石川貴康の超合理的不動産投資術
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2020年1月29日(水)
不動産投資を成功させる秘訣…「金融機関」との上手な付き合い方とは?
不動産投資では多額の資金が必要になります。数千万円、数億円になることもザラです。こうした多額の資金が手持ち現金で準備できる人はまれでしょう。ふつうは金融機関から融資を受けることになります。
私も売買で数十件の物件の取引がありましたが、金融機関に助けてもらったからこそ多くの物件の購入もできたし、売却もできたわけです。金融機関は不動産投資の大切なパートナーなのです。
今回は、不動産投資を成功に導くための「金融機関」との上手な付き合い方について見てきます。
はじめての融資を申し込むとき「飛び込み」は時間のムダ
初めて融資を受けたいと思った場合、なかなかとっかかりがないものです。まったく縁がない状態で金融機関を片っ端からあたり、飛び込みで融資をお願いする話がありますが、時間のムダです。
金融機関は信用を大切にします。飛び込みでやってくる人は実質「信用力ゼロ」です。信用のない人は基本門前払いです。
また、窓口で融資をお願いするのもNGです。正直いうと、窓口にいる融資担当者は金融機関の中のポジション的にランクが低い場合が多いのです。そうした人に取り入ってもムダになることが多いのです。
金融機関は信用を重視しますから、融資の話をする際は「紹介」で行くべきでしょう。特に金融機関に対する信用が高い人からの紹介であれば、最初からかなりの確率で融資の可能性が上がります。信用がある人の紹介なので、最初から「下駄を履いた」形で信用がかさ上げされるからです。
また、紹介者の顔をつぶすことが問題になる場合は、なおさら、紹介は融資に有利に働きます。私はいつも不動産業者の紹介で金融機関に行きます。不動産業者は数々の物件取引で金融機関に出入りしています。その不動産業者が金融機関にとっていい顧客であれば、その信用力を借りることがきるわけです。
もちろん、不動産業者以外の有力な紹介者がいるなら、活用しましょう。信用がある人の紹介なら門前払いはありませんし、前向きに融資を検討してくれるのです。
事業計画書は必要なし! 金融機関に提出すべき必要書類とは?
ネットや書籍には詳細な事業計画書を書くことを推奨するものがありますが、私は一度も事業計画書など書いたことがありません。金融機関には金融機関なりの評価があり、おそらく素人が作った事業計画書などは参考にもしないでしょう。
事業計画書の作成などは時間のムダです。
そんなものよりも、後述する資料をきちんと取り揃えて提出した方が融資担当の手間が省けるため、よっぽど金融機関にはありがたいのです。
では、必要な書類とはなんでしょうか。以下のようなものです。
【物件資料】
・物件概要書
不動産業者の物件案内文書で十分です。
・レントロール
不動産業者から取得します。
・登記簿謄本
法務局で取得します。
・公図
法務局で取得します。
・地積測量図
不動産業者から取得します。
・建物図面
不動産業者から取得します。
・固定資産評価証明書
通常は不動産業者経由で売り主から取得します。自分で役所に撮りに行くと大変です。
・買い付け証明書、または、売買契約書
契約前であれば、買い付け証明書を提出します。契約していれば、契約書を提出します。購入金額と決済予定日は融資の金額を算定し、融資日程を検討する際のベースになります。買い付け金額や契約金額を偽って多額の融資を引く「巻き直し」というトリッキーな手法が一時流行りましたが、こうしたことは絶対にやってはいけません。信用を大きく損ないます。
【融資を申し込む本人の資料】
・自分の経歴書、または法人の事業紹介
融資を申し込む本人、または法人のことを理解してもらうために作成して提出します。私は自分の経歴書は作っていませんが、法人そのものが自分の経歴とイコールです。そのため、法人の紹介、経営者経歴、所有不動産、書籍などをパワーポイントにまとめています。
・身分証明書
運転免許証、健康保険証などの本人確認のコピーも提出します。
・源泉徴収票、確定申告書、法人の決算書
各資料は直近3年分を提出します。個人の場合は源泉徴収票、確定申告書のどちらかです。法人での申し込みでも、法人の代表者としての源泉徴収票、または確定申告書は提出します。
【配偶者(連帯保証人)の資料】
配偶者が連帯保証人の場合、融資申し込み本人と同じ書類を提出しています。
・身分証明書
・源泉徴収票、確定申告書
【ローン明細】
借入がある場合は、各借入がある金融機関の返済予定表を提出します。
【資産の一覧】
・保有物件一覧
・登記簿謄本
物件ごとの登記簿ですが、物件が多くなると面倒です。最近私は提出していません。
・保有物件のレントロール
管理業者が作ってくれるもので月次の家賃振り込み表3ヵ月程度で十分です。私は所有棟数が多いので、最近は求められない限り提出しないことにしました。
・固定資産の評価書と納税に関わる証拠
毎年自治体から送られてくる固定資産税の評価書と、固定資産税の納付書で十分です。私は所有棟数が多いので、こちらも最近は求められない限り提出しないことにしました。
・金融機関発行の返済予定表
記入機関からもらう返済予定表です。こちらは検収が多くても提出します(面倒です)。
【その他資料】
・法人の登記簿
法人で申し込む場合は、法人登記簿が必要です。
・住民票
おそらく不要ではないかと思います。
・印鑑証明
決済時には必要ですが、申込時には不要です。
・納税証明書
最初の融資も薄込み時には、必要なこともあります。国税は税務署に、地方税は自治体の税務組織にとりにいきます(これも面倒です…)。
こうした書類は揃えるのが大変ですが、事前に整理しておき、すぐ渡せると金融機関も助かるので、迅速に提出できるようにしておきましょう。
融資の申し込みの際「騙すようなこと」はしない
さて、融資の打診や正式な申し仕込みでも融資を受ける際は、以下の騙すような行為やトリッキーな行為はしてはいけません。金融機関とのやり取りは、透明にしておかないといけないと思います。
①契約書などの「巻き直し」
すでに書きましたが、売買代金を膨らませて過剰な融資を受ける手法が「巻き直し」です。金融機関に提出した契約書などを、あとで関係者間で書き直すので「巻き直し」と呼ばれるのでしょう。仕方ない事情で起きることはあるのですが、意図的にやると詐欺的な行為になり違法です。
②「金融資産を偽ること」
また、「カボチャの馬車」問題で明らかになりましたが、「金融資産を偽ること」で信用させ、融資を引き出す詐欺的行為もありました。文書偽装、詐欺にあたりかねない行為ですから、絶対にやってはいけません。
③その他注意が必要な手法
また、「一物件一法人スキーム」や「消費税還付」など、金融機関や税務署にマークされるような行為は慎みましょう。一時の損得に惑わされて信用を失っては、長期的な借り入れが難しくなります。金融機関とは透明性をもった付き合いをしなければいけません。
「担当者の要望」は基本的に聞いてあげる
融資の上申をする際は、担当者が稟議書をあげやすいように協力しましょう。融資担当者から相談がありますので、聞いてあげましょう。
ただし、なかには金融機関の利益ばかり考えたり、担当者自身の評価のためにお願いされたりするような相談事もあります。そうしたことに「乗る」必要はありません。たとえば、融資を引き換え条件にする定期預金や投資信託などは拒否しましょう。金融庁からも指導が入っているはずです。
晴れて融資が通り、決済が済んで返済がはじまります。返済は何年にもわたるので、その間の確定申告書、法人申告書は、申告ししだい金融機関に届けましょう。融資担当者も投資の結果がどうなっているのか確認する必要があるので、迅速に提出してあげましょう。
その融資担当者も何年かすると移動になります。担当者が変わってもかならず後任者を紹介してもらい、会いに行きましょう。担当者が変わっても、変わらず付き合います。
しかし、人が違えば融資姿勢も変わります。融資をしてくれやすい担当者と、そうでない担当者というのは必ずいるものです。それでも、辛抱強く継続的に付き合いましょう。融資に消極的な担当者もいつかはいなくなります。その場合は次の担当者に期待しましょう。
支店長も同様です。支店長によって融資姿勢もかわります。こちらも長く付き合い続けましょう。
不動産投資を「長く」成功させる秘訣
不動産投資は金融機関がなければ継続して規模を大きくできません。いい金融機関、担当者、支店長を見つけて、末永く付き合うようにしましょう。
自分の投資内容、資産内容の透明性の確保と担当者を助けるような対応は喜ばれます。人と人の関係ですから、敬意をもって接し、不動産投資のパートナーとして感謝してお付き合いしましょう。金融機関と上手に付き合うことが、不動産投資を“長く”成功させる秘訣であるということは、いうまでもありませんね。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など