石川貴康の超合理的不動産投資術
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2018年6月29日(金)
最初の物件で失敗しないことが不動産投資成功の鉄則
不動産投資が一般化してだいぶ経ちました。私が始めた16年前は、不動産投資の書籍はほとんどなく、不動産投資をするための情報も限られたものでした。幸いなことに、物件を徐々に増やすことができて、今では15棟165戸、借地9件といった、まあまあの規模になっています。16年かけてゆっくりと増やしてきたわけです。こうした経験を活かして、これから4回にわたって継続的に不動産投資を行うための勘どころをお伝えしたいと思います。第1回目は「最初の物件を間違わない」です。
ワンルームと一棟のどちらにも存在するリスク
不動産は複数持った方が安定します。1部屋だけの所有ではリスクが高くなります。空室になれば、家賃はゼロ、一方で経費はかかります。入居がなくても、固定資産税はかかりますし、劣化すれば修繕費、入居者が決まるまでの電気料金などの公共料金もかかります。ローンを組んでいれば支払利息もあり、ローンの返済も重くのしかかります。
同様に、1棟だけでもリスクが高まります。不動産がある地域がいつまでも賃貸需要が旺盛とは限りません。競合物件が登場し、入居が厳しくなるかもしれませんし、家賃下落に巻き込まれるかもしれません。
不動産は、できるだけ複数持ち、リスクを分散できるようにすべきなのです。
継続的に不動産投資を行うことが難しくなるケースがある
しかし、不動産を継続的に買い進めるのも簡単ではなく。お金がかかります。余程稼いでいる人を除き、現金買いを継続できる人は少数派でしょう。かく言う私も、最初の区分所有(ワンルーム)の投資以外は、すべて融資を組んでの投資です。
特に、1棟物の場合は金額も大きいため、現金買いを指針にしていては、自己資金がなかなか貯まらず、買い進めるスピードが遅くなります。やはり、継続して買おうとする際は、金融機関からの融資が必須です。
しかし、融資を受けて買う場合、最初の物件を買い間違えると、次の物件の融資が下りず、買いにくくなることがあります。
金融機関は投資不動産を“純”資産として評価します。純資産とは、資産から負債を引いた正味の資産価値です。純資産が少ないと、不動産としての純資産価値が低いと評価され、融資が躊躇されるようになるのです。
では、純資産としての価値が低いと、なぜ敬遠されるのでしょうか。それは、金融機関が担保価値を指標に融資をしているからです。
担保価値とは、簡単に言ってしまうと、その資産を処分した時にどれほどの価値があるかと言うことです。仮に、5,000万円の価値の不動産を持っていて、融資残高が4,000万円あれば、正味の価値は差し引き1,000万円と考えます。かなりざっくりした考えですが、これが純資産としての評価です。もし、この不動産を処分して5,000万円で売れれば、4,000万円返して、1,000万円が残るという計算になります(わかり易くするためにだいぶざっくりと計算していることはご容赦ください)。この不動産を買う時に、融資で5,000万円借りて、まだ、そのまま5,000万円の融資が残っているとしたら、価値は5,000万円マイナス5,000万円で“0”となります。
金融機関は不動産の担保価値を厳し目に見るので、通常は売買価格よりも低く評価します。5,000万円の売買価格でも、担保掛目8掛けで4,000万とか、さらに8掛けで3,200万とかです。もし、別な金融機関の融資5,000万で買って、この物件が別の金融機関で評価された時に、売買価格が5,000万でも担保価値で3,200万円となりえます。その際、残債5,000が万円あれば3,200万円マイナス5,000万円でマイナス1,800万円の評価となり、マイナス価値の資産となってしまいます。
これは、企業で言えば債務超過の状況です。資産価値がないので、追加融資をする際に、マイナス資産を持っている人に融資することになり、金融機関は融資をしないとの判断をしかねないのです。このようなことになると、融資が引けなくなり、継続的に買っていくことが難しくなるのです。
なぜ、マイナス資産評価の不動産になってしまうのか
評価上、マイナス資産になる理由はいくつかあります。第一に、高い価格で不動産を買ってしまう場合です。売買価格の評価の妥当性は難しいですが、仮に、本来4,000万程度の不動産を5,000万で買ってしまえば、それだけ不利になります。高い価格の不動産の購入は避けなければなりません。
特に、不動産投資がブームのようになっている時は、価格が上がっている時なので注意が必要です。全体に価格が上がっている時に買ってしまい、ブームが終わってみれば、実はたいした価値ではなかったというケースでは、資産価値がマイナスになる可能性が高くなります。
第二に、自己資金をあまり出さず、投資金額のほとんどを融資資金で賄うような場合です。物件価格の全額を融資してくれることを“フルローン”、物件価格以上の金額を融資してくれることを“オーバーローン”と言います。フルローンやオーバーローンでは融資金額が大きくなり、正味の物件価値を大きく毀損する可能性があり、次の融資を受けたい時に純資産価値がないか、少ない物件で、融資先としてリスクがあると判断されてしまうのです。
物件価格の高騰期の購入と頭金を入れずにすべてローンで賄うというのは、次の不動産を買う時のマイナス要因になるわけです。
継続的に不動産を買うためには、純資産が毀損しないようにする
純資産がマイナスでは債務超過状態で、そこまでいかなくとも純資産が少ない場合は破たん時の回収が困難と判断されると、追加融資が敬遠されます。特に、最初の1部屋目や1棟目で純資産が毀損されている状況では、追加融資を獲得しにくくなります。
こうした状況を避けるのは、第一に、価格の適正な物件を最初に購入しなければなりません。焦って、高い物件を買うようなことは絶対に避けなければならないので、慎重に1件目を選びます。
周辺の売買実績と、表面利回りを確認し、価格が高いとか、利回りが低い場合は購入を吟味すべきです。また、不動産価値を知るには不動産の積算価値を知らなければなりません。積算価値とは不動産を原価で見る考え方です。土地は路線価(または実勢価格)で、建物は再建築した際の原価を見積もり、そこから年数に応じた劣化分を引いて、土地と建物価値を合算します。積算価値が低いと、金融機関の評価は低くなるので、できるだけ積算価値の高い不動産を選びます。もちろん、積算価値がすべてにおいて正しいわけではありませんが、一つの目安になるので留意します。
第二に、投資時に自己資金をそれ相応の割合で入れるということです。物件価格5,000万円に対し、自己資金を2割入れれば、融資額は4,000万円になります。それだけ負債が減るので、純資産価値が上がるわけです。つまり、フルローンやオーバーローンばかりを指向せず、できるだけ自己資金を貯めて、それを使うことを心がけるということです。
不動産の純資産を毀損しないこと以外にすべきこと
マイナス評価になったり、低価値評価になったりする不動産を最初に買うと、純資産評価でマイナスポイントとなり融資が厳しくなります。結果、次の不動産が買いにくくなります。できるだけ、安い値段で買うこと、自己資金を多めに入れることが鉄則です。
自己資金を多めに、といっても、難しいという声が聞こえてきそうです。自己資金が多く入れられるということは、稼ぐ力があるということです。不動産であれば安くて、家賃が稼げる高収益物件を手に入れるということですから、吟味して高収益物件を見つけなければなりません。
稼ぐ力は、不動産収入だけでなく、自ら稼ぎ出す力でもいいのです。つまり、仕事で稼ぐということです。仕事で稼いだお金を、浪費せず、不動産という資産の獲得に充てていくのです。
融資では、不動産や預貯金といった金融資産も評価してくれますが、それだけでなく、本人の仕事で稼ぐ力も評価してくれます。いわゆる“属性”というものです。資産があり(要は、預貯金がきちんとできる人かという評価)、安定した十分な収入があり(要は、稼ぐ力があるか)、人として融資しても大丈夫かといった評価が属性の良し悪しとなります。
単純な話、稼いで、きちんと貯金して、貯金と1棟目の不動産収入を自己資金にして、ムダ使いせずに資産化していくことが必要なのです。
不動産投資は、一発逆転を狙うようなギャンブルではありません。地道な投資であり、保守的に、合理的に行うべき投資なのです。金融機関が“純”資産価値を見て、融資を検討するのは、ある種合理的であり、その理論に則っていけば、どんどん融資してくれるのです。金融機関もビジネスですから、金融機関が嫌う、純資産がない状況を避けるためにも、最初の不動産は無理せず高いものをフルローンで買うなどせず、きちんと頭金を入れて、適正価格と利回りの物件を買うべきです。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など