不動産投資の最新動向
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2020年8月31日(月)
不動産投資家の必須情報! 表面利回りと実質利回りの計算方法
投資用不動産の営業は、物件の「利回り」を強調して売り込むことが多いです。しかし、一言で利回りといっても、意味は1つではないことをご存知でしょうか。
利回りの意味する数字を取り違えていては、思わぬ損をしてしまう危険もあります。本記事では代表的な「表面利回り」と「実質利回り」の違いについて解説しましょう。
表面利回りの計算方法
不動産投資の利回りは大きく分けて、表面利回りと実質利回りの2つがあります。まず、売り物件によく記載されているのは、表面利回りです。
表面利回りの計算方法は単純で、年間家賃収入を物件購入価格で割るだけです。
たとえば、3000万円で購入した物件から、年間120万円の家賃を得られるとしましょう。
以下のような計算になります。
(120万円÷3000万円)×100=4%
注意したいのは、表面利回りの計算には各種修繕費や固定資産税、保険料といった諸経費は含まれないことです。
したがって、表面利回りから実際のキャッシュフローを計算することはできず、かなり高めの表面利回りが出ていないと実際に収益を得られる物件とは言えません。
表面利回りとは経営でいう粗利に近く、管理費などを加味しない賃貸事業自体の収益力を測り、他の物件と比べるための指標です。
あくまで目安であり、物件を購入するための判断に現実的に用いるのは避けたほうがいいでしょう。
実質利回りの計算方法
実質利回りは年間家賃収入から固定資産税や各種修繕費、管理費用、保険料などの諸経費を引いた額を、物件購入価格で割って算出します。
仮に、諸経費が年間20万円かかる場合を想定して計算してみましょう。
((120万円-20万円)÷3000万円)×100=3.3%
表面利回りに比べて低い利回りとなっていることがわかります。一見して高利回りの物件でも、実質利回りを計算してみると意外に低くなってしまう場合は少なくありません。
実質利回りを見ないと物件が持つ本当の収益力は判断できないので、不動産投資家としてはぜひとも知っておきたい概念です。
また、表面利回りと実質利回りの違いを特に注意したいのは築古の物件です。築古の物件は購入価格が安くなるので表面利回りが高くなりやすい一方で、修繕費などの経費は高くつきやすいからです。
つまり、表面利回りの高さを引かれて購入を判断してしまうと、実質利回りは予想以上に低くて損してしまう、ということが十分にあり得ます。注意しましょう。
実質利回りで儲かるかどうかが重要
さらに、物件を購入する判断のために不動産会社に実質利回りを出してもらう場合、注意したいことがあります。諸経費が妥当な額で算出されているかどうかです。
たとえば修繕費にしても、あまり修繕の発生しない楽観的な数値で見積もられていては、実際に購入して物件を運用した際、想定した実質利回りを下回ってしまう可能性が高くなります。
保険料なども同様に、実際にはあまり採用されないような補償不足の商品の保険料で見積もられていても、素人にはわかりません。
実質利回りの計算にはファジーな部分があり、不動産屋としてはどうにか利回りを高く算出して物件を購入してほしいというインセンティブがあります。意識的にしろ無意識的にしろ、実質利回りが高くなるように数字をつくってしまう傾向が出てくるのです。
しかし購入を決めてしまえば、後の運用は投資家の自己責任です。たとえ購入時に不動産会社から提示された利回りより実際の運用責任が悪かったとしても、瑕疵にはならず不動産会社の責任を問うことはできません。
従って、利回りの中でも実質利回りは、投資家自身が知識を持ち、妥当と考える数値を落とし込んで自分で計算してみたほうがいいでしょう。
そうでなくても不動産業界はいい加減な中小業者が多く、悪気なく「計算間違ってました」などという状況が普通に発生します。不動産会社の言うことを鵜呑みにせず、特に数字については十分に疑ってかかるようにしてください。
不動産会社は教えてくれない
普通、不動産会社は自分から「表面利回り」と「実質利回り」という言葉を使わず「利回り」というだけ。投資家のほうから「その利回りって実質ですか?」と答えて初めて教えてくれるのが普通です。
つまり、投資家が不動産会社の言う利回りを、諸経費まで加味された実質利回りだと勝手に思い込んで購入を決めてしまうと、致命的な判断ミスになるということです。
表面利回りどおりに手元にお金が残るならばほとんどの物件は優良物件ということになりますが、そんなことはありえません。
知識不足は誰も指摘してくれず、カモになるだけなのが不動産投資です。基本だけでも必ず自分で勉強して、押さえておくようにしましょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。