石川貴康の超合理的不動産投資術
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2019年5月10日(金)
不動産投資への構造のインパクト-木造、鉄鋼、RC
現在、続々と不動産の固定資産税の納税通知書・課税明細書が来ています。
不動産を所有していない人は、「不動産を持つような贅沢な人に課税するのは当然」と思うかもしれませんが、資産を持っていると課税される固定資産税は何とも不思議な税金だと思います。
私有財産制の日本で、資産に課税し、滞納すると差し押さえられるのですから、これでは私有財産とは名ばかりではないかと疑問に思うのです。
売買はできますが、所有した途端に、「使いたければ税金を払え」と国から言われているようです。
土地・建物は官有財産であって、使う権利だけ与えられているように感じられるのです。
しかも、収益を生まない住居でも徴税されます。
財産権の侵害のように思いますが、皆さんはどう考えるでしょうか。
さて、今回は建物の構造の話をします。更地である駐車場や借地権も不動産投資の一つですが、建物は構造の違いによって収益に影響が出てくるのです。
賃貸不動産としてお金を稼いでくれる建物には構造上の違いがあり、その違いが収益に与える影響は大きいのです。冒頭に述べた固定資産税も構造によって大きく評価額が異なり、税額が異なってきます。
RC、SRC、木造、鉄骨造り、さまざまな住居用の構造
不動産投資では、居住用と事業用があります。居住用とは、まさに住むための建物、事業用はオフィスや店舗などに使われる建物です。
ここでは、私たち個人が主要な投資対象にする居住用の建物でみてみましょう。
建物の構造は、RC、SRC、木造、鉄骨造りなどさまざまです。
もっと細かい分類や組み合わせもありますが、とりあえずのところ、RC、SRC、木造、鉄骨造り程度の言葉を知っていれば十分かと思います。
RCは鉄筋コンクリート造(Reinforced Concrete)の略です。
住宅用で47年とされています。RCは堅牢ですが、建設コスト、解体コストが高く、修繕費用も高くなり、コスト高といえます。
しかし、構造上高層の建物が建てられるので、戸数が確保できるため、効率良く賃貸収入を増やすことができるといえます。
SRCは、鉄骨鉄筋コンクリート造(Steel Reinforced Concrete)の略で、RC造に鉄骨造(Steel)が組み合わされています。
RCよりもさらに堅牢な構造となっています。地震や火事にも強く、住んでいて安心感があります。
木造は、文字通り木造です。木造の良いところは、RCなどと比べて、建設コストが安いため、物件価格が低くなることと、修繕がしやすいことが挙げられます。
さらに、利点としては取り壊し時のコストが安いことです。建て替えや、更地にして売ることを考えると取り壊しコストの安い木造は重宝です。
法定耐用年数は住宅用で22年です。
22年で価値がなくなるという計算をしますが、実際22年以上経っても十分使えます。
地震や火事に弱いということもありますが、アパートを持ってみると、RCだ、木造だと気にして住む人も少ないように思えます。
鉄骨造りは、基礎構造を鉄骨組みにしてある建物で、強度や建設・解体コストなどでみると、木造とRCの中間のような特徴がある感じです。
鉄骨造りの場合、鉄骨の厚さによって、住宅用では軽量鉄骨造19年から重量鉄骨造34年の範囲で耐用年数が定められています。
では、構造の違いによる影響を比較してみましょう。
不動産管理費・経費:木造は管理費・修繕費が比較的低く、RCは高い
私は木造、鉄骨、RCをそれぞれ所有しています。管理費・修繕費は、比較すると木造が圧倒的に低く抑えられています。
RCは規模も大きくなるため、さまざまな付帯設備が付き、その管理費、維持費が大きくなります。
RCでは、規模が大きくなるため、受電設備、受水層、エレベーターが必要になります(もちろんそうした設備がないRC物件もありますが)。
それぞれ管理費用がかかります。
階数が多くなる分、共用電灯の消費電力、清掃費も大きくなります。
木造では、RCのようなエレベーターや各種設備が必要ないというスタート地点からの違いがあります。
木造では構造的にも大規模化できないという制約があるので、そもそも受電設備、受水層、エレベーターなどは不要でしょう。
共用電灯の消費電力も小さく、清掃は自分で行うことも可能です。私は実際、最初の投資先の建物を自分で掃除していました。
この違いは大きなもので、私の過去の物件で6階建てのRCは、管理費では毎月10万円から数十万円かかっていました。
今も1棟持っていますが、こちらのRCはエレベーターのない4階建てのRCですので、10万円くらいで収まっています。
それでも高いと感じます。木造はせいぜい数千円から、多くかかっても数万円止まりだからです。
修繕費も違います。RCは設備が大掛かりなせいか、それだけ修繕費もかかります。
最も大きな違いは大規模修繕です。RCでは20年に1回程度大規模修繕を行います。
外壁塗装、通路舗装、屋上防水で、規模にもよりますが、数百万円から数千万円必要になる場合もあります。
エレベーターも1基取り換えると大金が必要になります。
以前見積もりを取ったところ、600万円~800万円でした。
一方、木造は修繕といってもRCほどかかりません。以前、2階建て1DK8戸の木造アパートの外壁塗装をしましたが、この時は200万円弱。足場を組んでもせいぜい2階です。
木造の場合でも大規模修繕は、15年から20年に1回あります。
先の外壁塗装、屋根の塗装があります。屋根は、RCの屋上防水に比べれば、塗装など比較にならないほど安くできます。
鉄骨造りはRCと木造の中間ぐらいです。しかし、鉄骨造りもそれなりの規模にできるため、意外と経費がかかります。
私は木造が経費的に安くて好みですね。
固定資産税は痛い! RCは固定資産税・都市計画税が高く、木造は安い
RCの場合、痛いのは固定資産税・都市計画税です。
固定資産税・都市計画税は土地と建物の評価額(一般に固定資産税評価額といいます)に税率をかけて算出されます。
固定資産税の税率は1.4%で、自治体により1.4%より多いところもあります。
都市計画税は上限0.3%で自治体により税率が選択されています。(23区は0.3%ですが、ほかの自治体では0.2%や0.28%などさまざまです)
土地は路線価をベースに、実勢価格の7割程度になるような評価がされています。
建物は建築時のコストを構造や設備に分解して評点化して積算されます。
RCは構造も強固で、材料費も高いため、固定資産税評価額が高くなります。
一方、木造は構造も単純で、材料もRCに比べて安いため、評価額自体が安くなり、その分税額が安くなります。
この評価額の安さが木造の固定資産税・都市計画税が安くなるカラクリです。
税率は小さいように見えますが、これが土地・建物という高額のものに対する税金となると大きな金額になります。
私のかつて持っていたRCは、購入価額1億5千万円の物件(北関東)で、毎年150万円超の税額でした。
1カ月分の家賃が固定資産税の支払いに消えました。
1カ月分が消えるというのは、収益が1-11/12=8%以上減ることになります。
この物件では表面利回りで1%の低減で、収益が大きく圧迫されました。
ローンを組んでの購入なので本当に痛いです。
RCは、見た目より儲からない原因の一つが、この高額な固定資産税といえます。
最近買ったRCは、エレベーターなしの4階建てなので管理費など、経費は大規模の物件より安いですが、固定資産税は相変わらず家賃収入の1カ月分が引かれます。
本当に、固定資産税は収益に影響を及ぼします。
さて、木造はどうでしょう。
木造で購入価額約7千万円の私が所有する物件(都内)では、毎年約12万円です。これは、家賃収入の3分の1カ月分です。
収入ベースでは、このRCは年間グロスで1,500万程度の家賃収入なので、収入に対して固定資産税の経費率が10%、一方、都内の木造は年間グロスで450万円程度の家賃収入なので、収入に対して固定資産税の経費率2.6%です。
固定資産税・都市計画税でいうと、圧倒的に木造が有利となるわけです。
鉄骨造は、やはりRCと木造の中間くらいですが、意外と固定資産税は高くなります。
わが家の実家物件は、評価額で高い評価をされてしまい、同じような時期に建てた木造に比べ、非常に高い税額になりました。
市に文句を言って評価替えを依頼しましたが、門前払いでした。
固定資産税は評価額で決まります。
建物は建築コストがカギになりますので、安く建てられることに越したことはないのです。
耐用年数による減価償却の影響
耐用年数では、住宅用でRCは47年、木造は22年、鉄骨造りは軽量鉄骨造りで3㎜以下が19年、3㎜超~4㎜以下が27年、重量鉄骨造りで34年です。
耐用年数は、減価償却費を計上できる期間になります。
長ければ長いほど、長期間経費化できます。減価償却費はキャッシュの流出がない費用で、減価償却費のおかげで費用が積み増され、その分税金が減るので助かります。
ローンを組んでいる期間と耐用年数の残存期間が同じであれば、ローン返済のキャッシュアウトを減価償却での節税額でまかなえるので助かるのです。
耐用年数が過ぎて減価償却費の計上がなくなると、一気に税額が上がり、ローンの支払いとダブルのキャッシュアウトになり、資金繰りが大変になります。
こうした点で、耐用年数の長い構造のほうが税金を減らしてくれるという点で、キャッシュフローへのプラス影響はあります。
2000年初頭に購入した私の木造物件は、現在続々と法定耐用年数を経過して、減価償却ができなくなっていて、税金が増えて大変です。
木造は出口戦略によって有利にも不利にもなる
将来的な出口戦略によっても、構造による有利・不利が生じると考えています。
木造で有利な出口は、長期保有だと考えています。
建物を取り壊す段階まで所有し、建て替えるなり、更地売却するなり、戸建て新築で売るなり、取り壊し費用が安く、比較的選択肢が増えるからです。
RCの場合は、かなり取り壊し費用がかかります。果たして採算に見合うのか疑問が残ります。
立て替えもお金がかかります。現在、分譲マンションの老朽化で建て替えが進まないのも、お金がかかるため、住人の合意が取れないからというものです。
一方、ある期間で転売するという出口を描く際、RCは有利かもしれません。
RCは償却期間が長く、劣化も遅いので転売もしやすく、5年超程度で出口を描くのであれば、効率良く家賃を稼ぐことも可能でしょう。
ローン残債が減らせているのであれば、魅力的な転売キャッシュを稼ぐことができます。
(個人で5年以内に売ると、短期譲渡所得になり所得税額が高くなります。5年超で売って、長期譲渡所得のほうが有利ですから、ここでも税金は要注意です)
まとめ
私がかつて仕事を手伝った外資の投資会社では、5年程度で大型のRCを購入・売却し、インカムゲインとキャピタルゲインの合計を最大化する戦略をとっていました。
RCに比べ管理費、修繕費、解体費などコストがかからず、税金も安いのが木造の建築物の利点ですが、転売の出口を描く際には、木造は不利かもしれません。
木造は法定耐用年数が短いため、次の購入者の償却期間が短くなり、購入を渋る可能性もあります。
実物に劣化が目立つ場合は、転売も難しくなります。
私もあまりにも古い物件は敬遠します。
木造は長期保有のうえで、解体などの処分型出口では有利ですが、5年程度の中期保有での転売型の出口ではRCに分があるのではないでしょうか。
RCと木造を所有して思うのは、効率的に稼ぐにはRCに分があり、経費的には木造に分があるということです。
私の出口は長期保有なので木造が好みです。
とはいえ、構造は投資家の戦略によるところが大きいので、投資物件を将来的にどうしたいのかによって戦略を練って選択していきましょう。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など