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いらない不動産を処分する方法はあるのか?――売るに売れない「負動産地獄」の悲惨な実態

目次

「空き家問題」が叫ばれて久しく、依然として大きな社会問題となっています。

当事者であるオーナーからすれば、「さっさと売って処分したいのにちっとも売れない……」というのが現実。

今回の記事では、そんな「負動産」を抱えて悩むオーナーたちの事例や、通常の売却以外で物件を処分する方法を解説します。

負動産を放置すると、数かずのリスクが発生!

売りたくても売れずにコストばかりがかさむ物件――業界では、このような不動産を「負動産」と呼びます。

負動産は、持っているだけで所有者にさまざまなリスクが降りかかる「貧乏神」なのです。

使っていない土地なのに、固定資産税がかかりつづける!?

固定資産税は、土地や建物といった不動産に課される税金で、物件所有者には納税の義務が発生します。

とくに、田舎の土地や建物などを相続した人のなかには、収益を生まないのに高額な固定資産税を毎年負担しつづけなければならないケースが散見されます。

ただし、田舎の不動産を所有している人にとっては、こうした土地が農耕地であることと、「特定空き家」であることが、大きなデメリットとなります。

実は、「農耕地」の場合、農地・耕作地としての利用がなければ、固定資産税の税率が上げられてしまうのです。

一方、国から「特定空き家」に指定された場合、たとえ都市部の不動産であっても固定資産税の軽減措置の対象から外れ、結果として税額が本来の6倍になるケースもあるのです。

管理の手間が増えるだけで、価値は下がりつづけるばかり……

不動産は、時間の経過とともに劣化が進み、必然的に価値が下がりつづけるものです。

さらに、空き家となって手入れを怠れば、害虫や害獣による被害を受けたりホコリがたまったりして、傷みは加速する一方。

自治体によっては、所有者に定期的な管理を義務付ける条例を定めている場合もあり、使う予定がない物件でも管理する手間だけが確実に増大します。

さらに、「特定空き家」に指定されてしまえば、物件処分の行政代執行が実施され、オーナーに処分費用を全額請求する恐れもあるのです。

空き家は、近隣トラブル発生の火種!

負動産は、たとえだれも住んでいなくても、近隣トラブルの原因となります。

空き家を放置すれば、雑草や害虫、動物問題など、所有者が管理しないでさまざまな問題が発生。

「雑草や庭木が伸びて景観が悪い」とクレームを受けるケースもあれば、倒壊して実損が出てしまう恐ろしいケースも。

ほかにも、害虫発生による近隣への健康被害、野良犬や野良猫などの動物が住みつくことによる異臭・異音問題の発生など、トラブルの種は至るところに落ちています。

いずれも近隣から訴えられれば、オーナーに損害賠償責任が発生することもあります。

「どうしても売れない!」――負動産地獄に苦しむ所有者たちの実態

ここで、処分したくてもなかなか買主が現れない「負動産地獄」に陥る人たちの実態を紹介しましょう。

バブル末期に購入した別荘地が負動産へ変貌

静岡県の伊豆半島の丘陵地にある、大規模な別荘地での話です。

バブル期には人気を博したエリアで、当時40代後半だったAさんは、1300万円もの大金を支払ってこの地の別荘を購入。

東京でサラリーマンとして働きながら余暇はこの別荘で過ごすという、優雅な生活を楽しんでいました。

ところが、バブル崩壊の煽りを受けて給料が大幅カットされ、Aさんの人生設計は大きく狂いはじめます。

別荘で気楽に過ごす余裕がなくなり、高級別荘は空き家と化してしまいました。

現在では、使いもしない別荘に、管理費と固定資産税を合わせて毎年5万円以上を支払い続けています。

70代の高齢者となったAさんは、子どもへの贈与も検討しましたが、一様に「いらない」との返答。

泣く泣くたった100万円で売りに出しましたが、買いたい人はいっこうに現れません。

ようやく購入希望者が見つかりましたが、売却金額は10万円。なんと、当初の不動産価格の13分の1の金額です。

仲介手数料や広告費の支払いもあり、最終的には赤字を生んでしまいました。

負動産を処分する方法は?

Aさんのように負動産を抱えて悩む人は、決して珍しくありませんが、放置しつづけて損をするぐらいであれば、なんらかの形で処分したほうがまだマシといえます。

実は、通常の不動産売却以外にも、不要な土地を手放す方法があるのです。

①不動産会社に入ってもらって売却する!

仲介会社に間に入ってもらって個人の買い主を探す、通常の売却が難しい物件であっても、業界用語で「物上げ業者」と呼ばれる不動産買取会社であれば買ってくれる場合があります。

一般個人にとってはまったく価値のない不動産だとしても、リノベーションなどの物件再生ノウハウを持つ業者であれば、利用価値がある物件かもしれません。

業者への売却は、個人への売却に比べて相場の3〜5割程度は安く買い叩かれますが、売却できないまま維持費を垂れ流すのに比べれば、それでもメリット大だといえます。

②思い切って無償で寄付する!

どんなに売値を下げても買い手がなかなかつかないのであれば、不動産を寄付する手段もあります。

寄付にはなんらかの税金が発生する可能性がありますが、維持費を支払いつづけるぐらいならば、多少の税金がかかっても無償で寄付したほうが、最終的にはダメージは少ないかもしれません。

寄付する先としては、法人、個人、地方自治体の3つが考えられます。

・法人の場合
一般企業や公益法人といった法人を相手するのも、ひとつの手。

企業の場合は、「福利厚生のための保養地を拡充したい」などの理由で土地や建物を探しているケースがあります。

ただし、価値のない土地であれば受け取ってはくれませんし、譲渡所得税が発生する可能性もあるので、法人への寄付も難易度は高いと考えたほうがよいでしょう。

一方、学校法人やNPO法人などの公益法人の場合、譲渡所得税が発生しません。

ただし、手続きがかなり面倒なので、司法書士など法律の専門家に依頼するための費用を想定しておくことをおすすめします。

・個人の場合
個人へ寄付するという選択肢もありますが、障壁として、受け取る側に贈与税の負担が発生することがあります。

隣地の住民が自宅の拡張を検討しているなどのアテがあるならば、検討の余地があるかもしれません。

ちなみに、個人への寄付の場合の贈与税は、年間110万円までの特別控除が適用される可能性もあります。

・国や地方自治体の場合
上記の方法でも引き取り手が見つからない場合は、国や地方自治体へ寄付する手段があります。

ただし、固定資産税は自治体の収入源の重要なひとつということもあり、引き取り手側の自治体がその不動産を活用する手段を想定できなければ、無償で引き取ってくれる可能性は低いです。

相談じたいは無料なので、あまり期待できないかもしれませんが、まずは確認してみましょう。

ちなみに、長期間放置された土地や建物が国の管轄になるケースがありますが、これは所有者が特定されない場合の特例ですので、ご注意ください。

寄付する先として3つの選択肢を挙げましたが、寄付というのは、あくまでアテがある場合の手段です。

かなり難易度が高く、贈与税やみなし譲渡所得税などの課税が発生するうえ、寄付した年度はオーナーが確定申告を義務付けられる点は、ちゃんと覚えておきましょう。

③相続放棄で管理責任から免れる!

負動産を相続することになった場合、相続放棄すれば一切の責任を免れることができます。

要件として、相続発生時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てしなければいけません。

ただ注意したいのは、相続放棄するためには、物件が「古家付きの土地」でなければならない点。

土地のみの相続で放棄が認められるケースは、かなりレアです。

なお、次の相続人が決まるまでは、相続放棄した元の所有者が負動産を管理しつづけなければなりませんが、弁護士や司法書士に相続財産の管理人を委託することも可能です。

不要な土地の活用方法を探ってみると?

負動産の土地活用の方法を探るのも、ひとつの手段です。

田舎の活用しづらい場所であれば、太陽光発電システムを導入する人もいます。

ただし、太陽光は投資費用を回収するのに時間がかかるうえ、赤字で終わることも想定しておかなければいけません。

ほか、賃貸アパートやマンションの経営、サービス付き高齢者向け住宅として活用する方法も考えられます。

これらの活用法は基本的に、自己資金をあるていど用意しないと赤字が出たさいに資金ショートしてしまう点には、注意が必要です。

負動産となってしまった物件を収益化するのは、かなりハードルが高いということはしっかり認識しておきましょう。

売れない負動産は、とにかく早く手放せ!

以上のように、もはや利用価値のなくなった土地や建物は、所有しつづけてもなにもよいことはありません。

処分するにもかなりの苦労が予想され、放置して固定資産税や管理費を支払いつづけるぐらいならば、多少の赤字が出ても早々に処分したほうがよいかもしれません。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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