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加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠

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納税と節税で注意するべきポイントと心構え

目次

私の場合は、1986年(当時28歳)の頃から不動産経営をやっていますが、最初の確定申告に当たって、不動産会社から紹介を受けた税理士の先生と一緒に作成し、やり方を教わり、翌年からは、自分一人でするようにしました。最初は、白色申告ですが、その後、青色申告にし、5棟10室以上になった際、事業的規模扱いとなりました。

現状、法人化まではしていません。税務調査にも2回入られていますが、全て自分で対応しています。それなりに経験豊富であると自負しております。

以下、私なりの、税金についての注意点です。何か一つでも御参考になれば、幸甚です。

財務諸表はしっかり理解して自分で作成しよう!

まずは、財務諸表をしっかり理解することから始めましょう。これを理解して、自分で作れるようにしておかないと、経営のあらゆる場面で致命的なミスを起こしかねません。

財務諸表とは、企業が決算を行うために作成する書類のことで、特に下記の3種は「財務三表」といって最も重要視されます。

 ・貸借対照表(BS:Balance Sheet)
 資産―負債=(自己)資本
 ・損益計算書(PL:Profit & Loss statement)
   売上―経費=損益
 ・資金繰り表(CF:Cash Flow)
   受取現預金―支払現預金=手残り現預金

中でも、資金繰り(キャッシュフロー)は最重要視しましょう。いくら、会計上利益が出ていたとしても、資金繰りがショートするといき詰まり、黒字倒産もあり得ます。

理想は、家賃のみでローン返済できることですが、止むを得ず、本業の給料等から不足分を補填することもあるでしょう。その場合も、無理のない範囲内に留めておくことです。
且つ、不測の事態に備えて、余裕を持たせておくことです。

急に修理費が必要になったり、家賃滞納や空室が起きることで、敷金返還、リフォーム費用、広告費等が要りようになることもあるからです。空室時家賃無しや家賃下落などの事態も起こりえます。

よく、「赤字だと意味ないじゃないか」という人もいますが、「損益計算書・税務申告書」と、実際の資金繰りは異なるものです。資金繰りがショートしないようにしっかり管理しましょう。

そして、損益計算書(税務申告書)は、節税も意識することです。減価償却費だけでなく、日常家事関連費を不動産経費にすること等により、経費を積み上げ、節税しましょう。

更には、追加融資や、止むを得ず売却せざるを得ない事態も想定しましょう。その場合は貸借対照表が重要になります。自己資本を充実化させ、債務超過にならないようにすることです。

建物は劣化して減価しますし、不動産価格は下落しています。一方で、ローン返済により負債は減っていきます。前者より後者が大きくなれば、自己資本は増えていきます。融資を受ける際や、止むを得ず売却せざるを得ない場合には、この観点からも見られます。

以上のように財務諸表を理解して活用するためには自分で計算式を作ることが重要になります。なまじ、汎用ソフトを利用すると、便利な反面、仕訳の仕組みや、財務諸表の見方もわからなくても、作れます。

ある程度は、自分で理解していないと、税務会計マインドが持てないと思います。仕組みを理解してこそ、資金繰り対策、税務対策等もできるのだと思います。

最後に、情報は日々更新しておくことが大切です。
そうすれば、処理が集中しませんし、タイムリーに、状況が把握できます。又、不動産会社、金融機関、税務署等にも、タイムリーに情報提供が可能です。

節税は権利である!

節税に関しては、強いマインドで追求していくべきだと思っています。節税は権利であると思ってください。

「納税は義務だ」、「節税するのは非国民だ」という人もいます。

しかし、脱税は違法ですが、節税は権利です。不動産所得は、自分で計算して、確定申告するものです。税務署は、納税不足の時は言ってきますが、納税し過ぎの時は何も言っては来ませんので、自分できちんと言うしかないのです。

また、節税すると融資受けできなくなるから、敢えて多めに納税するという人もいますが、本末転倒です。決算書が理解できない金融機関・担当者は、単純に赤字だと融資しないというところもあるらしいのですが、そんなところとは、こちらから付き合わないことです。

決算書が理解できる金融機関・担当者であれば、減価償却費等は、追加キャッシュアウトしていない経費として、キャッシュフローベースで、考慮してくれ、融資してくれるものです。

節税の際は、争点となり易く、且つ、インパクトの大きい、土地・建物の比率、事務所部分の比率等について、理論武装をしっかりとしておくことです。そうでなければ、いらぬ指摘を受けて節税に失敗することもありえます。

不動産取得をした後の税務署からの質問には正直に答えておこう

不動産を取得すると、税務署から、不動産取得の御尋ねがくる場合が多いです。これは、必ずしも、回答する義務はないようですが、回答しないと、更に質問が来たりする場合もあるとのことですので、できれば回答しておいた方がいいようです。

税務署の目的は、不動産購入資金の出所がメインのようです。誰かから贈与を受けていないか、納税を免れた資金を活用していないか等、徴税の糸口を掴もうというものです。

逆に、売却者側の情報も掴み、反面調査にも活用しているようです。私の場合は、貧乏一族で、贈与してくれるような奇特な人もいませんし、一介の安月給の貧乏サラリーマンで、アングラマネーもありませんので、正直に、回答させて頂いております。

税務署召集令状はまずは電話で確認

不動産経営が進むと、時折、聞きたいことがあるので、税務署に来て下さいという召集令状の葉書が来ることがあります。この場合、いきなり行くのではなく、まずは、電話してみることです。

税務署も人間ですので、見落とし、間違いもあり、電話で済むことも多いです。私の場合でも、贈与受けではないのに贈与税はどうなっていますかとか、小規模で赤字なのに事業税・事業所税はどうなっていますかとか、消費税課税事業者ではないのに消費税はどうなっていますかとかいった質問もありました。
又、単純に、借入金明細の2枚目を見落としておられ合計が合わないという質問もありましたし、ゼロの場合は、ブランクではなく、「0」と記載して下さいというのもありました。

税務調査にあった話(その1)

2005年頃、博多駅、名古屋駅傍の土地を購入し、一棟アパートを新築したのですが、その後、税務調査に入られました。後で聞いたのですが、規模が急に大きくなったので、来たとのことでした。

結果的には、パソコン入力の際、うっかりと、礼金か更新料かを入力漏れした件(数万円)を指摘され、追徴を受けました。結果的には、「御土産」で済んだのかも知れません。

税務署から届く御尋ねの手紙

税務調査において、過度に納税者に負担をかけ過ぎないようにとの風潮もあってか、御尋ねの手紙が時折来ます。これが来た人達からの情報や、税理士からの情報によると、どうやら、確定申告において、内容のわかりにくい項目(業務委託費、その他諸経費等)で100万円以上の場合は、この手紙が来るようです。

それ以来、なるべく明細を細かくし、内容のわかりにくいものが100万円以上にならないように工夫したところ、それ以降は、来なくなりました。

税務調査にあった話(その2)

2017年、2回目の税務調査に入られました。この際のポイントは、土地・建物の比率でした。
建物は減価償却の対象となりますし、又、不動産所得が赤字の場合には、支払金利は土地分は経費計上できません。

結果的には、通常の調査対象の3年間では、赤字が大き過ぎ、追徴にはなりませんでしたが、過去5年間迄遡られ、建物分が過剰過ぎるとのことで、30万円程度追徴されました。あと、5棟10室以上の規模で、青色申告(事業的規模)で、通常、ある程度、事務所経費は認められるのですが、事務所として専用性が弱いとのことで、指摘を受けました。

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著者紹介

加藤 隆
加藤 隆

サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。

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