加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠
1,601 view
2019年1月22日(火)
団信加入と損害保険の注意点と、各種士業との付き合い方
本コラムでは、これまで不動産会社や金融機関の選び方・付き合い方について触れてきましたが、今回は保険会社・各種士業の選び方と付き合い方について解説したいと思います。
団信は金融機関ごとの「枠」を念頭に置いておく
ローンを組んで不動産投資を行う場合、多くが「団体信用生命保険」(以下、団信)に加入します。
これは不動産ローンの借主が死亡したり、高度障害になった場合、残債が免除されるという生命保険です。
遺族はローン支払いがなくなり、諸経費を差し引いた家賃がほとんど収益となるというものです。
遺産として多額の現金を残した場合、遺族はその現金を使い切ってしまうかもしれませんが、物件を残すのであれば、遺族に安定した家賃収入を残すことができるといえます。
団信保険料はローン金利に含まれていたり、ローン金利と別枠だとしても、性別・年齢にかかわらず低額で、通常の生命保険料に比べれば割安です。
団信を活用すれば、怪我や病気に備えての割安な生命保険(都民共済・勤め先の団体保険など)のみで十分となり、生命保険料の節約にもなります。
団信は通常、ローンを組む金融機関の手配で用意されます。
各種団体があり、それぞれで1億円までなど上限が設定されています。
そのためか、金額が大きいと金銭消費貸借契約が数本に分かれ、面倒になることもあります。
以前、S社から名古屋駅と博多駅の近くにいい土地が出たとの情報を得たので購入し、アパートを新築しました。融資は、外資系T銀行のノンリコース(不遡及型)ローンです。
名古屋駅近くの物件が総額6,000万円、博多駅近くの物件が総額5,000万円ほどで、スケジュールの関係で、博多駅近くの物件の契約が先になりました。
当然、ふたつとも団信が付くものと思っていたのですが、直前になってS社の担当者から、団信枠は総額で1億円までということで、今回は付けられないと言われました。
せめて、総額1億円だけでも付けられないかと打診したところ、金融機関の審査もやり直しになり、融資が通る保証もないし、時間もかかるとのこと。
やむをえず、団信なしで購入せざるを得ませんでした。
次回の物件購入のために、団信枠を取っておこうとも思ったものでした。
ところが、T銀行の不動産経営用ノンリコース(不遡及型)ローンは、その後すぐになくなってしまったのでした。
団信が付いていないと、遺族は不動産と同時に借入金(ローン残高)も相続することとなりますので、家賃のみでローンや諸経費を支払っても収益が十分にあるように、余裕を持たせた資金繰りが鉄則となってきます。
団信付きの他物件を組み合わせるとか、他の一般の生命保険も用意しておくなどの対策が重要となってくるかと思われます。
損害保険は水漏れがカバーされているかをチェック!さらに保険の期間は自分で把握しておこう
損害保険は、火災保険・地震保険や第三者損害賠償責任保険(落雪対策など)、事故保険(不自然死・自殺対策用など)があります。
私の場合、損害保険が必要となったケースは、ほとんどが水漏れ被害です。
通常は火災保険でカバーされるのですが、ある時すごい寒さで配管が凍結・爆裂し、水漏れが4件ほど多発したことがありました。
ほとんどは火災保険でカバーされたものの、1件だけ工事レポートに「配管の自然劣化によるもの」と書かれたことが独り歩きし、頑として、保険金が支払われないことがありました。
折しも、保険金の不払いが流行っていた頃でしたが、この損害保険会社は、ほとんど保険金を支払わないことで有名なようでした。
火災保険で適用となるのは、実質上、ほとんど水漏れのみなのに、これが適用とならないのでは何のための保険なのか疑問です。
後から聞いたのですが、しっかりした保険代理店で、きちんと工事レポート・保険金請求が行われていれば、通常は支払われるとのことで、保険代理店・損害保険会社選びの重要性を感じた経験でした。
不動産を購入する場合、不動産会社が損害保険代理店も兼ねており、同時に損害保険を締結する場合も多いものです。
以前、そのパターンで不動産物件を購入、同時に不動産会社が損害保険代理店となり、損害保険を付保していたのですが、やがてローンも終わる頃に水漏れが発生しました。
当該不動産会社に損害保険を調べてもらおうとしたところ、わからないとのこと。
仕方がないので自分で調べてみると、当該不動産会社が損害保険代理店で火災保険を付保していたが、保険期間(通常、ローン期間と同一)が過ぎていた上に更新されておらず、保険が付保されていないことが判明しました。
通常であれば、損害保険代理店・損害保険会社から、更新の案内があるのですが、不動産会社は、損害保険代理店を辞めており、また、オーナーの損害保険の状況は把握していないとのこと。
さらに、損害保険会社の方も、不景気で合併を繰り返し、わけがわからない状態でした。
こちらも32年以上大家業を行っており、所有する物件も108戸あって、いちいちフォローなどしていませんでした。
とはいえ、損害保険代理店・損害保険会社も頼りにならない以上、自分自身でも、ある程度、把握しておくことが重要です。
特に、ローン支払いが終わった頃には、金融機関もノーケアになりますので要注意です。
安かろう悪かろうで、水漏れがカバーされない損害保険もありますが、トラブルのほとんどは水漏れですので、水漏れがカバーされているかは、注意すべきポイントです。
金融機関お抱えの損害保険会社・司法書士事務所には注意が必要
以前、本コラムにて悪徳金融機関・不動産会社とのトラブルを紹介させていただきました。
ある金融機関で融資が承認されて「金銭消費貸借契約書」を締結しました。
ところが白紙解約期限が過ぎ、さらに融資実行・決済の1営業日前になって、特段の理由もなく融資をドタキャンされたのです。
当該金融機関は、私の知らないうちに、「手付金領収書」「重要事項説明書」「売買契約書」も偽造していました。
金銭消費貸借契約書締結時に当該金融機関は、お抱えの損害保険会社・司法書士事務所を同席させ、「損害保険契約書」・「所有権移転・抵当権設定委任契約書」も締結しました。
トラブル発生後、「融資承認とは言っていない」「金銭消費貸借契約書は、私が勝手に署名捺印しただけであって、銀行側は知らない」「仮に銀行側の担当者がそうしたとしても、担当者が勝手にやったことであって、銀行側は知らない」と主張しました(表見代理・使用者責任の原則からして、そんな主張は通りませんが)。
同席した損害保険代理店・司法書士事務所に証言してもらえないかと考えましたが、お抱えの損害保険代理店・司法書士事務所ですので、当該金融機関側に有利な主張しか期待できません。
金融機関お抱えの損害保険代理店・司法書士だと話が早く、事がスムーズにいくことは確かですが、本件のようにトラブルが起こった場合には、中立性は期待できません。
自分の信頼できる司法書士を起用しておく方が確実だといえるでしょう。
頼りになるはずの弁護士もあてにならず…
このトラブルは札幌の物件でしたので、札幌の知り合いに相談したところ、弁護士を紹介してもらえました。
ところが、紹介してもらった弁護士は、ある宅地建物取引(宅建)協会の顧問弁護士で、なんと当該トラブルの不動産会社は、その宅建協会の会員だったのです。
当初は、指導も込めて適切かと思いましたが、メインは当該金融機関であって、当該不動産会社はあまり責めずに、むしろ味方につけた方がいいとの主張でした。
結果的には、こちらの100%全面敗訴。
結局、弁護士費用はこちらが払って、当該不動産会社側の弁護士に委任したような気分になったものです。
客観性・中立性という意味で、弁護士の選定に問題があったのかもしれません。
当該不動産会社も、いわゆる三為業者・他人物売買・中間省略登記でした。
本来は物件の所有者との売買契約のはずでしたが、当該不動産会社の(非常勤)専務取締役を間に入れてほしいときました。
つまり、仲介手数料のみならず、売買差益も抜きたかったのでしょう。
さらには、売主が宅地建物取引(宅建)業者でなければ、瑕疵担保責任も、特約で排除できます。
そして、今回のようにトラブった場合、クーリングオフも適用できません。何より、売主として、違約金請求もできます。
この不動産会社も、思い起こせば、「重要事項説明」、「売買契約書」締結前の手付金受領、手付金の分割受領、「仲介契約書」不締結、仲介業者としての善管注意義務・信義誠実義務違反、こちらが再融資手続き進行中にもかかわらずの何の協議もないままの2営業日内での即時転売等、宅建業法違反・不誠実等のオンパレードでした。
結局、宅建協会、金融庁、弁護士、警察、裁判所等、何の役にも立たず、時間・手間暇・金の無駄に終わりました。
先方の配達証明付き内容証明郵便(この段階では、弁護士は起用せず)が来た段階で弁護士に相談し、訴訟をしかけてくるでしょうとのことでしたので、すぐに戦闘態勢に入り、弁護士名で配達証明付き内容証明郵便を出し返しました。
これがかえって相手を刺激し、訴訟を提議され事を荒立てたのかもしれません。
裁判期間は3年間にも渡り、結局、年利6%の支払金利だけでも1,000万円以上になりました。
裁判など、しょせんは茶番であり、結局儲かったのは、金融機関、当該不動産会社、司法書士事務所、弁護士だけで、私だけが馬鹿を見たわけです。
弁護士は、法律や判例には多少詳しいのかもしれませんが、必ずしも、不動産・金融に詳しいとも限りませんし、しょせんは他人事です。テレビドラマのような熱血弁護士が出てきて、「真実は一つ」「正義は勝つ」などは空想の産物であり、現実は単なる事務処理で、淡々と処理されるものです。
人に頼らず、最後は自分自身で何とかするしかないと、いい教訓になりました。
投資用不動産業界に関する情報が毎週届く!
不動産投資塾新聞社メールマガジン登録はこちら
著者紹介
加藤 隆加藤 隆
サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。