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加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠

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不正融資・違法建築など、昨今の不祥事を避けるには?

目次

昨今、「コンプライアンス(法令等遵守)」が流行り言葉にように叫ばれている中、国・大手企業などによる不正・違法などがニュースを賑わせています。

国は、各種統計偽造による「大本営発表」。
大手企業では、インサイダー取引、粉飾決算、証券取引法違反、各自動車会社による偽装などもありました。
さらには、金融機関による不正融資、不動産会社による違法建築なども発覚しています。

このような昨今の不祥事を避ける方法はあるのでしょうか?
巻き込まれない方法について、考えてみたいと思います。

金融機関による不正融資

金融機関による不正融資として、記憶に新しいのはS銀行の事件です。

S銀行の場合を例にあげると、個人属性関係書類(「源泉徴収票」、「預金通帳」、「株式一覧表」、「健康診断書」)、物件関係書類(「レントロール」)、取引関係書類(「重要事項説明書」・「売買契約書」・「手付金領収証」)を偽造し、不正融資を行っていました。

不正融資を行っていた会社は、S銀行の創業者の同族会社で、創業者一族への不正融資、また反社会的勢力団体との付き合い・不正融資も行っていました。
そのほかにも、定期預金・定期積立金、高金利の使途自由無担保ローン、クレジットカードなどの抱合せ斡旋も行っていました。

定期預金については、歩積両建で、金融庁としては禁止していますが、強制的に積ませていました。
高金利の使途自由無担保ローンについては、デート商法も活用して、借りさせていました。取引においても、融資承認、「金銭消費貸借契約書」を締結しておきながら、その後、特段の理由もなく、融資ドタキャンするなど、無茶な行動も行っていました。

通常、金融機関は、個人属性、物件・取引内容まできちんとチェックして融資するものです。
しかし、S銀行の取引でひどかったのは、S社とグルになって、「かぼちゃの馬車」として後先のことまでも考えずに、その場限りで属性が必ずしも良くない人にまで、資産価値・収益性が無い物件に融資を付け、売り付けていたことです。

不正融資トラブルあれこれ

不正融資トラブルとして、考えられるものとしてどんなものがあるでしょうか。
例をあげてみたいと思います。

「預金通帳」の不正
ある金融機関の「預金通帳」のコピーを取った後、ほかの金融機関に預金を移し、「預金通帳」のコピーを取る、不動産会社から一時的に立て替えてもらうという手法です。

レントロール
売り主や一族、不動産会社関係者を一時的に入居させる、敷金・礼金・前払家賃を割愛し、家賃を下げ、フリーレント・各種プレゼントなどを付け、無理やり入居率を上げるなどです。
形式的に、不動産会社が借り受け、家賃保証するといった手法もあります。

「重要事項説明書」・「売買契約書」の不正
「重要事項説明書」・「売買契約書」については、対銀行用、実際のものと作成する、一旦値引き前のものを作成した後値引きしてもらうなどといった手法です。

複数法人スキーム
金融機関ごと・物件ごとに法人を設立し、ほかの法人の借入金実績は秘して融資受けするという手法のことです。複数法人スキームについては、昨今問題視されており、最悪一括返済要求されかねないようです。

名寄せ
なお、融資受け実績の際の名寄せについては、キーとして、氏名・住所で名寄せする場合が多いことに対し、結婚などで姓を変えたり、住所移転させたりする人もいるそうです。

以上のような不正の手法があります。
それでは、私たちが不正融資トラブルを避けるには、どうすべきなのでしょうか。

信頼できる金融機関とは

金融機関は、財務内容・収益内容によっては、倒産もありえますので、特に預金は要注意です(過去、北海道道拓殖銀行は倒産)。
ネットやテレビ、新聞などメディアからでも、ある程度、信用状況を把握できます。
不動産会社・各種勉強会・不動産経営仲間などからの口コミ情報もキャッチしておきましょう。

一方、信頼できる金融機関といっても自分自身で、物件をきちんと見ることも大切です。
レントロールを見て、入居時期が直前のみでないか、売主・家族・親戚などがいないか、同一企業のものばかりではないか、不動産会社が賃借・家賃保証しているだけではないかなどをチェックします。

外観でもチェックポイントがあります。表札や郵便受け、電気メーター、ガスの元栓、カーテン、洗濯物などから生活感をチェックします。

金融会社に渡す書類、個人属性関係書類(「源泉徴収票」、「預金通帳」、「株式一覧表」、「健康診断書」)、物件関係書類(「レントロール」)、取引関係書類(「重要事項説明書」・「売買契約書」・「手付金領収証」)などについては、原則として、原本(コピーではなく)を、不動産会社経由ではなく直接金融機関に手渡しましょう。

金融機関では、担当者1名とのみやり取り(面談・電子メール)をするのではなく、上司なども含め複数とやり取りすることもポイントです。重要事項に関しては、録音、電子メール、一筆など確証を残しておきましょう。

偽造の気配を感じ取ったら、乗らないことです。こちらが偽造したと濡れ衣を着させられる場合もあります。気を付けた方がいいです。
万が一、トラブルになった際は、早めに宅地建物取引協会、金融庁、消費者庁、警察、弁護士に相談しましょう。
宅地建物取引協会、金融庁は、不動産会社・金融機関を擁護する場合もあるので注意が必要です。

弁護士については、不動産業界、金融業界について詳しい弁護士を選びましょう。
金融庁の営業停止命令は6ケ月間のみで、それを過ぎたら再開します。「トカゲの尻尾切り」をしたところで、一般的に、企業風土というものはなかなか変わるものではなく、同じことを繰り返すものです。

「かぼちゃの馬車」事件の場合には、土地としての資産価値が低く、シェアハウスの肝である共用スペースがほとんどない、7平方メートル程度と狭小などと、使い勝手が悪く、マイナスだらけの土地のやり取りでした。
運営側は、入居率が実際は、ゼロもしくは1割~4割程度にもかかわらず満室と嘘をついていました。
さらに近隣想定家賃よりかなり高めの家賃設定をし、就職斡旋もしているからと嘘をついていました。近隣の家賃もきちんとチェックすることが重要となります。

金融機関が融資してくれるからといっても、安全とは限りません。キャッシュフロー(資金繰り)が回せることが最も重要になります。つまり、家賃のみでローンを返せるようにしなければなりません。
不動産経営には、修理費、家賃滞納、空室(敷金返却、リフォーム、空室フリーレント時家賃なし、家賃下落、広告費)などがありますので、予算は余裕を持たせておきましょう。

違法建築問題

違法建築は、昨日今日に始まったことではなく、2005年頃の姉歯事件を代表として枚挙にいとまがありません。

不動産経営者は、建築の知識に詳しくないため、偽装についてはわかりにくいものです。
偽装を回避するためには、財務や収益をチェックした上で信頼できる不動産会社・建築会社を選びましょう。

ネットやメディアの情報や不動産会社、不動産関係の勉強会・不動産経営仲間からの口コミ情報も重要です。
不動産会社の場合には、計画倒産もあります。
都合が悪くなったらつぶして、ほとぼりが冷めた頃にまた違う会社を立ち上げては同じことを繰り返します。
宅地建物取引協会などにおいては、ブラックリスト(会社名・役員名・違反事例)も公開されています。
しかし、あえて役員にならずに、従業員で参画したり黒幕となって悪事を働く輩もいますので、要注意です。

経営する不動産の建物を新築する場合には、完成する前に自分の目でつどつど確かめに行きましょう。
古い撤去建物がある段階と、更地の状況、地盤強化、整地の状況、基礎の段階、上棟・棟上げの段階、建物完成の段階などでチェックし、写真も残しておきましょう。

新築建物の場合、品質確保法によって、基礎・柱・壁・天井・雨水の侵入部分など重要な部分は10年間保証がついていますが、中古の場合には、注意が必要になります。
売主が宅地建物取引(宅建)業者の場合には、2年間の瑕疵担保責任がついていますが、売主が宅建業者以外の一般会社・個人などの場合には、特約で瑕疵担保責任を排除することも可能です。

「重要事項説明書」・「売買契約書」の特約部分の箇所をよく読むと契約上、特約による排除ができるかできないかがわかります。特約による排除ができない場合は、事前に物件を入念にチェックすることが必要となります。なお、チェックに関しては専門機関もあります。
自分でもチェックできるポイントとしては、地盤の状況、建物の傾き(地面と建物の傾き具合を目視、水平器・ビー玉を活用します。)、建物のひび割れ、柱・壁等を叩いてみてスカスカのような異音がしないか、雨漏りは確認できます。

建築に関してもトラブルになった場合は、宅地建物取引協会、消費者庁、警察、弁護士などに相談します。
なお、宅地建物取引協会の場合には、逆に、関係不動産会社の方を擁護する場合もあるので注意が必要です。

弁護士については、不動産・建築業界については詳しく無い場合が多いので、選定には注意が必要です。

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著者紹介

加藤 隆
加藤 隆

サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。

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