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サラリーマン大家が法人化するメリット・デメリット

目次

サラリーマン大家でも、法人化で社長になって大儲け……こんな有名大家のエピソードは多数あり、多くの投資家が法人成りに憧れています。ですが、サラリーマンが不動産投資を法人化するのにはメリットとデメリットの両面があり、注意しなくてはいけません。サラリーマン大家が法人を設立することの実態を解説しましょう。

法人化のメリット

サラリーマン大家が不動産投資用の法人を設立することのメリットは、なんといっても節税です。具体的には、大きく次の2つの節税メリットがあります。

・法人と個人の所得分散
個人の所得税はご存じのとおり、収入が増えれば増えるほど税率が上がっていく累進課税制度です。

(出典:国税庁ウェブサイト
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)

所得税の税率は、サラリーマン大家の場合、給料と不動産投資の収入を通算した額に課税されます。

たとえば年収600万円の人の場合、不動産所得が年に300万円以上あれば課税所得が900万円を超え、所得税33%と住民税で、所得の50%近くを税金に取られてしまうことになります。

不動産所得のうち、ローン返済を経て手元に残る額は決して大きくありませんし、ローン返済の元金分は経費になりません。

結果、せっかく投資しているのに儲からずに税金だけが増えてしまうことになります。

そこで、法人に不動産を持たせることで個人の所得から不動産収入を切り離す手法にメリットが出てきます。

法人税の税率は30%程度で、本業の給与と合算されることも避けられますから、法人化によって払う所得税が少なくて済む可能性が出てきます。

また、一般論ですが個人事業より法人のほうが、経費として認められる範囲が広いと言われています。
特に個人の不動産投資は相当、事業に密接に絡んでこない限りはなかなか経費が認められないので、法人化によってより事業の幅を広げ、経費を活用して節税することを狙うのもアリでしょう。

ここで詳しくは述べませんが、世のオーナー経営者が使っているような法人用の節税策を使うことができますし、法人として銀行融資を受けることも可能です。

出ていく場によっては経営者の肩書で信頼を得たい、という人にとっても法人化はメリットがあるでしょう。

法人化のデメリット

一方で、法人化にもデメリットがあります。

まずは、法人設立の手間とコストです。

株式会社を設立する場合、おおよそ30万円以内の設立費用がかかり、資本金の払い込みも必要になります。

また、個人の確定申告と違い、法人の決算を税理士に作成してもらうのには10万〜30万円ほども費用がかかることには注意が必要です。

また、法人化の重要な注意点として、税金を払った後に法人に残った収入は法人の剰余利益であって、個人事業主のようにすべて自由には使えません。社長一人の会社だとしても考え方は同様です。

会社のお金を使う場合は、入出金と残高がすべて帳簿通りの実態になるよう管理する必要があります。会社の経費になるお金しか使えない、と考えておけばシンプルでしょう。

加えて、勤めている会社の就業規則に引っかからないかも注意が必要です。

不動産を持っていて賃貸収入があるくらいであれば副業規定に引っかからないとしても、従業員が他法人の代表者になることは明確に禁じている会社が少なくありません。

法人を設立すると、法務局で誰でも謄本を取ることができてしまうので、あなたが会社の代表になっていると簡単にバレてしまいます。

それを避けるために、親族や配偶者などを代表として法人を作る人もいるようです。

法人化のその後を考えて判断が必要

まとめると、サラリーマン大家の法人化は、事業規模によってははっきり節税メリットがあるものの、手続きや不動産収入の扱いなど面倒な点が少なくありません。

一つの会社を経営するわけですから、不動産投資の個人事業に比べると大変になるということを頭に入れておきましょう。

法人と個人の所得合計が900万円を超える例をここで述べましたが、法人化は、本業所得の今後の伸びと、これから不動産所得をどれほど増やしていきたいかをよく考えて判断する必要があります。

保有物件が何戸を超えたら法人化したほうがいいというような一律の基準はないのです。

しかし、法人を使いこなせば個人よりもはるかにメリットの大きな不動産投資ができる場合もあります。

不動産投資家としてより上のステージに進んでいこうという人にとっては、法人化は有力な選択肢だと言っていいでしょう。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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