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特別連載『融資地獄 』

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第9回 競売にかけずに高値で「任意売却」し、借金を返済する方法

目次

スルガ銀行、レオパレス21……。名だたる企業が今ニュースに登場し、惨憺たる不動産業界の現状が露呈しています。しかし、これらは不動産業界において公表されていなかった氷山の一角に過ぎません。

本連載では、全ての不動産投資家がこれらを対岸の火事として受け止めず、自らが融資地獄への一途を辿らぬよう、事件の発端を振り返りながら、万が一の際の救済方法を伝授します。

※本連載は2019年4月、幻冬舎より発売予定の書籍『融資地獄「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ不動産投資ローンの罠と救済策 』の内容を一部抜粋・改編したものです

物件を売買する2つの方法、「任意売却」「競売」とは?

「任意売却」「競売」とは、いよいよローンが返済不能となり、物件を手放さざるをえない段階にきたときに行われます。よく並べて説明されていますが、似て非なるものです。

任意売却とは、不動産所有者(債務者)の意思で、不動産を売却することです。その際には抵当権者(債権者・金融機関)の承諾が必要です。

これに対して競売は、徹頭徹尾、抵当権者主導となり、不動産所有者は全く蚊帳の外です。この強制的な換金処理手続きを実際に行うのは裁判所です。

競売では、抵当権者や債権者が担保不動産(債務者や連帯保証人が所有する不動産も含む)のオークションを裁判所へ申し立てます。それが正当と立証された場合に、裁判所が主導してオークションを実施し、強制的に売却・換金します。

その際は入札方式となり、一番高い金額で落札されることになりますが、実際には時価の4~7割程度での売却となるケースが多いです。

物件売却しても、ローンは残ってしまうことがほとんど

一般的には、収益不動産の場合、売却をしてもローンが残ってしまうことが大半です。

例えば、物件の売却価格は1億2,000万円で、残ったローンが2億円であれば、マイナス8,000万円です。これだけの債務が残ってしまうのです。

このように、「不動産の時価」よりも「残ったローンの額」が大きいこと、すなわち不動産を売却してもなお、ローン全額が返済できずにローンが残ってしまう状態を、「オーバーローン」と呼びます。

債務者が自分で任意売却をしてくれる不動産業者を探してきて、銀行員と交渉するケースもあるでしょう。それでも前のケースで考えると、なんとか不動産を売っても8,000万円の残債が残ることになります。

超インフレなどが生じて不動産価格が大きく上がり、3億円で売れたということであればいいのですが現実的ではありません。

この残債はどうなるのでしょうか。正確に言えば「その金融機関によって異なる」のですが、多くの場合、これまで通り支払っていくのではなく、金融機関と相談をして無理のない範囲で払っていくことなります。
場合によっては任意売却時に残債を減額してもらえる可能性もあります。

抵当権と質権は異なるもの

ぜひ知っていただきたいことに、「抵当権」と「質権」の違いがあります。例えば、売却価格が8,000万円の物件に対して銀行が1億5,000万円貸している場合、たいてい1億5,000万円分の抵当権が付いています。

債務者の中には「銀行は債務者に対して1億5,000万円の債権を有しており、債務者の不動産については2億円の抵当権を持っている。
つまり、債務者にとっても不動産にとっても神の如く、独裁的な生殺与奪権を持っている。だから、不動産については債務者のことなど意に介さず、思うがままにできる」と考えている人もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

銀行が持っているのはあくまで「抵当権」です。銀行はお金を貸しているだけであり、債務者の返済が不可能になった場合に競売をする権利はありますが、不動産が銀行の所有物になるわけではありません。

ただし「質権」はこれと異なります。例えば、質屋さんに行ってお金を借りる際は「質草」を預けさせられます。

すなわち、質権者は質草を自分の支配下に置きます。質権者は質草を支配下に置いているので、返済が不可能になったら質流れとして処分換金ができます。

ところが抵当権の場合は、いきなり債権者に無断で質流れ処理はできません。
換金して、換金分を返済に充てるには、債務者にお伺いを立てて協力してもらうか、協力を抜きにして進めるなら、逐一、面倒な競売の手続きをしなければならないわけです。

すなわち抵当権とは、「質入れしても質草は預からず、そのまま持って帰って使ってもいい」という、「なんとも気前がよく、のんびりした、というか、ぼーっとした質屋」のような担保のとり方と考えればいいでしょう。

いずれにせよ、債権者であり抵当権者である金融機関といっても、債務者を無視して強権的にできる手続きは競売だけであり、勝手に不動産を処分できないのです。ここは大事なポイントとなります。

「絶対的正解」のない任意売却の上手な立ち回り方

競売にはさまざまなルールがある一方で、任意売却にはルールも何もありません。いわば何でもありの世界です。

例えば、Aさんがお金に余裕のある知り合いの買い手Bさんを見つけてきて、Aさん主導で話をまとめてもいいのです。

これに対して、銀行から「競売のほうが高く売れるかもしれない」と言われるかもしれません。ただ銀行の本音としては、なるべく多くの債権が返済されて、しかも時間や手間をかけないことが理想的です。

ですからAさん側に説明能力と交渉力があれば、債務者主導で話をまとめ、その過程で銀行に恩を売り、いい条件を引き出すことも不可能ではありません。

任意売却に関する書籍の中には、「任意売却とはこうあるべきだ」と書かれているものもありますが、そのような単純なものではありません。

任意売却とは、債権者と債務者の思惑を正しく見極め、この「独立変数の多元方程式」のような複雑怪奇な課題に対して、これを自己に有利に最適化し状況改善していくという「高度で知的なゲーム」ともいえます。

相手方の属性や状況によって、また主導する弁護士の経験やスキルによっても解は無限に存在しうる(あるいは、解が存在しない状況にも陥る)、極めて複雑なものなのです。

「任意売却には無数の解があり、場合によっては不正解を含む現実解しかない状況もありえる」としか言えない、そんなゲームだと言えます。

そのため一定の知識と情報と経験、ゲーム環境を解釈し、自己にとって有利に環境を利用できるスキルのある弁護士にかかれば、結果が大きく変わってくるのです。

【執筆協力】
畑中 鐵丸
【法律監修】
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所

 
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著者紹介

小島 拓
小島 拓

一般社団法人首都圏小規模住宅協会 代表理事
大学卒業後に不動産会社の営業職に従事し、以来10年以上にわたって、不動産投資のプロとして個人投資家の資産形成をサポートしてきました。しかし不動産投資の初心者を狙った悪質な業者の話を耳にすることや、自身が勉強不足なまま、先行き不安な物件に投資しようとする人を目の当たりにするにつれ、投資用不動産業界をもっとクリーンで、多くの人が正確な知識を持って安全に投資できるようにする必要があるという思いが募り、2018年度より、不動産業者としての立場に一旦区切りをつけ、投資用不動産業界の健全化を目的とした「一般社団法人首都圏小規模住宅協会」を発足しました。不動産投資による被害や失敗を減らしていく取り組みを随時行ってまいります。

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