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【分譲マンションの建て替え問題と対応策を徹底解説】

目次

長年分譲マンションに住んでいると心配になるのが、いつ建て替えをしなければならないか、ということでしょう。鉄筋や鉄骨コンクリートでできたマンションには、寿命の心配はないのでしょうか。

土地代の負担もなく居心地のいい、自分の資産となるマンション。いざ建て替えが必要になったときや大規模修繕が必要になったときに、多額の費用がかかるとわかったら……60歳を過ぎた高齢者の方や住宅ローンが残っている方は、特に不安が募ることでしょう。マンションの建て替えで知っておくべき日本の現状やオーナーとしての心構え、また住人が負担する費用や売却のポイントを見ていきましょう。

実はマンションの建て替え例が少ない日本

日本のマンションの建て替えは、そのハードルの高さもあり、かなり実例が少ないのが実態です。国土交通省の「マンション建て替えの実施状況(令和2年4月1日時点」によると、建て替え工事が完了済みのマンションはわずか254物件しかありません。築30年、40年、50年以上の分譲マンションが計213.5万戸(令和元年末時点)あることを考えると、非常に少ないです。1棟あたり50戸だと仮定しても、約0.7%の数値です。

マンションの建て替えが少ない要因

建物の築年数が経過すれば老朽化が進み、建て替えするのは自然なことです。国土交通省では、築60年を建て替え基準に設定しています。にもかかわらず、古いマンションが増加しても建て替えが少ないのには、以下の理由が考えられます。

建て替えの費用を住民が負担しなければならない
マンションは、購入したら当然、居住者の資産となります。つまり、建て替えが必要になったら居住者がその費用を負担しなければならないのです。分譲マンションを建て替える際にかかる費用の目安は、一戸につきだいたい1,000万〜1,800万円と言われます。

費用の内訳としては、解体費用・建築費用・設計費用・事務経費・専門家に支払う調査費・借入金利息などがあります。解体費用と建築費用は、保有しているエリアの面積で負担額が異なります。現実的に考えて、約2,000万円もの費用を用意するのは難しい人もいるでしょう。これだけの予算が必要であれば、売却も一つの選択肢となり得ます。

建て替えの流れが非常に複雑
建て替えが決定するまでには、「準備段階」「検討段階」「計画段階」「実施段階」と多くのステップを踏む必要があります。準備段階では、建て替えや改修・修繕も含め、管理組合で正式に「マンション再生の検討段階に入る」と合意しなければなりません。理事会で承認を取り、さらに住民全体の集会で理解を促します。検討段階では、コンサルなどの専門家に入ってもらい、建て替えか改修かの議論を進めます。

計画段階では、専門家や事業協力者を選び、建て替えの具体的な計画を立案し、費用負担についても明確にしていきます。区分所有者である住民の4/5の賛成が得られれば、建て替えの実施段階に突入します。この段階で反対する住民が多く、建て替えが結局実行できないケースが多いのです。実施段階では、分譲マンションが解体され、新しいマンション建設に着工します。検討から実施までで10年以上かかることも珍しくなく、建て替えのハードルの高さが理解できるでしょう。

既存不適格な分譲マンションが多い
建て替えたいと思っても、法律上建て替えが難しい、「既存不適格」な分譲マンションが多いのも要因の一つです。これは建築時こそ旧法律の基準で合法的に建てられていたものの、法律改正や都市計画の変更により、最新の法律に対して不適格な部分ができてしまった建物のことです。このような建物は建設会社やデベロッパー(不動産会社)にとって、建て替えをする上でリスクが大きいのにメリットが少ない、という旨味のない仕事になるのです。

建て替えが難しければ売却も視野に

もともと、2020年の東京オリンピック前後がマンション価格水準のピークと予測されていました。しかし、肝心のオリンピックは一年延期してしまい、さらに現在はコロナショックもあって今後はマンション価格の下落が予想できます。今後、マンション価値が下がるのであれば、早めに売却するのも一つの方法です。

売却を選択しないとしても、売却検討段階でいくらぐらいの売値になるのか査定しておいてもいいかもしれません。築年数や立地条件が近い他のマンションが、いくらぐらいで販売されているかを調べておくことをおすすめします。もし今住んでいる住戸の売却が成功した場合は、その資金を元手に中古マンションを購入する選択肢も出てきます。

区分所有権を解消して敷地売却することも可能
マンション敷地売却制度が2002年のマンション建替法の改正により制定され、耐震性が不足するマンションを敷地売却することが可能になりました。マンション再生の検討段階で耐震診断を行って耐震性不足が認定されれば、マンション敷地売却決議の4/5以上の賛成にて敷地売却が可能となります。反対票の可能性もありますが、区分所有者の費用負担がなく、建て替え決定の決議よりも賛成票は得やすいと考えられます。

建て替えが実現した場合の選択肢

これだけの段階を踏んで結果的に建て替えが決まった場合、居住者に残された選択肢は多くありません。

建て替えに賛成して再入居
建て替えに賛成した場合は、工事中の仮住まいを探さなければなりません。新築マンション建設が完了したら再入居するという流れです。この場合、建て替え費用のほか、引っ越し費用や仮住まいの家賃の支払いも発生し、前述の通り総額約2,000万円の費用負担がかかります。

満60歳以上であれば、最大1,000万円まで借り入れられる「返済特例制度」が利用できますが、あくまで借りるだけのため、高齢者にとってはかなり厳しい条件でしょう。

建て替えに反対して立ち退き

建て替え費用ほかの諸費用を負担するのが厳しい場合は、立ち退くしかありません。この場合、「売渡請求権」が実行されて、半強制的に「時価」で建て替え組合に売り渡すように請求されます。ただ、立ち退きする場合は、これまで積み立てた修繕積立金の返還を受けることができます。

立ち退きに賛成しても反対しても居住者の費用負担はかなり大きいです。建て替えが現実味を帯びている場合、やはり先手を打って売却するのが賢明かもしれません。

マンションの建て替えはオーナーをピンチに陥れる

分譲マンションの建て替えはかなりハードルが高いですが、決まってしまったら巨額の費用を負担しなければなりません。日本のマンション事情を知り、建て替えの流れや居住者が取れる選択肢をしっかりと理解した上で、事前に入念な準備をしておかなければなりません。ローン返済が残っているケースは特に金銭的に厳しくなる可能性があり、危機感を持って情報収集を行いましょう。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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