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加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠

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部屋で死人が出てしまったらどうなる⁉

目次

部屋の中で、自殺や他殺などがあった場合、心理的瑕疵物件として、賃貸や売買の時に、重要事項もしくは告知事項となり、説明する必要があります。

不自然死でも、発見が遅れ、腐乱化・白骨化した場合には、告知するべきと解されています。となれば、通常、賃貸料・売買金額は半額以下となります。

今回は、所有する部屋で死人が出た場合についてのお話をいたします。

部屋に死人が出た場合の対策はどうする?

部屋に死人が出て、告知事項になると、なかなか入居者が決まらなくなります。家賃を下げても、すぐには決まらないことも多いです。でも、そういったスピリチュアル的なことは全く気にしない方もいます。特に女性に多いのですが、賃貸料が安いほうがいいという心臓の強い方もいるものです。

ただそういった人はまれですので、何らかの対策をとる必要があります。まず確認しておきたいのは、いつまで告知事項として入居者に説明しなければならないかということですが、これは明確な基準はないようです。過去の判例によると、最低でも、一回転(一度入居者が入って退去、もう一度別の方が入居すると一回転となります)とか、2年間とかいったものがありますが、ケース・バイ・ケースのようです。不幸にして、もしも、こういった事態になった場合には、賃貸料は安くしてでも、入居実績を作っていくことです。

極論すれば、ただでも入ってもらったほうがいいくらいです。そして、その方が退去され、次の入居募集の際でも、念の為、告知はし続けたほうが無難かと思います。なにかの拍子で、その情報が入居者に伝わり、後でトラブルとなることを避ける為です。賃貸料については、入居者が代替わりする度に、徐々に、元に戻していくのです。何回転も、何年間も問題なく賃貸できる実績が積み上がっていけば、やがて、風化していくものです。

なお、最も怖いのは、一棟物アパート・一棟物マンションなどで、殺人事件が起き、かつ、犯人が不明、もしくは、捕まらない場合です。この場合、全部屋が空室になることもあります。

ちなみに、以前の座間連続殺人事件では、犯人がすぐに捕まったこともあってか、他の部屋の退去者はなかったようです。

病死・不自然死が起きた時は家賃保証に

以前、私所有の区分所有マンションでのことです。賃貸管理会社から電話がありました。賃貸管理会社からの電話といえば、何かが壊れたとか退去連絡などの連絡がほとんどです。この時も、いやな予感を感じつつ、電話に出ました。

すると、
「驚かないで下さい」
「入居者の方(若い女性の方)が、部屋で、死体で発見されました」
「お母さまが第一発見者で、今、警察が立ち会っています」

とのことでした。

部屋で死体が発見された場合、多くの場合は急病で倒れてしまってそのまま亡くなってしまう病死・不自然死であることが多いです。しかし、病死・不自然死ではなく、自殺・他殺の可能性もありますので、検死には警察が立ち会うこととなっています。

結局、今回は自殺・他殺など事件性のものではなく、病死・不自然死ということでした。告知事項には該当しないとされましたが、念の為、賃貸料は下がってでも、賃貸管理会社に対する家賃保証付き一括借上げ契約に変更しました。

若い女性でも、こういったことが起こるのですね。

女性入居者の部屋で、男性の首吊り死体発見

今度は、札幌の区分所有マンションでのことです。女性に賃貸していた部屋で、男性の首吊り死体が発見されたのです!!

警察が調査に入って、1週間くらい経ってから、事態が判明してきました。

どうも、女性に彼氏ができて同棲。
その後、喧嘩別れして、女性の方が家出。
やがて、彼氏も退去。
しかし、何故か、彼氏のお兄さんが住み付いていたとのことでした。

その方は、どうやら、ノイローゼ気味で、自殺を図られたようです。住宅を借りられない属性の方だったのかも知れません。

このマンションは何百世帯もある大規模マンションで、建物管理会社も、入居者が変わっていたことに気付かなったものと思われます。

そして、幸か不幸か、家賃はちゃんと入金されていたので、見落としてしまったようです。

ところで、当時の札幌は今以上の大不況でした。その状況下で、なまじ賃貸借契約の更新を持ち出すと、やれ、家賃値下げとか、転居だとか藪蛇になりかねないので、自動更新が流行っていたのです。

本来であれば、本当に、契約の入居者が住んでいるのか?きちんと働いているのか?連帯保証人は、きちんと収入があって、今でも生きているのか?等、確認することが重要です。

そうでないと、入居者以外の人が住み着き、なにかことを起こしてしまうかもしれないわけです。

ところで、この物件、住人が自殺をしたので、賃貸・売却の際、心理的瑕疵物件として、重要事項告知しなければなりません。それだけでも空室が埋まらない可能性が高まるというものですが、それどころか、賃貸管理会社がリフォーム業者にも丁寧に告知をしたせいか、誰もリフォームを引き受けたがらず、そうこうしているうちに、リフォームが完了した頃には、入居ハイシーズン(3月)も逃してしまいました。

そして、1年間にもわたる空室となるのでした。

空室の部屋で、練炭自殺発見

ある年の年始早々のことでした。突然、名古屋の消防署から電話がありました。

「おたく所有のアパートの1室で、誰かが練炭自殺を図っているようです。
一酸化炭素が漏れて、他の部屋の住民も危ないので、至急、鍵を開けて下さい!!」

現場には、消防車・救急車・パトカー等も駆けつけ、大騒ぎだったようです。
ですが、そのようなことを言われても、鍵は管理会社しか持っていませんし、第一、私は東京です。しかも、私の記憶ではその部屋は空室のはずでしたから、なぜそんなことが起きているかも皆目見当がつきません。

管理会社に連絡を取って下さいと言ったのですが、どうも、管理会社とは連絡がつかないようです。確かに、私の方から連絡しても、連絡がつきませんでした。

管理会社の緊急連絡先の電話番号は、固定電話の番号のようですが、当日は年始早々で、出社時刻が遅かったようです。

しばらくしてやっと管理会社と連絡が取れ、さっそく駆けつけてもらいました。しかし、練炭自殺を図った方は、亡くなられていました。他に8室ありますが、不幸中の幸いで、7室の方は、既に外出中。残り1室の方は、無事でした。

それにしても、空室のはずの部屋で、練炭自殺を図ったのは誰なのでしょうか?これも後で分かったことですが、年末になって、急に入居したいというので、管理会社が入居させた方で、私に連絡をするのを忘れていたとのことでした。通常は、どういった人が入居希望ですと、所有者の私に連絡があるものなのですが……。

その方はまるで、死に場所を探していたかのように、入居後すぐに自殺されたのでした。通常は、次の新しい転居先を確保した上で、退去の1カ月以上前に連絡するか、家賃1カ月分を払って退去するものです。従って、急に入りたいというのは、それだけで不自然なものです。特に、近所から近所へ転居する場合は要注意です。

この方も、近隣トラブル・家賃滞納トラブル・夜逃げ・その他トラブル等に巻き込まれていたのかもしれません。

さて、この件があってから管理会社には、緊急連絡先は携帯電話番号を記載しておくこと、入居希望の情報はその都度連絡すること、急な入居希望の際は転居理由等きちんと確認することなどを徹底してもらうようにお願いしました。

また、本人の母親に連絡がついたのですが、お金もないとのことで、損害賠償請求をする気になれず、結局、そのままとなってしまいました。

孤独死で怖いのは残置物

これは昨年、つまり2017年のことですが、JR京都駅近くの一棟マンションの管理会社から、突然の電話がありました。

「入居者の方がお亡くなりになりました。ちなみに、身寄りはありません。どうしましょうか?」

いや、私に聞かれても、という感じでしたが……。管理会社の方も、こういったことには慣れていないようで、結構うろたえている感じでした。状況を聞くと、最近、体調が悪くなったとかで、病院に入院され、そのまま、亡くなられたようです。

部屋で亡くなられたわけではないので、告知事項には、該当はしません。しかし、連帯保証人も、身寄りもない方のようです。

この物件は中古を購入したのですが、その場合、通常はオーナーチェンジで購入となりますので、既に入居している入居者については、我々が入居審査しているわけではありません。それに、何十年も昔からの入居者については、そもそも、情報も詳しくはない場合も多いものです。そのため、この方のように連帯保証人もなく、身寄りも不明となってしまっている入居者というのは、なかにはいるのです。

私は、管理会社の方に、まずは役所に連絡を取ってみて下さいとお願いしました。役所は、通常は、御遺体の引き取り・御葬式・死亡届等の法的手続きまではして下さるものです。

後は、残置物処理・精算です。私は、書類の情報や緊急連絡先などから、何とか、身寄りを探してもらうようにお願いしました。後日、身寄りの方が見つかったそうですが、亡くなった方にはめぼしい財産もないからと、相続は放棄されるとのことでした。それはかまわないのですが、問題は残置物です。もし、残置物撤去をしてもらえない場合、6カ月間等一定期間保管し、しかるべき法的手続きを取らなければ、処分することもできません。敷金・滞納家賃・入居者負担修理費などを精算するよりも、残置物撤去を優先させなければ、新規募集もできなくなってしまうのです。今回は交渉の上、残置物撤去まではして頂けました。

昨今、連帯保証の制度は酷過ぎると社会問題になっております。そのため、2020年に改正される民法のなかで、連帯保証に関する項目も厳格なルールが適用されるようになっています。

そのような世の中ですので、連帯保証人を立てるのがはばかられるという方もいると思います。とはいえ最悪でも、緊急連絡先として身内の連絡先情報くらいは確保しておくことです。

保証といえば、昨今は、家賃保証のみで代替する手法が流行っていますが、家賃保証会社は、所詮は家賃保証(通常3カ月分程度)のみです。孤独死などの不自然死や自殺、他殺、もしくは逮捕、拘留、事件、事故といった不足の事態で起きた損害には、通常、対応はしてくれません。

一般的な大家はこんなトラブルに滅多に遭わないので安心してください

今回は、引いてしまいがちな話でした。しかし、私の不動産歴32年間108戸にあっての話です。長い間、ある程度の規模でやっていると、色々なことが起こるものです。

日本での自殺は、年間3万人弱。

仮に、全員が賃借物件に入居しており、そこで自殺したとしても、確率は、4000分の1です。……108戸しか所有していない私は、遭い過ぎかもしれません。

通常は、滅多に遭う事態ではありません。万一、遭遇したとしても、家賃を下げ、入居実績を作り、徐々に家賃を戻していけば、大丈夫です。

一棟アパート・一棟マンションで、他殺があり、犯人が不明、もしくは、捕まらないといった異例事態であれば、部屋が空室になるといったリスクもあり得ますが、そうでもなければ、何とか対策を取ることで、自己破産や再起不能といった事態は避けられるものです。

複数の不動産をお持ちになるなら、エリアを分けるというリスク分散の手法もあります。不動産経営には、今回のようなデメリット・トラブルを補って余りあるメリットもありますので、話を聞いて不安になってしまったとしても、前向きに頑張りましょう!!

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著者紹介

加藤 隆
加藤 隆

サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。

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