不動産投資の最新動向
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2021年1月31日(日)
不動産のクーリングオフにまつわるトラブルと解決法
「クーリングオフ」とは、商品やサービスを購入する契約を、一定期間は無条件で解約できるという法制度です。
強引な訪問販売や電話勧誘に押し切られて契約してしまった人や、営業トークに丸め込まれて不利な契約をうっかり結んでしまった人など、一定の条件に当てはまれば、誰でもクーリングオフを利用することができます。
実は、土地や住宅などの不動産売買取引においても、クーリングオフは適用されるのです。
本制度の活用方法から具体的な事例に至るまで、不動産業界のクーリングオフについて解説します。
不動産取引にクーリングオフは適用されるのか?
一般的な商取引と同様に、不動産取引においても、クーリングオフの制度を適用して契約を解除することができます。
悪質な不動産会社から購入者を守るための制度であり、宅地建物取引業法に基づいて定められています。
ただし、不動産取引においてクーリングオフが適用されるには、次の要件を満たさなければなりません。
①売主が宅建業者、買主が一般消費者であること
クーリングオフが適用されるには、不動産売買における売主側が宅地建物取引業者(以下、宅建業者)であることが必須条件です。
個人から直接不動産を買ったり、宅建業者ではない会社から不動産を買ったりした場合、クーリングオフは使えません。
一方で買主の側は、どんな人や法人であってもクーリングオフ適用の対象になります。
②契約場所が業者の事務所等ではないこと
契約場所が宅建業者の事務所や関連施設以外であれば、クーリングオフ適用が認められます。たとえば、喫茶店やファミリーレストラン、料亭など、宅建業者の事務所と関係のない場所です。
注意点として、買主側が自ら自宅や勤務先に宅建業者を呼んで契約をした場合は、適用対象外となります。
③クーリングオフの説明後、8日以内の手続きであること
クーリングオフは、契約時に業者から書面によって説明を受ける必要があります。書面による説明を受けてから8日間以内に手続きをすれば、契約の解除が可能です。
書類を8日間以内に発送しなければなりませんが、業者への書類到着は8日以上経過しても、問題ありません。
もしも業者が書面による説明を怠った場合は、物件の決済から引き渡しまでの期間は、クーリングオフが可能です。
④代金支払いと物件引き渡しのどちらかが済んでいないこと
物件の引き渡しを受けているものの代金を支払っていない場合と、逆に代金を支払ったが物件の引き渡しを受けていない場合は、クーリングオフが適用されます。
不動産購入の契約を結んだものの少しでも迷いがある場合は、業者の言いなりになって支払いと物件引き渡しをすぐに済ませてしまう前に、いま一度立ち止まって考え直しましょう。
クーリングオフの手続きは書面で!
クーリングオフ制度を受けるには、書面の送付による通知だけで手続きできます。この場合の書面とは、手紙、ハガキ、内容証明郵便、ファックスなどです。
8日以内に手続きしなければなりませんので、それを証明する意味においても、書面提出は重要なポイントとなります。
もしも書面によるクーリングオフが受理されれば、支払い済みの仲介手数料や手付金も含め、全額を返還してもらうことができます。
実際にクーリングオフできた事例から
ここで、実際に不動産投資塾に相談があった事例を紹介しましょう。
突然投資用マンションの勧誘電話を受け、仕方なく契約締結したが……
Aさんのもとにかかった1本の電話。それは、見知らぬ宅建業者の営業マンでした。「投資用マンションを買わないか」「格安物件を紹介するから、自宅にうかがいたい」と猛プッシュされ、あまりのしつこさにAさんは承諾しました。
営業マンによると、紹介する物件は駅からのアクセスがよく、都心で立地もよいため、今後も賃料が下がる心配はないとのこと。賃料相場や物件価格が上昇すると見込まれるエリアにあるため、将来的にも確実かつ安定的な収入が得られるといいます。
「将来の年金不安の解決策になります」「この場で契約を決めてくれれば大幅な値下げをします」と熱心に売り込む営業マンの言葉に納得したAさんは、その場で契約を締結。
売買価格の1割の手付金を支払ってしまいましたが、2日後に冷静に再検討すると、現在の収入では契約した投資用マンションの残金支払いが厳しいことに気づきました。
悩んだ挙句、Aさんは、契約時に「クーリングオフ」なる制度について営業マンから告知と説明を受けたことを、思い出したのです。
クーリングオフで契約解除し、手付金も返還請求可能
Aさんは契約して2日後に「やめておけばよかった」と気づいたわけですが、契約から8日以内にクーリングオフに関する書面を送れば、問題なく契約を解除することができます。
そのほかのクーリングオフの適用条件として、①営業マンが宅建業者で、Aさんは一般消費者である、②自宅で契約に至った経緯についても、Aさんから自発的に家に招いたわけではないこと、③契約時にクーリングオフの説明を受けていることの3つの状況も、適用条件に当てはまります。
結果、Aさんはクーリングオフによって売買契約を解除し、手付金の返還も請求することができたのです。
不動産業者の脅し文句に要注意
悪質な業者の場合、クーリングオフされたくないがために、以下のような脅し文句を使うケースもあります。
「クーリングオフしないことに同意してください」
「クーリングオフしたら、損害賠償請求します」
「クーリングオフした場合は、違約金を支払っていただきます」
このような言葉は宅建業法違反となり、契約は完全に無効となります。
宅建業者が上記のような脅し文句を言った場合、行政処分の措置を受けることになります。もし脅し文句の録音などの証拠が残っていなくても、宅建業法は悪質な業者から消費者を保護するために存在する意味合いが強い法律なので、経緯をきちんと説明できれば契約の取り消しが認められる可能性は高いでしょう。
もちろん、録音などの動かぬ証拠があればより確実です。
大きな取引だからこそ対策はしっかりと
不動産業界には急いで強引に契約をまとめようとする営業マンが多く、購入額が大きいのにもかかわらず物件購入の判断は即決が求められがちです。
しかし、契約を結んだからもう手遅れだと泣き寝入りせずとも、後からクーリングオフの権利を行使してキャンセルできる可能性があります。
身を守るためにクーリングオフの仕組みについて、しっかりと理解しておきましょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。