加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠
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2018年11月13日(火)
高齢者の借主はリスクが高い⁉今後の超高齢社会と不動産投資について
不動産経営の賃貸において、高齢者の入居は、収入面の不安や孤独死のリスクなどから大家に嫌がられる傾向にあります。しかし賃貸物件は供給過剰の状態。高齢化社会の中にあって、そうとばかりも言っていられません。今回は高齢者の方に入居していただくことについて考えてみたいと思います。
あえて高齢者を受け入れるという選択
少し前までは、楽器をひく人やペットを飼う人、小さな子供がいる人、外国人等は、借主として敬遠されていました。最近では敢えて、「楽器対応マンション」「ペット対応マンション」「育児対応マンション」「外国人対応マンション」とすることで、成功した事例が増えてきました。同様に、敢えて高齢者をターゲットにするという発想もありかなと思います。
私も楽器対応マンションを所有しています。ペットや子供、外国人、生活保護者といった方の入居者制限はしていません。高齢者の入居者制限もしていないので、先日、80歳超で身寄りのない方からの問い合わせもありました。
高齢者の家賃未払いのリスクと、その回避策
ほとんどの高齢者は仕事をしておらず生活保護者である場合も多いです。とはいえ生活保護者であっても、毎月一定の収入があり、家賃支払いが滞りなくおこなえるのであれば問題ありません。
滞納することで退去になってしまえば、信用問題から次の新居を見つけるのにも苦労します。その点は入居者もわかっているようで、収入が少ない人であっても家賃支払いはしっかりと対応してくれるものです。
また、生活保護は居住費を手厚く保障しています。地方自治体によっては、直接入金できるシステムもあります。
それでもやはり家賃未払いの可能性はなくなりませんので、保障制度を利用してリスク回避に努めましょう。代表的な制度としては、連帯保証人制度があります。
多くの場合では、本人に支払いの能力がなかったとしても、連帯保証人によって解決することができます。しかし昨今、日本では「連帯保証は過酷な制度だ」という声があがり、自粛される傾向にあるようです。その代わりに、家賃保証(サブリース)制度が普及してきています。
家賃保証契約では多くの場合、保証会社が滞納家賃を3ケ月間程度保証してくれます。
入居者の安否の確認には対策が必要
身寄りがない高齢者の方は、どうしても孤立してしまいますが、昨今ではそういった高齢者のための「見守りシステム」が開発されています。
たとえば、一定時間電化製品を使わない場合や、生体反応が検知されない場合に、警備センターにアラーム連絡が行くといったサービスがあります。入居中の高齢者の異変にいち早く気づくために有効な手段でしょう。
とはいえ見守りシステムも完璧ではありませんし、導入には費用もかかります。大家としてできる「アナログ見守り」を意識して行うことが重要かと思います。外観からだけでも、ある程度の情報はわかるものです。
電気メーター、ガスメーター、新聞・郵便物、洗濯物等、確認できることは色々とあります。私も、地方出張や旅行の際に、チェックをしに訪れています(郵便物がたまっていたので、管理会社に確認してもらったところ、病気で入院されていたということもありました)。
因みにその場合、旅費(交通費・宿泊費等)は経費計上もできます。建物・賃貸管理会社に、清掃・各種定期点検時などに、訪ねてもらうのも効果的です。
高齢者向けシェアハウスを建築してしまう手もある
高齢者にターゲットを絞った「シェアハウス」も実際にあり、そのような物件を建築してしまうのもいいかなと思います。高齢者同士の繋がりで、相互に見守りができるからです。
物件の特徴としては、段差があまりないこと(全くないと逆に足腰が弱くなるようですが)、廊下は車椅子でも通れるように狭過ぎないこと(逆に廊下は広過ぎると転倒した際、怪我をし易くなるようです)、廊下・階段・トイレ・風呂等に手すりがあることというように、高齢者に優しいバリアフリー仕組みを盛り込みます。
最初から高齢者向けに設計していることは重要だと思います。
もし孤独死が起こってしまったら
もしも、孤独死が起こってしまった場合、大家としての対応は以下のようになります。
①呼び鈴を押しても出ない、電話にも出ない等、音信不通で不自然な場合には、その旨を話し、警察に立ち会ってもらった上で(少なくとも2人以上で)、開錠し、立ち入る。
②御遺体が発見された場合には、不自然死・病死・事故・自殺・事件(他殺)等、様々な原因が考えられるので、消防・救急、警察による現場検証、医者による「死亡診断書」記載が必要。
③御家族に連絡し、御遺体の引き取り、御葬式をおこなっていただく。連帯保証人・相続人・家族・身寄りがいない場合には、役場に連絡すれば、御遺体の引き取りと御葬式までおこなってもらえる。
④残置物の撤去を御家族の了承のもとおこなう。連帯保証人・相続人・家族・身寄りがいない場合には、6ケ月間程度保管し、法的手続きを経て処分をおこなう。
⑤敷金・家賃・リフォーム費用・損害賠償等の精算をおこなう。(連帯保証人・相続人・家族・身寄り・緊急連絡先等がいない場合には、困難)
⑥新規入居者募集をおこなう。
孤独死で発見が遅れ、腐乱化、白骨化、自殺、他殺等の場合には、賃貸・売買時に「心理的瑕疵物件」として、重要事項説明義務が発生し、賃貸・売却価格は半額程度になってしまいます。入居者が1回転もしくは2年間経過するといった条件で、告知義務が解除されるという判例もあります。入居実績を作ることが重要なので、半額程度の低家賃でも、入ってもらうことが重要です。その後、徐々に、家賃を戻していきます。
連帯保証人・相続人・家族・身寄りの方への連絡に関しては、まず優先させることは、御遺体の引き取りと御葬式、そして残置物の撤去・保管をお願いすることです。
精算(敷金・家賃・リフォーム費用・損害賠償等)は、後回しでいいでしょう。優先すべきことが確約できた後で、ゆっくり話をしましょう。
高齢者の方を借主にすると、どうしても事故物件になる可能性は高まってしまいますが、慌てることはありません。しっかりと手続きを踏んで、管理会社や行政なども頼りながら対応すれば、元の通りにおさまります。
高齢者向けの物件というのは、トラブルも想定しやすいので、収益を計算しやすくなって案外いいものかもしれません。
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著者紹介
加藤 隆加藤 隆
サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。