不動産投資の最新動向
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2018年8月30日(木)
ワンルームマンション投資を失敗と感じる理由
不動産投資といえばワンルームマンション。そんなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。とくに副業として不動産投資を始めたいと考えている会社員にとっては、ワンルームマンション投資は比較的少額で始められる資産運用であり、個人年金代わりや余剰資金の活用につながると考える人が多いようです。しかしワンルームマンションは、長く持っていても成功しづらい投資先です。その理由は、出口戦略にあります。出口戦略がないワンルームマンション投資は、必ず失敗するのです。
今回は、どうしてワンルームマンション投資で失敗するのか、その原因について見てみることにしましょう。
ワンルームマンション投資のメリットだけ見ていないか?
ワンルームマンション投資(区分マンションの購入と運用)は、なんといっても手軽である点が特徴といえます。
アパート一棟を持つ場合と比べて必要資金が少なく収まりますし、資金が少ない分、失敗して大損するリスクも小さくなります。銀行からの融資を受ける場合も、比較的少額ですので審査が通りやすくなりますし、それゆえに年収や貯蓄額、職業といった属性の影響も受けにくくなります。
そのような特徴もあって、不動産業者としてもワンルームマンションは一般の会社員に勧めやすい投資となっています。不動産業者の勧誘文句は決まっています。
・「老後の生活費の安定になる」
・「預金より利回りが良い」
・「インフレ対策になる」
そんな営業トークを聞いて、挑戦してみようかと考えている人もいるかもしれません。実はそこに落とし穴があります。
営業マンが言っているようなメリットは確かに期待できるのですが、投資にリスクはつきものです。メリットだけを見て、予備知識や下調べが不十分なまま物件を買ってしまった結果、「こんなはずじゃなかった」「期待外れだった」となる人がたくさんいるのです。
収入ゼロ、最悪は赤字経営のリスクも
投資の失敗が具体的に何を指すかは人によって異なりますが、ワンルームマンション投資の場合は「思っていたほど収入にならない」と実感している人が多いように感じます。
月々の家賃収入に関しては、例えば、思うように入居者が確保できなかったり、空室の期間が長引くなどして、一定期間収入がゼロになるケースがあります。その間もローンの返済はしなくてはならないので、完全な赤字経営になってしまいます。
また地方では、物件購入後、近隣に新たなマンションが建てられ、家賃の価格競争に巻き込まれたという話も耳にします。空室を解消するために家賃の値下げをしていては、利回りに大きな影響を与えて返済期間も長引いてしまいます。
物件の売値に関しても、新築の物件の場合は、短期間で新築プレミアム分が消え、売値の査定額が下がることがあります。都内ではまだ物件価格は高止まりしているのでこのようなことは比較的起きないのですが、地方では購入した瞬間にガクッと値下がりすることもあります。
あるいは細かなポイントとして、節税目的で買ったにも関わらず、控除となる額が思っていたより少なく、控除期間が想定より短かったことを失敗と感じている人もいます。
以上のような失敗も、予備知識や下調べが足りなかったことが原因といえるでしょう。
当たり前のことですが、家賃収入が得られなければ月々のキャッシュフローはマイナスになります。マンションはローン返済ばかりでなく、維持・管理コストがかかり、将来的にかかる大規模修繕費のために積立をする必要もありますので、収入が少なければ赤字になります。
ワンルームマンション投資は、資金的なハードルが低く、比較的簡単に始められるのですが、「できる」と「儲かる」は別の話です。自分の予算内で買えるという事実と、買って儲かるかどうかは別の視点で考えなければいけないのです。
持っていても現状を好転させるものではない
すでに物件を持っている人の中には、「今、赤字だとしても将来的には資産になるから良い」という人もいることでしょう。
しかし、私はそうは思いません。現状が赤字で、将来的に黒字になる可能性が見込めないのであれば、投資としては失敗といえるからです。また、その物件は投資対象として不適格であり、すぐにでも手放したほうが良いとも思います。
また、そもそも私は、ワンルームマンションを持つことが投資になるという考えにも否定的です。ワンルームマンションは、わざわざ買わなくてもいいものの1つです。というのは、ワンルームマンションの購入は、借金をして物件を持つということであり、それ以上でも、それ以下でもないと思うからです。
ワンルームマンションを買うと、ローン返済が発生し、時間とともに残債が減っていきます。ただそれだけのことで、これといって現状は変わらず、家計などが好転する明確な理由もありません。いつかはローン返済が終わり、家賃収入によって完全な黒字化を達成できるかもしれませんが、その頃には築年数がたって物件価格も相当下がっているはずです。入居者も入りにくくなり、家賃をかなり下げてようやく入居者が見つかっても、建物の経年劣化で維持管理費と修繕積立費は膨らみますから、家賃収入はさらに圧迫されてしまいます。実際の収入は、かなり寂しいことになるでしょう。大きなマイナスにはならないものの、特にプラスにもならない。それがワンルームマンション投資なのです。人生に不可欠なものではありませんから、買わないという選択肢もあります。
ただし、ワンルームマンションという不動産は自分のものになります。なので、買いたい人は買えばよいと思います。
年金の足しになる、節税になるといったメリットはありますが、その手段はワンルームマンション投資だけではありません。不本意な結末を避けるのであれば、それくらい距離をとってみるくらいの意識でワンルームマンションと向き合うのが良いと思います。
いつ、いくらで売るか考える
では、ワンルームマンション投資で失敗しないためにはどうしたら良いのでしょうか。これから購入したいと考えているのであれば、まずは出口戦略を考えるべきでしょう。出口とは、いつ、いくらで売るかです。
例えば、区分マンションを扱っている業者の中には、賃貸中の中古物件を購入し、入居者が出て空室になったタイミングで売却するというビジネスを展開している会社があります。買う相手を見つけられれば、それだけで利益を出せるのです。
個人として区分マンションを持つ場合も、同じような計画を考える必要があるでしょう。「いつ」については、入居者がいるときの方が、空室になっている時よりも高く売却できる可能性があります。ただし、安く貸していると、そのせいで売却価格が安く見積もられることもあります。
そう考えると、賃料の相場を押さえておくことが大事ですし、広さや築年数などの条件が似ている物件が、市場でいくらで売買されているか知っておくことも重要です。
市場の相場情報などを見極めながら、いつ、いくらで売るかを明確にすれば、思わぬ赤字が出たり安く売却するといった失敗はしづらくなります。
事前に計画しておけば、赤字になる物件を掴む可能性も抑えられますから、結果として転売益を得られる可能性も高まります。
最新の情報を集めて計画を見直す
すでに物件を持っている場合も、「思っていたほど収入にならない」と感じるのであれば、いったん売却するのが良いかもしれません。その場合も市場価格などに関する情報が重要で、売値を考える目安になるでしょう。
例えば、現状は都市部を中心に不動産価格が高値となっていますので、売り時としては良いタイミングかもしれません。
いま売るのであれば、もしトータルの収支で損が出るとしても、それは最小限の損失であるといえます。今後はどこかのタイミングで物件価格がガクッと下落するだろうと考えられており、そうして相場が下がってしまえば損失はさらに広がります。
しかし逆に、まだしばらくは上がると考えるのであれば、もう少し待つこともできます。
地価の動きを正確に予想することはできませんので、売却計画の中身も人それぞれです。計画の精度を高めるには、自分で情報を集め、自分で判断する必要があります。
また、不動産取引は売主と買主による取引ですので、相場よりも高く買ってくれる人が現れる可能性もあります。
そのような可能性を狙うために、複数の業者に見積もりを依頼したり、定期的に査定してもらうといった方法も有効です。いずれにしても、まずは出口戦略を明確にすることが大事です。
購入時に想像していたような結果が出ていないのであれば、最新の情報を集めて、出口戦略を立て直しましょう。
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著者紹介
小島 拓小島 拓
一般社団法人首都圏小規模住宅協会 代表理事
大学卒業後に不動産会社の営業職に従事し、以来10年以上にわたって、不動産投資のプロとして個人投資家の資産形成をサポートしてきました。しかし不動産投資の初心者を狙った悪質な業者の話を耳にすることや、自身が勉強不足なまま、先行き不安な物件に投資しようとする人を目の当たりにするにつれ、投資用不動産業界をもっとクリーンで、多くの人が正確な知識を持って安全に投資できるようにする必要があるという思いが募り、2018年度より、不動産業者としての立場に一旦区切りをつけ、投資用不動産業界の健全化を目的とした「一般社団法人首都圏小規模住宅協会」を発足しました。不動産投資による被害や失敗を減らしていく取り組みを随時行ってまいります。