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不動産投資の最新動向

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業者選びは不動産投資の要、失敗しないための心構えとは

目次

普段の生活に加えて、自分で物件の管理を行うことは多くの人にとって難しいものです。業者選びは肝心ですが、良い会社に出合うこと以上に、必要なことも中には存在します。今回は管理会社を焦点に、業者選びのポイントと心構えを解説します。

業者任せにせず、自分で知識をつけて決断することが大事

不動産投資が難しいのは、人を頼らなければならないところがあるからです。
例えば、物件を探す際には仲介する不動産業者を使います。購入後は物件の管理を管理会社に頼みます。

実はそこに、不動産投資で失敗する原因も含まれています。悪質な業者を頼ってしまったばっかりに、期待した収益が得られなくなったり、損をしたり、最悪のケースとして騙されたりすることがあるのです。

話は少しそれますが、私は首都圏小規模住宅協会(以下、都小協)の代表理事を務めています。都小協は、不動産投資業界をよくしたいと願う業界関係者が集まって組織した団体で、私を含む会員各社が業界の健全化に向けて精力的に啓蒙活動をしています。今後は投資家向けの活動として、投資リテラシーを高めるための勉強会やセミナーなども展開していく予定です。

そのような活動を計画する背景には、残念ながら、悪質だなと感じる業者と全くもって無知なまま不動産投資を行う投資家の存在があります。彼らに騙されないためには、協会を通じて業界側から健全化に取り組むことが重要であると同時に、投資家自身も勉強し、知識を増やして決断していくことも大事だと思っています。

仮に悪徳業者と呼ばれる業者がいたとしても、知識があれば騙される可能性は小さくなります。今回はその視点から、業者の選択と付き合い方について考えてみます。

不動産業者の話を鵜呑みにしない

まずは物件の仲介を行う不動産業者についてです。私が言うのもおかしな話なのですが、不動産業者の質はバラバラです。その原因は、異業種と比べて離職率が高く、知識豊富なベテランと、昨日まで別の業界にいたような経験のない人が混在しているからだと思います。そのため、会社の規模が大きいからといって、いい物件を扱っているとは限りません。逆に、規模が小さくても、親身になっていい物件を探してくれる会社もあります。

また、営業マンとして芽が出なかった人が入れ替わっていく一方、業界内には海千山千の人もいます。巧みな話術でお客を買う気にさせる販売のプロのような人です。

買い手となる投資家は不動産に関して素人であることがほとんどですから、言いくるめられたとしても不思議ではありません。対峙する相手が、経験乏しい人かもしれず、販売のプロかもしれないという不透明な状況の中で、投資家は業者に物件選びを頼らなければならないのです。

そのような状況で自分の身を守るには、投資家側としてもある程度の不動産の知識を持つ必要があります。つまり、勉強するということです。具体的には、物件の相場を調べたり、ランニングコストを計算したり、購入後の収益をシミュレーションしてみるといった方法が考えられるでしょう。

例えば、物件を売りたい業者としては「家賃収入が年金になる」「資産が生命保険になる」と言うかもしれません。確かに、不動産は年金や保険金の代わりになります。しかし、そういったメリットが得られるのが何十年も先だとしたら、物件も劣化しているはずです。果たしてその時にどれだけの資産価値になるか考える必要がありますし、継続的に家賃を得るには、入居者を確保するための修繕費用がかかります。

そのようなシミュレーションをするのは投資家の役目です。また、責任を持つのも投資家自身です。シミュレーションをして赤字になりそうな物件なら、買わなければいいだけです。そのような物件を自信満々に推す不動産業者を避けることもできます。

不動産投資で失敗する背景には、業者の質が悪かったり、倫理的に問題があったりするケースもあるのですが、買い手側の問題として、勉強する意欲が不十分であるケースも少なくないのです。

自分の物件は、自分の目で管理状態を確かめる

管理会社選びでは、まず実績を確認することが大事です。実績とは、例えば、地域でどれくらいの物件数を管理しているか、どれくらい長く営業しているかです。

管理会社の質も様々ですが、業者を変えることは簡単にできますので、仕事のできない業者は長続きしません。その点で、管理の実績を見ることが1つのポイントになるのです。

ただし、それは管理会社選びの第一歩目にすぎません。信頼できる業者を選ぶためには、その会社が管理している物件を実際に見にいき、管理状態を確認したり、ランニングコストの金額や内訳などを確認することも大事です。

実際に会って話を聞くことも重要です。直接会って話をすれば、実績についてもよくわかりますし、話しぶりや考え方などからちゃんと管理してくれそうかどうか判断するヒントにもなるでしょう。

その点から見ると、全国展開しているような大手の管理会社は安心度が高いと言えますが、本社と管理を頼みたい物件が離れている場合は注意した方が良いかもしれません。管理業務は日々のことで、もっとも避けたいのは放ったらかしにされることです。管理する物件が遠ければ、その可能性が高くなります。

実際、関西の会社で、全国規模で相当数の物件を管理しているところがありましたが、業績が悪化したことによって手が回らなくなり、回収した賃料を使い込んだ結果、管理を放棄したケースがありました。

そういう可能性も踏まえながら、信頼できそうな会社を選ぶことが重要ですし、選んだ後も、頼んだ通りに管理してくれているかどうか定期的に確認することが大切なのです。

物件の管理は「自分でやる」という意識が業者選びにも役立つ

管理についてもう1つ重要なのは、本来は自分でやるものだと意識しておくことです。不動産投資というと、管理会社をセットで考えてしまいがちですが、そうではありません。基本は自分の目で見て、自分の手で管理します。時間的、体力的、距離的にそれが難しい場合に、管理会社にアウトソーシングするものなのです。

突き詰めて言えば、物件の仲介も同じです。本来は自分で良い物件を探します。しかし、個人で収集できる情報は限られますので、その部分を補うために仲介業者を使います。仮に物件を持ったとしても、管理してくれる会社がなければ自分でやらなければなりません。物件を売りたいと思っても、買い手を見つけてくれる会社がなければ、自分で探さなければなりません。

実はそれが不動産投資の本来の姿で、業者に頼むことが当たり前ではありません。不動産投資は、単にオーナーとなることを指すわけではなく、物件の管理や、最終的な出口となる物件の売却までを含むのです。

あらかじめそういう意識を持っていれば、人任せになる可能性も抑えられるでしょう。また、自分がやるという意識があれば、一括管理を任せるとしても、管理業務と向き合う姿勢が変わります。自分にとって大事な物件を、自分と同じくらい大事に扱ってくれる業者を選ぼうという気持ちが生まれるはずだからです。

そのような意識を持つためにも、まずは自分で管理することを出発点に考えるのが良いと思います。その上で、自分では手が回らないところを依頼します。
つまり、自分で管理、それが難しい場合は部分管理、どうしてもできない場合に一括管理という順番で考えるということです。

そう考えると、業者選びも自己責任の範囲です。
不動産投資で失敗した人の中には、不動産業者や管理会社の文句を言う人もいます。しかし、業者に問題がある場合もありますが、その会社を選んだ自分にも責任はあるはずです。

人に何かを頼むのは難しい作業です。これは不動産投資に限らず、日々の仕事にも言えることかもしれません。部下に期待通りの仕事をしてもらうには、どうしてほしいか、どうやってやれば良いかを明確に教える必要があるでしょう。

「なんでできないんだ」と怒るのは簡単ですが、できないのには理由があります。教え方が悪いか、できないことを頼んでいるのです。管理も同じで、できるかどうかを見極めるのは投資家です。部下は簡単にはクビにできませんが、管理会社は変えられます。そのような選択肢も頭に入れながら、自分が望む管理を追求し、実現していくことが大事なのです。

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著者紹介

小島 拓
小島 拓

一般社団法人首都圏小規模住宅協会 代表理事
大学卒業後に不動産会社の営業職に従事し、以来10年以上にわたって、不動産投資のプロとして個人投資家の資産形成をサポートしてきました。しかし不動産投資の初心者を狙った悪質な業者の話を耳にすることや、自身が勉強不足なまま、先行き不安な物件に投資しようとする人を目の当たりにするにつれ、投資用不動産業界をもっとクリーンで、多くの人が正確な知識を持って安全に投資できるようにする必要があるという思いが募り、2018年度より、不動産業者としての立場に一旦区切りをつけ、投資用不動産業界の健全化を目的とした「一般社団法人首都圏小規模住宅協会」を発足しました。不動産投資による被害や失敗を減らしていく取り組みを随時行ってまいります。

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