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加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠

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借金から数々のメリットが享受できる?借入を活用した資金調達

目次

今回は資金調達選定について説明したいと思います。不動産経営においては、物件選定と並び、資金調達の選定も重要なテーマです。

借金は悪?

私自身、ファイナンシャル・プランナー(以下FP)でもありますが、FPの中には、「借金は悪だ」「なるべく自己資金を入れよう」「お金ができたら繰り上げ返済しよう」という意見を持つ方も多いです。果たして、本当にそうなのでしょうか?

確かに借金は、包丁やハサミと同じく、使い方を間違えると怪我をすることもあります。例えば「消費」や「浪費」のための借金で、返すことができるあてもないのに高金利で借りるといった場合ですね。

ちなみに、不動産では「投資」=不動産経営用物件(第三者活用)、「消費」=自己居住用物件(自己活用)、「浪費」=リゾート・別荘用物件(不活用)と置き換えられると私は考えています。

一方、不動産経営においては、現金購入だけではなく、あえて借入金を活用することもあります。先ほどの包丁やハサミも、うまく使えば大変便利なものなのです。

その理由は、金融機関が自分と物件を第三者的な目で客観的にチェックしてくれること、高額な物件であっても、現預金が貯まるのを待つことなく適切な時期に購入できること、などが挙げられます。

さらに、低金利で資金調達して高利回りで運用することで、イールドギャップ(投資利回りと長期金利との差)や梃の原理を活用できること、団体信用生命保険による保険機能を享受できるといったメリットもあるでしょう。

加えて、節税メリット(支払金利の経費計上、相続時の自己資本圧縮など)や、インフレ時には借入金負担減のメリットを享受できること、といった理由も考えられます。

かたや、もし借入金を活用せず、現預金のみを活用すれば、手元の現預金が薄くなってしまいます。

不動産経営においては、修理費や家賃滞納、空室(敷金返却、リフォーム、家賃値下げ、広告費などを含む)など、不意の出費があるものです。特に一棟物(アパート・マンション・戸建て)においては、区分所有マンションとは異なり、管理組合や修繕積立金制度がありません。

そのため、壁面塗装、天井塗装、配管などにおいて、思わぬ出費の可能性があります。そういった不意の出来事も考慮し、余裕を持たせた資金繰りにしておかないと、行き詰まることがありえるのです。

また、人生において、災害や怪我、病気など、どんなことが起こるかわかりません。不動産などの固定資産ばかりではなく、流動資産(現預金・外国為替・貴金属・株など)も持っておいたほうが無難だと思います。

さらに、金融機関は、お金を持っていない人には貸したがらず、お金を持っている人に貸したがる性質があります。そういった意味でも、現預金を手元に持っていた方がいいのです。

不動産経営における借入金は、できるだけ低金利で借りることに加え、なるべく多めの金額で、長期間に渡って借りるのがコツだと思います。どうしても心配であれば、繰上返済して借入金額を減らしたり、借入期間を短くすることは可能です。

しかし逆に、借入金額を増やしたり、借入期間を長くしたりするのは難しいのです。そのため、「多めに長期間借りておく」のがよいと思います。

金融機関は、一行にまとめたほうがいい?

FPはよく「金融機関は一行にまとめましょう」「そして借入しやすくしましょう」と言います。しかし、金融情勢はコロコロと変わります。そんなことをしても、その金融機関、その支店、もしくは担当者から借入ができる保証はありません。

むしろ、いろんな金融機関とお付き合いしておいたほうが得策かと思います。

いい意味でライバル心を持たせることで、融資条件(金額・金利・期間など)を競い合ってもらう効果もあります。新規融資だけでなく、金利引き下げや借換もスムーズに進みやすくなりますし、リスク分散にもなります。

私の場合は、不動産経営用のローン以外に、住宅ローンや教育ローンも活用していますが、国や地方公共団体をはじめ、政府系、都銀、地銀、外資系、生命保険会社、メーカー系、ノンバンク、カード会社など、さまざまな機関でお世話になっています。

一般的には、前者ほど金利などの融資条件は有利ですが、その反面、融資を受けるハードルは高い傾向にあるようですし、時間や手間暇もかかるようです。

それぞれに一長一短がありますが、融資を受けるにあたっては、時間や手間暇、融資条件(金額・金利・期間、共同担保・連帯保証など)を考慮し、総合的に判断すべきだと思います。

なお、借入による資金調達の仕方にもいろんなパターンがあり、それぞれ一長一短ありますので、以下にその特長を見ていきたいと思います。

固定金利VS変動金利

固定金利は、仮にインフレになって金利上昇となった場合においても金利が一定である、といったメリットがあります。

一方、変動金利は、一般的に固定金利より金利が低く、元本返済が進みやすいことと、繰上返済時に違約金が発生しないものが多い、といったメリットがあります。

総じていえば、昨今のように、不景気かつ低金利の時代にあって、金利上昇のリスクが高いと思われる時期においては、できれば固定金利がよいでしょう。

もし固定金利が選べない場合には、なるべく長期間固定金利(5年間固定や10年間固定など)を選択したほうが無難かもしれません。

逆に、1990年以前のバブル期のように、好景気かつ高金利で、今後の金利が低下が予想される時代では、比較的低金利である変動金利を選び、金利低下のメリットも享受して、元本をバンバン減らしていくのがいいかなと思います。

自己居住用の住宅ローンの場合、現状では「固定金利・低金利」のものが多いですが、不動産経営用ローンの場合には比較的、「変動金利・高金利」のものが多いようです。

元利均等払いVS元金均等払い

元利均等払いの場合には、毎月の支払いローン総額(金利・元本返済)が一定かつ少なく返済計画が立てやすいこと、インフレメリットを享受しやすいこと、といったメリットがあります。

一方、元金均等返済の場合には、支払総額が少ない、といったメリットがあります。総じて言えば、支払ローン総額が少な目かつ一定で資金契約が立てやすいため、元利均等返済のほうがいいかと思います。

団体信用生命保険有りのパッケージ型ローンVS団体信用生命保険なしの事業用プロパー型ローン

団体信用生命保険は、通常、自己居住用住宅ローンや不動産経営用ローン(パッケージローン)についているものです。一般の生命保険に比べて割安な保険料で保険効果を享受できることや、審査期間が短い、といったメリットがあります。

一方、団体信用生命保険のついていないものもありますが、これは不動産経営用ローンなどの事業用プロパーローンに多いです。

団体信用生命保険つきだと高齢のために借入期間が短くなってしまう場合や、借入総額が個人借入枠を超えてしまう場合でも借りやすい、といったメリットがあります。

総じていえば、年齢が若くて借入総額が少ない場合、または急いでいる場合には、団体信用生命保険つきがよく、高齢で借入総額が多い場合、もしくは急がない場合には、団体信用生命保険なしの事業用プロパーローンがいいかと思います。

ただし、団体信用生命保険なしの場合、遺族には物件のみならず借入金も相続されるため、充分なキャッシュフローを維持しておくか、やはり団体信用生命保険ありの物件(借入金がなくなるため、家賃がほとんど遺族に残る)を選択するか、どうしても心配であれば、普通の生命保険も活用するなどの対策があれば安心です。

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著者紹介

加藤 隆
加藤 隆

サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。

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