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石川貴康の超合理的不動産投資術

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不動産投資をしていると起きる事件・事故のいろいろ

目次

長年不動産投資をしているといろいろな事件・事故が起きます。
事件・事故は不動産投資をしていくにあたって、大きな問題を引き起こします。
今回は、私が実際に体験したことと対処の実例を書いていきましょう。

不動産投資をしていると起きる事件・事故①滞納

滞納はよくあることです。昔はだいぶ苦労しましたが、今は保障会社があるので、ほとんど滞納対策をしなくて済みます。滞納が起きると、保障会社が代位弁済してくれます。滞納がひどい場合には退去を行ってくれます。
こうした保障会社がうまく使えない時は、自分で対処せねばならず大変でした。もちろん、管理会社も対応してくれますし、管理会社の督促により解決することもあります。

しかし、そうでない時は法的な手段に訴えざるを得ませんでした。一度、悪意のある入居者が2部屋同時に入居してしまい、2年間家賃を支払ってくれないということがありました。

対応策としては、最初は管理会社による督促、連帯保証人への督促、その後、内容証明の送付、訴訟(金額が大きくなり少額訴訟は使いませんでした)、和解という流れまで進みましたが、その後、和解無視となり、強制執行へと進展しました。内容証明以降の費用はすべて大家である私が支払いました。

当然、過去の残債はすべて請求しますが、入居者にそもそも資産がない場合があります。連帯保証人も資産がなく、弁済請求できない場合もあります。こうなると、まったくなんの回収もできず、ただ費用がかかるだけです。私の場合はそうでした。とんでもない出費と占有されている間の家賃は、莫大な機会損失でした。大家ばかりが損をします。

しかも、和解を無視している被告にはなんのお咎めもないのです。差し押さえもできませんでした。法律では、大家は(大家だけではないかもしれませんが)守ってもらえないと感じた事件でした。以降、どんな遠方の物件だろうと田舎だろうと、保障会社を通して入居をOKすることにしました。

不動産投資をしていると起きる事件・事故②夜逃げ

これも大変でした。父の物件で起きたのですが、当時は残置物を勝手に撤去できず、半年以上対応に掛かりました。その間家賃はゼロ。もちろん長期滞納後の夜逃げですから大打撃です。残置物の処理費用、リフォーム費用もすべて大家持ち。大損でした。

実家物件を含めると、不動産の経営は35年くらいになりますが、夜逃げはこの1件だけでした。最近は保障会社を通しての入居なので、夜逃げへの対応もしてくれるでしょう。

不動産投資をしていると起きる事件・事故③入居者の逮捕

ある日管理会社から電話があり、「入居者が強盗で逮捕された」との連絡がありました。ちょうど、このニュースをTVで見ていて、へえっと思っていたら、なんと私の物件の入居者だったのです。驚きました。
逮捕され、おそらく長期拘留になるので、家賃は入るのか、退去になるのか、その手続きはどうすればいいのかと気を揉みました。

このときは既に保障会社経由で契約していたので、逮捕・収監中の家賃は弁済され、退去も実施してくれました。だいぶ心配しましたが、滞りなく対応してくれて助かりました。

不動産投資をしていると起きる事件・事故④火事・ボヤ

火事まではいかないまでもボヤです。物件が多いのでリスクが高まりますが、私がボヤを起こされたのは2回だけでした。全焼などにはならず、部屋の壁などの一部を燃やして焦がした程度です。

1件は天婦羅をあげていて炎があがって壁を焼いた例。もう1件は電気料金を滞納して電気を止められた入居者がコンロを使って引火し、周りを焼いた件。こちらは消防車が出動し、大事になりました。

どちらもボヤで助かりましたが、入居者の火災保険で処理できました。大家である私も火災保険は必ず入っています。火災保険は必須です。

不動産投資をしていると起きる事件・事故⑤孤独死

孤独死もありました。入居者の親族から「連絡が取れない」との電話が管理会社に入り、見に行ってもらって発覚しました。事件性があるとまずいので、まず警察に連絡し、立ち合い捜査がありました。

事件性がなく、衰弱死であることがわかりましたが、捜査があるので近隣にはバレます。殺人などの事件があると大事になり、大量退去が出る可能性がありますが、自然死でしたので退去はありませんでした。

ご遺体の搬送、供養、掃除、リフォームは管理会社を通じて行いました。実は、管理会社からは「連帯保証人に損害賠償ができますよ」と言われましたが、それはしませんでした。ご家族が亡くなっているのに、そんなことはできないと思いました。

こうした対応の費用はすべて支払いました。さらにこの部屋は告知義務が必要になり、家賃は通常家賃の半額での募集となりました。事故物件は安い家賃で良い部屋に入れるので気にしない人には良い条件らしく、すぐ入居が決まりました。

私は事故物件の部屋がある一棟物も買っていて、事故物件を2戸もっていますが、どちらも入居後1度も退去なく暮らしてくれています。事故物件の告知義務は1度でも入居があればその後不要で、家賃を下げる必要もないと言われましたが、入居者が知らずに入ってあとでトラブルになるとまずいので、おそらく私は告知を続けるでしょう。

人の死に関わることなので仕方がないことですが、大家にとっては孤独死などによる事故物件化はなかなかつらいものがあります。

不動産投資をしていると起きる事件・事故⑥震災による損壊

東日本大震災の被害も結構受けました。都内物件は関東大震災の先例があるので、すべて地震保険に入っていましたが、他の物件は入っておらず、大打撃でした。

ユニットバスの崩壊、側溝の歪み、駐車場の波打ち、外壁の剥落、側溝の歪み、塀の損壊、地盤沈下、天井の落下など、大被害です。そのうえ、日立市の物件では放射能による水道水の飲料禁止まで出ました。

すべて自腹での対応になり、大幅な資金流出でした。放射能汚染に関しては、当時水が手に入らない状態で、たまたま出張で北海道に行ったらミネラルウォーターがいくらでも売っていたので札幌から送ったりしたものでした。

契約書に小さく書いてあるのですが、火災保険(損害保険)では核災害の被害は免責で保障してくれません。それ以外の地震由来の損壊はだいたい保障されます。

ただし、制約がいろいろあります。まず、火災保険に付帯する形でしか加入できませんし、火災保険の保険金額の半分までしか保障されません。さらに保険金額には、建物5,000万円、家財1,000万円という上限があります。

その他、いくつか使い勝手の悪い面がありはしますが、それでも全部自腹よりもだいぶ助かるはずです。東日本大震災以来、私はすべての物件で地震保険に入るようにしました。保険料が上がって大変ですが……。

不動産投資をしていると起きる事件・事故⑦水漏れ

水漏れもたまに起きます。水漏れは原因によって対応が様々です。もし、物件に問題があって水漏れを起こした時は大家の責任です。

外壁の亀裂、屋上防水の劣化、配管の劣化などにより発生した場合は、火災保険(損害保険)から被害の弁済と修理費用が支払われることがあり、やはり火災保険(損害保険)は強い味方です。

入居者のミスで水漏れが起きることもあります。以前、入居者が風呂の水を出しっぱなしにして水が溢れて漏れ、階下に水漏れが起きたことがありました。このときの入居者は物件・設備の問題だと言い張っていましたが、調べてみると物件・設備に問題はなく、よくよく聞くと本人の責任だと言うことがわかり、入居者の保険で弁済をしました。

賃貸派の私も、実をいうと一度水漏れの被害に遭いました。2階からの水漏れで大事な家財が台無し。大家に伝えると、「あなたの保険で払ってくれ」などと言う始末。上階からの水漏れでしたので、大家に見させて工務店を入れて調べてもらい、私に非はないとわかって、やっと弁済してくれました。自主管理の大家さんでしたので、こうしたことがわからず危うく私の保険が使われるところでした。

いずれにせよ、火災保険(損害保険)への加入は大家、入居者ともに必須です。

不動産投資をしていると起きる事件・事故⑧建物の破損

建物の破損も結構起きます。台風や大風、車の衝突などです。特にTVアンテナの落下は良く起きます。

以前、TVアンテナが落下して隣の家の屋根を壊したことがありました。こちらも保険がおりました。水漏れも、風水害などによる場合は、風水害の特約を入れておけば保険が出る可能性があります。しかし、建物の劣化による水漏れは対象になりません。この辺はシビアにチェックされます。

不動産投資をしていると起きる事件・事故⑨入居者クレーム

入居者同士のトラブルからクレームが来ることがあります。特に、音に関するクレームが多いのです。

隣の部屋の音がうるさい、友人を呼んで夜中騒ぐといったことはすぐクレームになります。対応としては、まず実態調査です。調査によって本当にうるさい時は、管理会社を通じて、入居者に静かにするように依頼します。

依頼が無視されたら強めの警告を行い、それでもダメな場合は法的な対応を取りますが、私はまだ警告ぐらいしかしたことがありません。

音に関するクレームは深刻で、早く対応しないと他の入居者の退去に繋がるので、迅速な対応が必要です。音を出す入居者も自覚がない場合があるので、たいていは依頼・警告で収まります。そうでない時は自然と退去してくれるので、私のケースでは大事になったことはありません。

不動産投資をしていると起きる事件・事故⑩粗大ごみの不法投棄

これも以前はよくありました。勝手にアパートの敷地や前の道路に粗大ごみを捨てて行く人がいるのです。私がされたケースでは、便器、発電機、大型TV、ベッドのマットレス、自転車などです。便器などはどう考えても業者だと思いますが、これはもう笑うしかありませんでした。

処分費用は大家が支払うので、こちらも大打撃です。特に、一部の物件はゴミが捨てやすいらしく、何度も捨てられました。きれいに掃除していてもだめで、警告文を貼ったり、植木を置いたりしましたが、それでも続いた時期がありました。

粗大ごみは見つけ次第すぐ撤去しないと、捨てやすい場所と認識され、被害が続きますから即対処が必要です。とにかくきれいにすること、警告文を貼ることしか手がないです。

我が家の近くでは、寮の敷地が粗大ごみの捨て場に狙われるらしく、近く監視カメラを設置するそうです。粗大ごみはとにかく処分に手間と費用がかかるので、困ったものです。

 不動産投資をしていて起きる代表的な事件・事故で、私が経験してきたものを列挙してみました。こうしたことは不動産投資にはつきものですので、上手に対処していくしかないでしょう。

まとめ

世間はいまだに大家は金持ちだからと入居者保護優先ですが、実態は大家の方が弱っているのです。

大家にばかり負担させると、そのうち優良な賃貸物件を提供できる大家が減ってしまいます。大家をあまりいじめないでほしいものです。

大家は大家で、より良い賃貸物件を維持すべく、頑張ってまいります。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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