などでは比較的低い価格で物件を取得でき、不動産価値が数倍にも値上がりすることがあります。

しかしながら、課題は海外不動産のメリットよりもデメリットの方が数多く存在しているということです。海外不動産の情報が少ないこと、法律が変更になる国もあり、予定通りに利益が得られないこともあります。

日本のレベルに近く比較的安定している西欧の不動産を目指すのか、またハイリスクハイリターンを目指して、発展途上国の不動産を検討するのか、オーナーとなる人自身の力量が問われます。

いずれにしても海外不動産は日本の不動産よりも不確かなことが多くあるため、しっかりと状況を確認して検討を重ねることが大切です。
そして、今後生活に必要となる自己資金を使うのではなく、万が一海外に移した資金が無くなっても生活に支障が出ない余裕のある資金で行うことが賢明な判断です。損害を最小限に抑えることが、リスク対策の基本であり有効な手段といえます。

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著者紹介

大長 伸吉
大長 伸吉

ランガルハウス株式会社 代表、年金大家会 主宰。
生涯所得の1/3ほどの住まいにかかる出費をゼロにするために、賃貸併用住宅を活用して、サラリーマンや事業主をサポート。
千葉大学大学院工学研究科卒、新築及び中古1Rマンション、中古アパート、世田谷/北関東/多摩新築アパートなど各種の不動産賃貸業の経験をもとに、主にサラリーマンのアパート経営の支援。建築サポート実績127棟。通算2050人の聴講者と2450回を超える相談会にてサポートを継続中。著書に『サラリーマン大家の「クズ土地」アパート経営術』『王道アパート経営で「マイ年金」づくり』など
所持資格:宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、FP2級技能士

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