石川貴康の超合理的不動産投資術
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2019年1月28日(月)
返済比率に気を付けろ!キャッシュフローが大切だ
不動産投資ではキャッシュフローがすべてといっても過言ではありません。
利益が上がっているからといって、必ずしも儲かっているわけではないからです。利益があっても、“現金持ち出し”が普通に発生します。
理由は借入金の返済です。借入金が大きく、収入に占める返済額が大きいと現金不足に陥る可能性があります。借入の規模を計る指標に、返済比率というものがあります。
今回はこの返済比率を考えてみましょう。
返済比率とは何か?
返済比率は
返済比率(%)=(1年間の元本返済額+利息額)÷収入×100
で計算されます。収入のうち、どれくらいが借入金の返済と利息支払いに使われるのかを計算しているわけです。
この割合が大きいと返済がきつく、お金の回りが悪くなります。
逆に返済比率が低いと、それだけお金が手元に残るので、リッチになれるわけです。
一般に住宅ローンでは、返済比率が30%程度に抑えることが安全とされています。
仮に、年収が400万円の人だとすると、30%は120万円です。
400万円から120万円引いた280万円が返済後の手残りとなります。
実際は収入に税金がかかるので、400万円の年収で配偶者控除が使える場合で、だいたい20万円くらいの所得税と住民税になります。
返済後のお金280万円から20万円引いて260万円が自由に使えるお金になります。
この場合、仮に返済比率が50%だと、400万円の50%で200万円が返済になり、税金20万円を引いて、のこりの180万円での生活になります。
自由に使えるお金が180万円に減るのです。
260万円と180万円の差は80万円、月額7万円くらい自由に使えるお金が少なくなるのです。
返済比率が高いと大変になるわけです。
私の法人投資での例でみてみましょう
不動産投資でも同様に返済比率が考えられます。
この場合
返済比率(%)=(1年間の元本返済額+利息額)÷家賃収入×100
となります。同様に、税金がかかり、経費もかかるので最終の手残り(キャッシュフロー)は返済比率が引く方が良いのです。
では、私の物件でみてみましょう。
この物件は茨城県つくば市にあるアパート2棟、14戸です。購入価格は約1億円、家屋部分の価格は7560万円、残りが土地代です。
フルローンで買っています。毎年の返済額は223万円、支払利息は118万円の合計341万円です。
昨年度の家賃収入は928万円でしたので、返済比率は
返済比率: 36.7%=341万円/928万円
でした。まあまあといったところでしょうか。
実際これくらいの返済比率だと、ざっくり以下のようなキャッシュフローになります。
家賃収入-(借入返済+支払利息)-固定資産税-不動産管理手数料-法人税等
=928万円-341万円-24万円-46万円-293万円=224万円
《法人税等=(家賃収入-支払利息-固定資産税-不動産管理手数料-減価償却費)*40%=(928万円-118万円-24万円-46万円-474万円)*0.4=293万円》
となります。大きな借金をしていますので、借入返済+支払利息の金額は大きくて合計341万円、税金も293万円にもなり、結局手取りのキャッシュフローは224万円です。
まあ、悪くないと思います。1億円の不動産でキャッシュフロー224万円は、キャッシュフロー利回りでいうと2.24%にしかなりません。
収入に対する比率(いわゆる企業でいう売上高税引き後利益率)は、というと、224万円/928万円で24.1%にもなります。
利益率は高いのに、資産ベースの利回りは低いのです。
税金は利益に掛かるので、利益上は儲かっていても、返済がきつくキャッシュフロー利回りが悪いと苦しくなるのです。
もし、私のケースでの返済比率が50%になっていたら
もし、上記の例で返済比率が50%になっていたとしましょう。
928万円の半分464万円がローン返済と支払利息です。簡易的に、返済と支払利息の利率を同じ1.18%とすると
借入返済=346万円 支払利息=118万円です。同じように計算しましょう。
家賃収入-(借入返済+支払利息)-固定資産税-不動産管理手数料-法人税等
=928万円-464万円-24万円-46万円-293万円=101万円
《法人税等=(家賃収入-支払利息-固定資産税-不動産管理手数料-減価償却費)*40%=(928万円-118万円-24万円-46万円-474万円)*0.4=293万円》
たった14%(36.7%⇒50%)
返済比率が高くなっただけで、手残りは半分以下(224万円⇒101万円)になったのです。もし、大規模な修繕があったり、入居が悪くなったりすると、たった100万程度のキャッシュフローでは、とても回らなくなる可能性があるのです。
もっと返済比率が高かったらどうかというと、手残りは、
・60%なら⇒8万円!(たったこれだけ!!!)
・70%なら⇒-46万円!(なんとマイナス)
返済比率が高いと大変なことになるわけです。
私の物件では仮に返済比率が50%でも100万程度の手残りがありましたが、この程度の金額は大規模修繕や長期空室があればあっという間に消えてしまうような金額なのです。
その点で、やはり不動産投資といえども返済比率は30%くらいに抑えるべきでしょう。
返済比率を下げるためには、借入金額、金利と返済期間、減価償却が大事
返済比率を下げる手はいくつかあります。まず、借入金額を減らすことです。
借入金は元本返済と利息に影響します、借入金が大きければ大きいほど、元本返済と支払利息の金額が大きくなるからです。
やはり、きちんと自己資金を入れて、借入金の額を押さえるのは王道です。
最近の不動産ブームでフルローンやオーバーローンを一般化しましたが、それまでは頭金を何割か入れて不動産投資をしていたものです。
最近融資も厳しくなって、自己資金を何割か入れる形に戻ってきましたので、これは歓迎すべきでしょう。
また、利息額に影響があるのは金利と返済期間です。金利が高いと支払利息の額が大きくなります。
しかし、返済期間が長いと1回あたりに支払う利子額は減ります。
全期間を通して支払う利息の合計は返済期間が長い方が大きくなるのですが、1年で見ると低くなるので、長期で見るか、短期で見るか判断が必要です。
私の感覚では、長い返済期間で当面のキャッシュが厚く残ることにはそれなりの意義(追加投資資金になる、など)があるため、悪くないと思っています。
目先のキャッシュを残すには、金利は低く、返済期間は長く、が私のモットーです。
そして、税金の額を減らしてくれる減価償却も重要です。
したがって、償却資産になる建物の評価額が高く、償却期間が長く残っている物件がうれしい。
最近、新築戸建て投資をしているのは、新築のため減価償却期間がフルに取れるからです。
あわせて、新築だと金融機関の返済期間が長くなる(一般には減価償却期間いっぱいか、少し割り引いた年数になる)ので、返済も楽になるのです。
不動産投資は利回り・利益より手残り=キャッシュフローが重要
結局、不動産投資は利回りや利益よりも手残り=キャッシュフローがどれだけ残せるかが勝負なのです。
利回りが高くても、返済が大きく、その上税金も高いとなっては、破たんのリスクも高くなります。
不動産投資の安全性を高めるためには、返済比率を30%台に抑えて投資していくのが良いと私は思います。みなさんはいかがでしょう。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など