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加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠

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リスクを回避するための設計・施工、建物管理、賃貸管理の会社選定方法

目次

前回は販売・仲介の不動産会社についての私の経験や考えを披露しましたが、今回は、設計・施工会社や、建物管理会社、賃貸管理会社について、選ぶ際の注意点について考えてみたいと思います。

設計・施工会社を選ぶ際の注意点

まずは、設計・施工会社について、考えていきます。

古い話ですが、1990年の平成バブル崩壊の時にわかったのは、自分の専門外に手を出している会社はいつか倒産しかねないないということです。当時は不動産融資禁止令が出て、不動産の流通が長いことストップしてしまいました。売り買いに規制がかかったので、多くの人は不動産の価値が下落していくのを見守るしかなかったわけです。そのため、売った買ったの転売目的の会社、変な物(僻地、リゾート、ホテル、海外、ゴルフ会員権、絵画、小口分譲等)に手を出した会社は、だいぶ倒産しました。

逆に、設計・施工に徹していた会社は、生き延びています。堅実に自社の専門分野の領域を守っている会社は、信用できるし実際に長生きしているということです。

しかし、あまりに設計・施工に徹しすぎて、後のことは知らないでは、我々投資家は困ります。その後の販売や賃貸募集を自分でやらなければならない羽目に陥ってしまいます。

設計・施工、販売・仲介、建物管理・賃貸管理迄含めたワンストップ会社であれば、そのリスクは低減されます。尚、逆に設計と施工を分離させるという手がありますが、これはチェックの相互牽制にはなるものの、割高になったり、仕事の切り分けが難しく責任が曖昧になりがち、というリスクがあるので、あまりおすすめしません。

品質保証・アフターサービスも重要な要素です。なるべく充実した会社を選ぶようにしましょう。品質確保法で、基礎・柱・壁・屋上・雨水侵入部分等重要な部分に関しては、品質確保法で保証されていますが、それも含めて、アフターサービスの充実した会社を選ぶことです。

ただし、いかがわしい保証のある物件を割高で購入することはしないようにしましょう。昨今社会問題となっている、S社・S銀行によるシェアハウス事件では、共用スペースもない狭小(10平方メートル程度)シェアハウスを、割高価格(5千万円程度のものを倍の1億円)で購入したものでした。

S社は、入居者の職業斡旋もあって、高家賃で決められるからと、実現不可能な家賃保証で、建物売買差益等による自転車操業を繰り返していました。実際の入居率は、1~4割程度だったようです。更には、S社・S銀行は、「源泉徴収票」・「預貯金通帳」・「重要事項説明書」・「売買契約書」等も偽造していました。
いくら家賃保証があっても、相手が倒産してしまっては元も子もありませんので、こんな話に当たった時は十分に注意してください。

あとは、契約後に倒産しないように財務内容に体力のある会社を選ぶこと、更地や基礎、完成など重要なポイントでは必ず視察すること、分割支払いは遅く、少なめに設定すること、建築関係書類当は必ず受領し、保管しておくこと、等のポイントがあります。

最後に、融資は確実に実行してもらうようにしてください。建築請負契約では、通常、着手金、中間金、残金と、段階毎に、分割して支払うケースが多いかと思われますが、その場合、通常、融資も、その都度、実行されます。ところが、中には、悪質な金融機関もあり、融資承認、金銭消費貸借契約締結したにもかかわらず、決済前日になって、特段の理由も無く、ドタキャンするようなこともあります。

建築途中で、融資ドタキャンなど、目も当てられないですね。なるべく、一括融資・一括払いにする、金融機関から一筆貰っておく、重要な事は電子メール・録音等記録しておく、銀行側・当方側、複数で対応し、証人を増やしておく、白紙解約期限までに融資実行させる等の確実な対応が重要かと思います。

建物管理会社を選ぶ際の注意点

続いて、建物管理会社を選ぶ際に注意することについて考えてみます。

まず、リフォームを自社・自社関連会社で行っている場合には注意することです。これは、単純にボッタクリの被害に遭う可能性があります。特に緊急でない場合には、他社と相見積もりを取る、相場感を持ってみる等の注意が必要かと思います。仮に管理会社が他社に頼んでいたとしても、キャッシュバックを受けていたり、実は関連会社だという場合もあります。

特に、家賃保証契約で、指定のリフォームをすることとなっている場合には、不要なことまでやらされたり、ボッタクリの被害に遭うこともあるので、要注意です。

もうひとつ、長期修繕計画を確認することが重要です。

区分所有マンションの場合は、管理組合があり、管理費・修繕積立金を支払いますが、通常、ある程度は、長期修繕についても視野に入れているはずです。区分所有マンションによっては、当初、売り易くする為に、管理費・修繕積立金は安めにしておいて、ほとぼりが冷めた頃、値上げ、一括集金してくるところもありますので、注意が必要です。

その点、一棟物(アパート、マンション、戸建て)の場合には、管理組合・修繕積立金はありませんので、自分自身で管理・資金計画するしかありません。
特に、10年間~15年間周期での大規模修繕(外壁塗装、天井塗装、配管等)は、時間と費用がかかりますので、要注意です。

金食い虫のエレベータ、機械式駐車場等も、できれば避けたいところですが、もしあるのであれば、要注意です。

賃貸管理会社を選ぶ際の注意点

では次に、入居者を管理してくれる賃貸管理会社についてです。当然ですが、賃貸に強い不動産会社に委託するのが第一歩です。不動産会社と言っても、設計、施工、販売、仲介、建物管理、賃貸管理等、それぞれ専門、得手不得手があります。

賃貸管理をする場合には、賃貸に強い会社を選ぶことです。売りたいがために賃貸もやっていますよと言って、ほとんど、ノウハウも実績もなく、ほったらかしにされる場合もあります。そういう口だけ業者を見抜くには、賃貸管理部署の組織・スタッフ、管理戸数、入居率等も確認してみましょう。

次に、入居者募集状況をチェックしてみましょう。昨今は、入居者は、ほとんどがサイトで情報を見てから、物件を探して来るようです。ならば、入居者募集の充実したサイトを持っているか、あるいはそういった会社(アパマンショップリーシング、ミニミニ、SUUMO等)に委託しているかが決め手になります。

また、本当に募集しているかをネットで確認することも大切です。会社によっては、自社で、仲介手数料、広告料等が欲しいのか、面倒臭いのか、ネットにも掲載しないで、放置しているところもありますので、定期的にチェックすることです。

あまりに、不動産会社が頼りにならない時には、自分でも、知り合いの人脈、ネット等を活用して、入居者を確保するくらいの気持ちがあってもいいかと思います。私も、昔、妻が子供の通う幼稚園の委員長をやっていたとき、知り合いのネットワークを活用し、不動産会社より先に、入居者の方を見つけたこともあります。又、マンションの管理人さんルートからとか、自分のネットワークからの、入居希望の方が来られたこともあります。

空室を埋めるのはたいへんなご時世ですから、入居者の門戸は広めることです。人口減、物件増、不景気な中にあって、あまりに入居者の門戸を狭めるのは、機会逸失に繋がります。高齢者、低所得者、生活保護者、外国人等でも、門戸を閉ざさず、幅広く、受け入れることも検討に値します。高齢者でも、身寄りがいたり、チェック体制がしっかりとしていれば、大丈夫です。

生活保護者でも、給付金が確保されていれば、大丈夫です。外国人でも、ある程度、日本の習慣等に慣れた方であれば、大丈夫です。入居者希望者をステレオタイプで見ず、一人ひとりきちんと検討することが大切です。

むしろ、一見おとなしそうな方でも、いざ入居したらトラブルを起こすこともありますので、不動産会社による入居者選定や、こちらへの結果連絡は重要かと思います。

例えば、近くから近くへ引っ越す場合、急に入居したいという場合等は、しかるべき理由を確認しないと、場合によっては、近隣トラブル、滞納等何らかの事情があって、前の場所を追い出されたとかかも知れません。

私の場合も、いつの間にかノイローゼ気味の、入居者とは違う人が住み付いていて首吊り自殺されたり、急に入居してきてすぐに練炭自殺されたこともありました。

それと、募集案内情報は、賃貸管理会社のみに丸投げするのではなく、ある程度、自分でもチェックすることです。

例えば、私の場合、名古屋駅傍の一棟アパートの募集広告の際ですが、「亀島駅徒歩5分」とかいうのを、「名古屋駅徒歩12分、亀島駅徒歩5分」としてもらった上、物件の写真は、背後に、「ノリタケの森」や、名古屋駅の高層ビル群が見えるようなものを入れてもらったりして、工夫したものです。

やはり、ターミナル駅の徒歩圏ということや、優良公園施設・ショッピングモール等の傍ということは、強力なアピールポイントなのです。

最後に、安易な家賃値下げはしないほうがいいでしょう。また、そういった安易な提案しかしない賃貸管理会社は要注意です。リフォーム、リノベーション、家具家電設置等をして、物件価値を高め、家賃下落を緩和させる、むしろ、家賃アップを図るくらいの気持ちが欲しいです。

安易に家賃を下げると、収益還元法での物件価格も下がることになってしまいます。さすれば、融資受け、止むを得ず売却せざるを得ない際、不利になります。家賃値下げを検討するくらいに空室が続いているなら、他に、敷金・礼金減額、フリーレント、家具家電設置等の方法も活用する等、工夫することも重要です

トラブル事例:耐震偽装事件に関わってしまったときの話

それではここで、私が体験したトラブルについてお話ししましょう。2005年、S社との仲介・取引で、博多駅傍、名古屋駅傍にいい土地が出たので、購入し、アパートを新築(1棟約6,000万円:土地建物3,000万円ずつ)しました。

ところが、その後、S社が不慣れな東京のビル建築で、A氏(髪の毛も偽装していたという噂もあり?)・審査機関の耐震偽装事件にかかわってしまったことが判明したのです。もし、本件アパートも耐震偽装物件であれば、建物は無価値。
入居者の方には、引越先を用意させて頂き、建直すしかなくなります。6,000万円の債務超過になってしまいます。(不幸中の幸いですが、外資系金融機関から、ノンリコース(不遡及型)ローンを活用していましたので、最悪、物件を放棄すれば、ローン残債は免れることは可能でした。)

その後、同じく耐震偽装にかかわったK社・H社は、財務内容的な体力もなく、倒産しました。S社は、財務内容的な体力もありますし、迅速に、当該耐震偽装物件の入居者の方には、転居先を用意し、購入者からは同額で買い戻すという誠意ある対応をしました。

しかし、S社は、担当者の話によると、マスコミには騒がれるは、警察の捜査も入り、パソコン・サーバも押収され、暫くは仕事にならなかったそうです。やがて、S社の迅速・誠実な対応は評価され、立ち直り、上場するに至っております。やはり損をしてでも誠実な対応をすることが、不祥事に関わった企業が立ち直るための早道ということなのでしょう。

昨今では、M社等の杭打ち傾き問題、L社の天井防火壁不施工問題等、違法建築も多発していますので、新しい不動産会社との付き合いを始めるなら、これらの不祥事に関わっていないか注意が必要かと思います。

トラブル事例:マンションのリフォームを依頼したら現地視察するべき理由

不動産会社によっては、リフォームを依頼しても写真も送付してこないところもあります。本当に工事をやっているのかどうかすら不明です。

写真を要求してみたところ、違う部屋のものや、酷い場合、違うマンションのものが送られてきたこともありました。今となっては、うっかりミスなのか、わざとなのかもわかりません。わざとだとしたら、悪意というよりこちらをバカにしているレベルのひどさですが…。

少なくとも写真で、たまには、現地視察等で確認することも重要かなと思います。

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著者紹介

加藤 隆
加藤 隆

サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。

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