不動産投資の最新動向
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2021年7月22日(木)
投げ売りされる別荘が続出! 「お金を払ってでも売りたい……」ーーその理由とは?
1990年前後のバブル期には、別荘やリゾートマンションを購入する人が相次ぎました。
いわば「憧れの象徴」であった別荘が、最近はタダ同然で投げ売りされているという実情を、ご存じでしょうか?
なかには、諸経費を売主が負担するという破格の条件で売り出されているケースもあるのです。
今回の記事では、なぜ憧れの別荘を売却したい人が増えているのか、所有者が諸費用を負担してまで手放したい理由を、ケーススタディから読み解きます。
なぜ損をしてまで別荘を手放したいのか
近年、もともとは数千万円もの大金で購入した豪華な別荘が、10万〜100万円という破格の金額で「投げ売り」されるケースが急増しています
現に、「マイソク」という不動産広告のチラシには、「販売価格1円!」や「100円!」といった信じられない価格記載も。
なぜ、憧れの別荘がこのようなありえない値段で取り引きされるようになったのでしょうか?
景気低迷とともに衰退した別荘需要
昭和のバブル景気の時代には、リゾート開発がさかんに行なわれていました。
サラリーマンも含め、憧れの別荘やリゾート物件を購入してセカンドハウスとして利用する人が多かったのです。
しかし、バブル崩壊とそれ以降の景気低迷で、別荘は一部の高額所得者しか所有できないものとなりました。
別荘を持っていても、不景気の影響で、余暇にリゾート地に遊びに出かける余裕すらなくなったという人が続出したのです。
損をしてでも売却したい人が続出!? あまりにきつい税負担
軽井沢や熱海、伊豆高原、那須高原といった人気の避暑地に立つ別荘は、ほとんどが老朽化して資産価値が大幅に低下しています。
それにもかかわらず、実は別荘は、税負担がとにかく重いのです。
別荘の所有には、年間維持費の他に、最低限でも固定資産税、都市計画税、住民税がかかります。
税金がかかるのはマンションも同様ですが、別荘は土地と建物が広いため、税額が異常に高くなるのです。
子どもに相続しようとしても、かなりの相続税負担が生じるので、相続を拒否されて家族の「お荷物」扱いされているケースも少なくありません。
別荘の固定資産税、いったいいくら?
別荘の場合、固定資産税は建物部分と土地部分それぞれにかかります。
固定資産税の計算方法は次のとおりです。
固定資産税=固定資産税評価額×標準税率1.4%
建物は経年劣化していくため、築年数に応じて建物評価額が下がっていきます。
そのため、老朽化して築年数が20年を超えているような別荘の固定資産税は、5万円程度しかありません。
ただし、土地は同じようにはいかず、土地部分の固定資産税は、「地価公示価格(公示地価)」「路線価(相続税評価額)」「基準地価」のいずれかを基準として、各市町村役場の担当者が個別に算定しています。
別荘が地価の低い田舎であればさほどの税負担とはなりませんが、地価の高い有名別荘地の場合は税負担が年間40万円を超えることも珍しくないのです。
これだけの高額な税金を負担しつづけるとなれば、手放したいと思うのも無理はありません。
都市計画税や住民税、さらに管理費と維持費も!
高額な固定資産税にくわえて、別荘の建物部分と土地部分それぞれに都市計画税が発生し、さらに住民税の支払いもあります。
固定資産税等の負担だけでもバカになりませんが、別荘は、住民票がないとはいえ、自治体への住民税支払いを避けることはできません。
ただし住民票のない別荘の場合、住民税は均等割が採用されて安くなります。
この均等割のおかげで、税額じたいはたいした金額ではありませんが、都道府県税や市区町村税として年間数千円程度の負担が生じることは、しっかり覚えておきましょう。
そして、忘れてはならないのが管理費。
別荘地に建てられた別荘は、各自治体の開発許可を受けて建てられているため、生活インフラの維持管理のために別荘主に管理費を請求する条件が課されています。
管理費の金額は、「建物や土地の大きさ」「別荘の所在地」「別荘が所在する地域の管理会社」など、それぞれの条件によって異なります。
有名別荘地の場合は、この管理費が60万円もの金額になるケースもあります。
別荘を売りたくても売れない!
購入当初は夢であふれていた別荘が、ただのお荷物になっている実情は全国的に問題となっていますが、地域ごとのルールが異なるため、自治体として対応策が立てづらいという実情があります。
実際に別荘を購入したものの、手放すことになったケースを紹介しましょう。
ケース① マイナス価格で売り出しても買い手が見つからなかった……残念すぎる伊豆の別荘
別荘地のなかでも、観光地として人気の高い伊豆。
この伊豆にあり、相模湾が一望できる別荘は、一見だれもが欲しがりそうな物件でありながら、諸経費を差し引くとマイナスになる価格で売り出されていました。
販売価格は、なんと1円。半露天の温泉付きというのですから、ありえない値段のように思えます。
ハウスクリーニングも実施済みで、リフォームする場合は50万〜80万円は売主が負担してくれるという破格ぶり。
売りに出してからテレビに取り上げられたこともあり、問い合わせはゆうに500件を超えたといいます。
しかし、それでも結局売れませんでした。
実はこの物件、実際に購入するには、水道維持協力費で約43万円がかかり、登記費用といった初期費用なども発生するので、100万円ほどが必要になるのです。
くわえて、浄化槽を個別で作る必要があり、それにも90万円はかかります。
さらに、駐車場がない物件だったので、駐車場をつくるにも約100万円が必要。
つまり、購入した人は合計300万円の費用を負担しなければいけない物件だったのです。
立地は駅から徒歩圏内ではなく、険しい山道を越えた先にあり、自動車は必須。
見た目とは裏腹に、総合的に判断すると、「憧れの別荘」とはとてもいえない物件だったわけです。
ケース②:相続を子どもに拒否されたお荷物別荘
Bさん夫婦は、別荘の人気が高かった時代に「相続すれば子どもの資産となる!」という理由で別荘の購入を決意。
ご主人は、晩年に奥さんに先立たれてから、余暇をこの別荘で暮らしていました。
歳をとったBさんは、そろそろ財産の処分を検討しなければならないと考えはじめ、相続について子どもたちに相談をしましたが、どの子どももこの別荘を欲しがりません。
子どもたちは全員が都心でバリバリ働いていて、「別荘で過ごす時間はない」という答えが返ってきました。
残された手段は売却のみと、Bさんは、不動産会社に売却を相談しました。
すると担当者からは、「不便な場所なので買い手もつきにくいため、少しでも早く売却したほうがいいですが、売れる保証はありません」という返事。
結局、別荘を売りに出しても希望者がつかず、子どもにも譲渡できないまま、Bさんはいまでも途方に暮れています。
100円均一の空き家マッチングサイトの登場
そもそもが、不動産を10円や1円などの破格値で売却しようとしても、仲介手数料がほとんど得られないという事情から、仲介業者はなかなか取り扱ってくれません。
そこで、登場したのが、100円均一の空き家マッチングサイトです。
この100均のマッチングサイトは、販売リスクのある物件ばかりを均一価格で紹介。
別荘物件も多く、「とにかく別荘を手放したい!」と痛切な悩みを抱えるオーナーが多いことを感じさせます。
「タダ同然の別荘」を所有する価値は皆無
近年は、コロナ禍でもソロキャンプなどのアウトドアがブームではありますが、人気別荘地ではテントを張ることやバーベキューをすることが禁止されている場合も珍しくありません。
こうした背景からも別荘地の資産価値は下がる一方で、今後も状況の改善は見込めないでしょう。
別荘オーナーにとっては、損をしてでも早く売却したほうが賢い選択だといえます。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。