加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠
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2019年4月19日(金)
融資受けが困難な現在、それでも融資受けする方法とは?
2018年、S社・S銀行などによる不祥事「かぼちゃの馬車」事件の影響で、金融庁は「不動産融資禁止令」を出しました。
融資が行き過ぎれば、1990年の平成バブル崩壊・「失われた30年」の再来ともなりかねません。
昨今はどういった人達が融資受けに困っているのでしょうか?
今回は、一般的に融資受けが難しいといわれている方でも融資を受けるためのコツをご紹介します。
なぜ融資が受けにくくなったのか? 不動産融資禁止令が出るまでの経緯
私が28歳だった、1986年に不動産経営を始めましたが、そもそも不動産経営とは、昔ながらの地主が道楽でやるものでした。
その後1980年代に入り、サラリーマンなどの一般の人でも、ワンルームマンション経営をするスキームが出始めました。
そのころは、15平方メートルくらいの3点ユニット型(バス・トイレ・洗面所一体型)マンションが、1,000万円程度でした。その後、1980年代後半にかけて平成バブルが起こりましたが、1990年、国による不動産融資禁止令(総量規制)もあって、平成バブルが崩壊。
それから10年後、2000年のITバブルの後、土地を持たないサラリーマンなどが土地を購入し、一棟アパートを建築するスキームが誕生しました。
その後の2008年ごろ、アメリカのサブプライムローンなどに端を発したリーマンショックが起きました。
そして、2012年末からのアベノミクスにより、金融緩和・低金利が起こり、サラリーマンなどの間で中古一棟アパート・マンションを購入するスキームが流行りだしました。
そんな中、起こったのが2018年のS社・S銀行による「かぼちゃの馬車」事件などの不祥事でした。「かぼちゃの馬車」という名のシェアハウスを運営していたS社。30年間の賃料収入を保証するサブリース契約を売りにしていましたが、シェアハウスに入居者が入らず、契約通りの賃料が払えなくなりました。その影響で、破産の危機に追いやられたサラリーマン大家が続出したのです。
一般的なサラリーマンは高収入ではありませんが、比較的安定していると思われていたのでしょう。
大企業などは自分自身で投資市場などから資金調達ができますし、そもそも不景気で資金需要もあまりありません。
貸出先に困った金融機関は、サラリーマンに目をつけたのです。その先陣を切ったのが、S銀行でした。
不景気な金融業界にあって、S銀行は模範生だと金融庁も褒めていたくらいです。
ところが、サラリーマンも高度経済成長期のような「年功序列」・「終身雇用」で「気楽な稼業」ではなくなってきたのです。
給料減、リストラ、倒産も当たり前。給料・賞与、退職金、企業年金もあてにはならなくなってきました。
それでも、S銀行を始めとする銀行は本人の知らないうちに、時には不動産会社と一緒になって、各種書類まで偽造し、低属性(低収入・低資産)の人にまで、S社物件のような不良割高物件などにも、融資付けするようにしてきました。日本版サブプライムローンのようなものです。
いわゆる「かぼちゃの馬車」事件では、購入したサラリーマン大家の多くが銀行から1億円以上の融資を受けており、莫大な負債を抱えてしまいました。
その結果、金融庁は再び「不動産融資禁止令」を発令し、現在は銀行からの融資が困難な現状になっています。
2018年の「かぼちゃの馬車事件」以降、融資受けしにくい人とは?
融資が厳しいとされているのは、主に「サラリーマン」「低属性の方(低収入・低資産)」「自己資金が少ない方」「不動産経営初心者」「”投資”が前面に出ている場合」「不動産会社経由の申込」などの条件に当てはまる方々です。
それでは、これらの人々は融資を受ける方法はないのでしょうか? それぞれのパターンで、その原因と解決策を考えてみましょう。
①サラリーマン
サラリーマンの融資受けが困難になってきています。それでは、サラリーマンが融資を受けるには、どうすれば良いのでしょうか? それは、サラリーマンであることのみを前面に出すのではなく、不動産経営・不動産賃貸業も前面に出す戦略でいくことです。
不動産賃貸業とサラリーマンの両輪があれば強いのです。まずは、不動産経営を開始することです。
確定申告においても、白色申告ではなく青色申告にし、できれば事業的規模(原則5棟10室以上)にすると良いでしょう。法人化するという手もあります。
②低属性の人(低収入・低資産)
この場合、まずは長い目で見て高属性(高収入・高資産)を目指すことです。
逆に、政策的な見地から一般的に低属性の人ほど借りやすく、金利も優遇される場合もあります。それはN本政策金融公庫です。女性・年少者・高齢者(シニア)・新規開業者などがこれに当てはまります。
不動産経営の足掛かりとしては、注目に値します。それでもだめなら、まずは物件を現金購入し、収入・資産を形成してから、再チャレンジです。現金購入の物件を共同担保にして攻める手もあります。
③自己資金が少ない人
この場合には、まずは種銭を貯めることです。どんな資産運用においても、まずは種銭を貯めることは、第一関門です。
ここで節約マインドを身につけ、将来、高収入・高資産になっても、生活のレベルを安易に上げないことが大切です。
金融機関は、お金がある人にこそ融資したがります。そして、手元にはある程度お金を持っておくことです。不動産経営はリターンもある一方、リスクもあります。
修理、家賃滞納、空室(敷金返還、リフォーム、空室・フリーレント時家賃なし、家賃下落、広告費)など、急な出費が必要なこともあります。ローン返済に行き詰まったら終わりです。
借入金を活用するという意味では、自己資金はなるべく温存しておきたいものです。一般的には、自己資金は投資金額の1割を要求されるようです。
昨今では、場合によっては2割、3割といった例が増えてきています。
ただし、高属性(高収入・高資産)の場合、優良物件を割安価格で購入する場合、共同担保をつける場合などにおいては、この限りではないようです。
④不動産経営初心者
まずは、不動産経営について勉強し、ノウハウ・スキルを身につけましょう。
不動産経営は不動産のことはもちろん、法令、会計・税務なども知っておくに越したことはありません。
そうすれば、不動産会社・金融機関とも話がしやすいですし、悪徳不動産会社・金融機関などに騙されるリスクも減ります。
そして、サラリーマンにとっても、相乗効果でスキル形成ができます。金融機関も安心して融資しやすいものです。
私も行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士・管理業務主任者、AFP・FP技能士2級などの有資格者ですが、N本政策金融公庫からの融資受けの際には、合格証書のコピーを要求されました。
おそらく、起案に添付されたのでしょう。融資受けに有利に働いた事例です。
資格取得とまではいかなくても、浅く広くでも勉強して、スキル・ノウハウを身に付けておくことはいいことだと思います。
そして不動産経営の実績、ローン返済実績を積み上げていくことは、融資受けの際にも重要なことです。
⑤「投資」が前面に出ている場合
金融機関は、「投資」というスタンス・言葉は嫌います。特に、短期転売益狙いの場合です。
博打に近くなりますし、長期間の安定融資ではなくなります。「不動産投資」ではなく、家賃という安定収入を狙う「不動産経営」・「不動産賃貸業」というスタンス・言葉で交渉するべきです。
相続税対策など、目的が明確な場合でも融資は通りやすいようです。
⑥不動産会社経由の申込など
不動産会社経由の融資申込の場合には、各種書類偽造などの可能性も心配しているようです。
金融庁の指導もありますし、金融機関によっては、不動産会社経由の申込は原則却下という社内通達を出しているところもあります。
逆にいえば、不動産会社などから紹介を受けるにせよ、自分自身で金融機関に行ったほうが良い場合もあるということです。
その他の場合についても、ここで触れておきましょう。
●飛び込み
もともと飛び込みは難しいといわれています。不動産会社・不動産経営仲間など、紹介で行った方が通りやすいでしょう。
●購入後間もない場合
金融機関は、運用・ローン支払実績も見たがります。従って、通常は購入後、1年間(少なくとも半年)は動けません。どうせ立て続けに買うのなら、一緒にまとめて買った方が、お互いに手間も省けます。
どうしてもという場合には、同時に別の金融機関にあたる手もあります。
当然のことですが、融資は借りて終わりではありません。その後も、不動産経営を拡大していくことも大事です。
●融資金額が多い、高齢過ぎる
融資金額総額の壁(1億円、3億円、5億円など)、年齢の壁(人間の寿命80年=完済年齢80歳)が押し寄せてきます。その際は、通常のパッケージ型不動産経営用ローンではなく、事業用プロパーローンも検討に値します。
高齢になってくると、若い妻、子供名義で借りて、自分は必要に応じて連帯保証するというやり方もあります。
また、同一金融機関でも金利引下げ、他の金融機関への借換えなども、効果を発揮するので利用してみるのも手でしょう。
融資を受けるには、コツがある
一般的に融資が通りにくいといわれている方たちでも、交渉の仕方一つで結果が変わることがあります。
また、事前にきちんと準備をしておくことも重要です。
まずは、長期的に高属性を目指し、ノウハウ・スキルを身につけていきましょう。自己資金が少ない人は種銭を貯め、資金ができてからも生活レベルは安易にあげずに節約マインドを身につけることが大切です。
不動産経営をすでに始めている方は、ローン返済実績を積み上げていくことが、融資受けの近道といえます。
ここぞという時に無事に融資を受けられるよう、自分の属性がどこに当てはまるのかを見きわめ、コツを知っておきましょう。
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著者紹介
加藤 隆加藤 隆
サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。