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石川貴康の超合理的不動産投資術

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管理会社を間違えないために押さえておくべき6つのポイント

目次

さて、第1回目の 「最初の物件で失敗しないことが不動産投資成功の鉄則」に続いて、今回は「管理会社を間違わない」です。継続投資には、融資を受けることが必要で、融資審査に不利になるような“純”資産価値のない不動産を最初に買ってはいけないということが基本でした。あるいは、純資産としての価値ができるだけ高くなるように自己資金を入れて融資の比率を押さえるということでした。また、不動産で最初に失敗しないためには、仕事でお金を稼ぎ、貯金して、自己資金に充てるだけでなく、金融資産も持って属性評価をあげようということでした。その点で、自分自身が仕事で稼ぐ力が、最初の不動産の稼ぐ力と合わせて重要となる点に触れました。今回は、最初の不動産の稼ぐ力を最大限に引き上げる方法として、不動産を管理してくれる管理会社の選択を間違えないようにしなければならない、ということがテーマです。

私の失敗談「最初の1棟もの不動産で管理会社を間違えた実例」

私が最初の一棟物を買ったのは2004年のことでした。東京都練馬区にある物件です。この物件は今でも持っていて、順調にキャッシュを稼いでくれています。物件価格は6,800万円、1DK8戸、駅から歩いて4、5分の木造アパートです。借入は6,000万円、期間は20年で、残りの800万円と諸経費は自己資金でした。信託銀行系の不動産仲介会社の仲介を受け、売り主から引き渡し後、不動産管理は購入時の不動産会社にそのまま依頼しました。これが大失敗でした。

管理をそのまま継続した不動産会社は、会社と言うより個人事業主、駅前の古臭い不動産屋でした。私も最初の棟物なので、継続性を考慮し、そのままその古臭い不動産屋に管理を任せてしまいました。

最初に会いに行くと、相当な年齢の主人は調子の良いことばかり言います。「バブルの頃は・・・」と昔話です。一応、奥さんが事務を取り仕切り、まじめそうだったので胸をなでおろした次第。少し心配になりましたが、今まで管理をしてきたのだから、入居者の属性も知っているだろうし、安心かと思い、そのまま継続しました。

しかし、今では当たり前に結ぶ管理委託契約もなく、口頭になりそうだったので、私が手書きで目の前で書面を作り、管理の条件を決めました。今考えると、なんと時代に遅れた不動産屋だったのでしょう。

管理が始まると次々とおかしなことが……

さて、管理が始まって少しすると、おかしいな、と思うことが起きました。当時、私は物件の清掃を自分で行っていたのですが、たまたまある部屋の退去日に掃除に行きました。すると、退去後なのに、部屋の外、アパートの共用部分に残置物が山となっています。驚いて連絡を取ると、「連絡して処分します」とのこと。

退去の立ち合いもまともにしていないことがわかり、この不動産屋は怠慢に過ぎると気づきました。もし、退去者がそのまま残置物を置いていけば、処分費がかかります。危うく私がその負担をする羽目になりそうでした。その後、空室がいつまでたっても埋まりません。もう一室空くと、こちらも埋まりません。「問い合わせは来ていますか」、「内見はありますか」、と聞いても要領を得ません。こちらは初めての6,000万円のローンのプレッシャーを感じているので、早く入居をしてほしいのですが、なんとも気が抜けたような対応。

物件チラシを作って、近隣の不動産屋にも仲介をお願いしてくださいと頼みました。快諾する旨の返事がありましたが、その後も空室が続き、近隣の不動産屋に聞いてみましたが、そんな依頼はないと皆答えます。管理を委託している不動産屋に聞くと、「いろいろ手間取って云々」と言い訳を並べます。

業を煮やして、この不動産屋に断って、近隣の不動産業者に入居者の紹介を依頼して回りました。連絡は、私が管理依頼している不動産屋にお願いしますと言って回りました。すると、近隣の不動産業者は、口をそろえて私が管理委託している不動産屋とは付き合いたくないと言います。かなり評判が悪い業者だったことがわかりました。とはいえ、このままでは、私は損失を出し続けるので、とりあえず紹介を依頼しました。その後、何件か紹介があり、満室になりましたが、その後も空室になると、埋めるのに苦労します。

ある日、紹介を依頼した近隣の不動産業者から連絡が来ました。「あなたが管理を委託している不動産屋にお客さんを紹介しましたが、仲介手数料は払わないと言われました。大家さんに言われているので、払えません、と」と連絡が入り、「私はそんなことは一切言っていません。確認します」と返しました。管理を委託している不動産屋に聞くと「あの業者は気に入らないから、そう答えた」と言う始末。何を勘違いしているのか、自分の物件とでも思っているのか、自分の好き嫌いと古くからこの地域で商いをしているという自尊心を満たすために仕事をしているようです。近隣の不動産屋にヒアリングすると、大家に嘘ばかりついていることがどんどん発覚しました。

結局、管理を委託している大家を顧客とはとらえず、会った時だけ愛想よく対応するだけの怠惰で傲慢な業者だとわかりました。まともな「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」もなく、大家に嘘をつき、大家に損失を与えるような始末でした。

旧来の不動産管理業者の変更とそのときの反省

結局、2年ほどで前の持ち主からの管理会社を切り替えました。この間、満室になったことはほとんどありませんでした。切り替えた業者は、2棟目の管理業者で、管理レベルが段違いだったのです。
 入居者をきちんと管理し、近隣の不動産屋とも良好な関係を結び、「ホウ・レン・ソウ」も早くて的確です。その後、10数年この管理会社に任せていますが、今も満室です。
 このときの反省として、管理会社を選ぶ場合は、以下の点ができているところにしようとの教訓を得ました。

・「ホウ・レン・ソウ」がきちんとしている
・嘘をつかない
・大家をパートナーと考えて、適切な提案が行える
・自社だけでなく、大家も、他の業者もそれぞれが儲かるように考える
・入居者を大事にするが、同時に入居者の選別は適切に行う
・そして、なによりも入居付けする力がある

といったところです。

 「ホウ・レン・ソウ」がきちんとしているなどという基本的なことを最初に書いていて驚くかもしれませんが、こうしたことができない不動産管理業者がたくさんいるのです。
 次の「嘘をつかない」に至っては驚くかもしれませんね。でも、実際に嘘をつく業者は少なくなりません。4棟目の時の管理会社もひどいものでした。売り主が管理会社だったのですが、その管理会社は大家が変わったことを入居者に告げず、いろいろなお金を大家に黙って中抜きして懐に入れていました。
 大家に適切な提案ができる管理会社も少ないものです。なんでも高い設備を入れればいいと言うわけではありませんが、考えもなしに今流行りだからと提案する管理会社もあります。これでは、大家はコストがかかり、大家が儲かることが視野に入っていません。
入居者が入れば管理手数料が入るので、大家が儲かろうがどうだろうが、とにかく入居者が入ればいいといった考えでは、大家はいつも出血を強いられます。たとえば、「モニターフォンが不可欠です」といってくる場合と、「モニターフォンは入居に影響しません。それよりも、○○しませんか」と提案してくれる違いです。
そして、入居者を大切にして、問題があれば即対応してくれるのは当然として、同時に入居者の選別は適切に行うことが非常に重要です。

ダメな管理会社はすぐに変えるべし

8棟目の管理会社は、滞納者への対応がいい加減で結局2年居座られたうえに、私自身が裁判を起こして強制執行せざるを得ない状況になり大損害を受けました。このときは審査がいい加減でしたのでひどい目にあったのです。今では、きちんと入居者を審査できる体制のない管理業者とは付き合っていません。

そして、なによりも入居付けする力があるというのが最重要です。不動産投資は、賃貸してくれるから収入があるのです。入居がなければ収入はゼロ、経費とローン返済でキャッシュが流出するだけになっては本末転倒。とにかく、良い入居者を見つけ、いつも満室になるように支援してくれる管理業者がもっとも大切なのです。
私は、購入依頼ずっと同じ管理業者に管理委託しているケースが多いのですが、それでも、3棟ほどは管理会社を変えたことがあります。やはり、だめな管理会社だと、入居が低迷し、ムダな経費と手間がかかり、大家の儲けが損なわれます。

継続して不動産投資をするには、物件ごとの収益力をあげ、複数棟持っても手間がかからないようにしてくれる管理会社がとても大切です。そうでないと、次の不動産を購入する資金も貯まりませんし、手間がかかれば物件を増やしていくことが困難になるからです。

そして、管理会社にはきちんと委託料は払いましょう。管理会社が儲かるイコール大家が儲かり、入居者もうれしいという状況をつくり、継続していくことが、継続的に不動産を買い進めるためには大切になるのです。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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