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石川貴康の超合理的不動産投資術

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不動産経営を安定させるために必要なキャッシュの蓄え方

目次

不動産を継続して買うためには、キャッシュが必要になります。すべての物件が、経費まで賄えるようなオーバーローンで買えるわけではありません。フルローンであっても、諸経費の支払いは自己資金です。不動産を購入する際には、自己資金が必須になります。

前回のコラム「物件の収益を維持するための5つのポイント」で書いた通り、リフォームや設備投資をするにもキャッシュが必要になります。リフォームの度にリフォームローンばかりに頼っていられませんし、急な出費も発生します。

納税資金も必要になります。不動産を取得した後半年ほどして請求される「不動産取得税」は痛い出費です。固定資産税もかかります。利益が出れば所得税、もしくは法人税や地方税もかかります。不動産経営には常にキャッシュが必要なのです。

不動産投資は「勘定合って銭足らず」が普通、痛い目に遭った経験

私が初めて一棟物を、ローンを組んで買った時の失敗談です。6700万円の物件で6000万円をローンで賄いました。700万円は自己資金。さらに経費で600万円ほどかかり、こちらも自己資金。

予想はしていましたが、ほとんどの貯金を自己資金として投入したので、貯金がゼロになりました。第2回コラム「管理会社を間違えないために押さえておくべき6つのポイント」のコラムでも書いた通り、最初の物件は管理委託をした管理会社の募集能力が低く、空室があり、なかなか思うように家賃が入りませんでした。

ローンと利息を支払うと、あまり手残りがありません。それでも、初めての物件だったので家賃には手をつけず、そのまま預金していました。

半年後、不動産取得税の請求が来た時はびっくりしました。半年間の家賃による預金が全部消えたのです。当時は月10万円程度の手残り。[家賃-(ローン+利息支払い)=手残り]で、思ったより残らないところに、70万円を超える不動産取得税が来たのです。これには青くなりました。

その後、確定申告の時期になり、所得税を計算します。税金は利益にかかるので、 [家賃収入-経費=利益(課税所得) ]に対して税額計算がされます。意外と多くなる計算でしたが、この時も現金があまり残っておらず、持ち出しになりました。

キャッシュは、[家賃収入-経費-(ローン+利息支払い)]で少なくなっているところに[家賃収入-経費=利益(課税所得)]に対する税金が来るのですから、不足しがちです。

こうして、私は初の一棟物投資で、不動産取得税でのキャッシュ不足、確定申告でのキャッシュ不足を経験したのです。

その後、6月以降は住民税や固定資産税が発生します。固定資産税は木造住宅のため、さほどでもありませんでしたが、どちらも痛い出費です。その後は、繰り返しやって来る確定申告時の所得税支払い・住民税支払い・固定資産税支払いのためのキャッシュを残さなければならないのです。

不動産投資は、利益が出てもローンの返済・利息支払い・税金でキャッシュ不足に陥る可能性があります。不動産投資では「勘定合って銭足らず」が普通なのです。

不動産投資では、急な修繕費用でキャッシュ不足に陥る可能性がある

ローン返済や納税で定常的にキャッシュが必要なだけでなく、突発的な資金需要が発生するのも不動産投資の怖いところです。

以前、私の持つ鉄骨アパートで急な雨漏りがあり、多額の修繕費用が必要になりました。事故による漏水であれば保険が下りたのですが、単なる経年劣化と判断され、保険が適用されませんでした。自己資金でのひび割れの補修・外壁塗装・屋上塗装が必要になりました。

台風シーズンが迫っており、至急修繕しないと大雨の度に漏水となり、被害が大きくなると損害賠償ものになる恐れがありました。すでに濡れた家財の賠償はしましたが、これがさらに継続すると痛い。

至急修繕となり、足場の組立・ひび割れの補修・外壁塗装・屋上塗装で200万円を超える自己資金が必要でした。

不動産投資では、キャッシュを手元に残しておくことがなによりも大事

定期的にキャッシュ流出を生むローン返済・税金・突発的なキャッシュ流出を生む事故対応・修繕対応は避けることができません。私は何度かキャッシュがカツカツになる経験をしました。とにかく手元にキャッシュを残さないと不動産投資は大変なことになるということを学びました。

それ以来、怖くて家賃収入に手がつけられません。家賃収入はそのまま残し、一切生活費などには使わないと誓いました。不動産収入で贅沢するなどは論外です。貯金して、キャッシュを手元に残しておくことがなによりも大切です。まずは、不動産収入には手をつけないで、余裕資金としておくことが重要です。そのためには、不動産収入以外で生活を賄うことが必要になります。私が本業をやめない理由はここにあります。

また、良い物件を紹介された時に、迅速に資金手当てができることも重要です。すぐ手付を打って買い付けが入れられるというのは、物件を押さえる上で重要です。

できれば現金買いができると最強ですが、さすがにそこまでは難しいものです。それだけキャッシュを温存しなければならないからです。

急な出物物件を押さえるためにも、キャッシュを手元に残しておくことは大切です。ある程度の規模になるまでは、不動産収入のキャッシュで不動産を買うことを繰り返していかなければなりません。不動産収入には手をつけず資金を積み上げるためにも、浪費せず不動産収入には手をつけないだけの自制心と本業収入が必要なのです。

手元資金を残すためには定期積金を設定しておこう

手元に資金を残しておくには、定期積金が有効です。普通預金通帳に家賃収入を残しておくと、引き出しやすいので使ってしまう恐れがあります。

しかし、定期積金であれば一定期間が過ぎないと解約しにくいですし、ローン契約と同時に金融機関で定期積金の口座を開設しておくと、解約の理由をいちいち聞かれるので、使い込みを防いで資金が確保しやすいのです。

私は最近、新規で物件購入する際は、必ず定期積金を開設します。物件規模により積立金額はばらつきますが、月額5万円くらいが多いです。規模が小さくとも、月額2、3万円で必ず開設します。大規模修繕などの大口の資金需要に備えるためと金融機関に伝えると、信用力がアップします。

定期積金では、家賃入金タイミングに合わせて積金引き落とし日を設定すると、確実に“天引き”して強制的に積み立ててくれるので、お任せで資金が貯まっていきます。自制心がなくてもキャッシュが温存されるので、楽チンに資金が貯まっていきます。

緊急で資金を貸してくれる仕組みを知って、用意しておく

キャッシュを残していても、急な出費があり、資金が不足する場合もあります。その時は、緊急融資をしてくれる金融機関やその他機関を知っておき、融資をしてもらえる状況を作っておきます。

ローンを借りている金融機関に信用を積み上げておくことは当然として、日本政策金融公庫や自治体の制度融資も知っておきましょう。かく言う私も区の制度融資を借りて乗り切ったことがあります。

政策金融公庫も有力な選択肢です。私は、常に一口か二口は融資を受けておくようにして、政策金融公庫とのリレーションは崩していません。さらに根抵当権を設定して、いつでもすぐに融資してもらえるようにしています。

また、小規模企業共済掛金も行っています。共済掛金は緊急融資制度を備えています。

貯金する力を身につけるだけでなく、こうした緊急融資先をいくつか知って、そのうちいくつかは緊急融資が可能な状況にしておくことも安心材料となります。

貯金する力は不動産経営を安定させ、物件を買い続ける安心感を与えてくれる

不動産収入に対する考え方はいろいろあるでしょう。副業として儲けてリッチに暮らしたい人も多いのかもしれません。しかし、ある規模になるまで、不動産収入は安定しません。常に資金需要が発生します。規模拡大のためにもキャッシュは必要ですから、とにかく不動産収入は貯金して残しておくことが必要だと思います。

貯金して、キャッシュをキープすることで、不意の資金需要にも対応できます。さらに、積み立てた資金で物件をどんどん買うためにも、貯金する力は必須です。

自制心で貯めるもよし、定期積金化して強制的に積み立てるもよし。要は、とにかくお金を残し続けるマインドとシステム構築が必要なのです。貯金する力は、不動産経営を安定させ、物件を買い続けるキャッシュを確保し、長期的な不動産経営に安心感を与えてくれるために必須の力なのです。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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