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石川貴康の超合理的不動産投資術

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不動産投資の成否は管理会社で決まる!「大家ファースト」の健全な業者の選び方

目次

不動産投資をはじめたい方は、まず物件を買うことが最優先事項かもしれません。しかし、一戸でも、一棟でも手に入ったら、次のステージに入ります。

物件の運営です。

不動産が手に入ったら、満室を継続でき、家賃のとりっぱぐれがなく、物件が健全に維持されて長く収益を上げてくれるという理想の状態が続くことこそが重要になります。

物件は買って終わりではなく、賃貸ビジネスを営んで初めて不動産オーナーとしての第一歩を歩みはじめるのです。したがって物件の良否とならんで、「管理会社」の良否が不動産投資の成功のカギを握っているといっても過言ではありません。

管理会社にひどい目に遭わされる! 買うことよりも買ったあとが大事と気づく

私は、最初に買った一棟モノで苦い経験をしました。

オーナーチェンジで買ったため、管理を従来の管理業者にそのまま継続してもらったのです。

初めての物件で、選びに選んで、やっと買えた物件でした。駅近徒歩4分、急行停車駅で、次の停車駅が山手線ターミナル駅、商店街も繁華商店街が近いのに物件は静かな地域にありました。歩いてすぐの場所に都内有数の公園もある、便利で住みやすいところでした。

購入して間もなくですが、管理会社に不信感を持ちはじめました。いつまでたっても空室が埋まりません。また、退去時の立会いが非常にいい加減。偶然、私が物件に掃除に行ったら、退去後なのに残置物の山なのです。こちらから指示して初めて動き出す始末。揚げ句、回りの不動産業者から嫌われていて、入居希望者の紹介がもらえませんという状態が判明しました…。

周りの業者とのトラブルが耳に入りはじめたころから、この管理業者は私にうそをつきはじめました。「見回りしています」といいながら、一切その形跡がないのです。当時、自分で物件掃除をしていたので、いくたびに、「自転車が放置されています」、「マットレスが汚れています」と何度も私自身が管理会社に対して報告しているという奇妙な状況になっていました。入金額もおかしくなり、管理らしい管理もしていないことが判明したので、結局管理会社を切り替えました。購入してすでに2年、結果的に空室は埋まらず、収益も圧迫されていました。

切り替えた先は、その後購入した2棟目の管理もお願いした管理会社です。あっという間に満室になり、その後もずっと満室を継続しました。管理の目も行き届き、購入して15年以上たちますが、ずっと優良物件を維持してくれています。

その後、15棟以上になるまでにさまざまな管理業者に出合いました。その経験から、私なりの注意すべき管理業者の特徴が掴めてきましたので、今回は失敗しないための管理業者選びのキモをお伝えします。

バブルを引きずる口だけ達者な古い地場業者は避ける

今は、さすがに少なくなったとは思いますが、地方、あるいは首都圏でも郊外にはいるかもしれない、「バブルを引きずる、口だけ達者な古い地場業者」は絶対避けるべきです。

「バブルを引きずる、口だけ達者な古い地場業者」は、不動産賃貸業がサービス業であるとの意識が希薄です。こうした業者は、入居希望者を下に見て高飛車にあたり、賃貸業の厳しさを甘く見ています。私の最初の管理業者は、まさにこのタイプでした。調子のいいことばかり並べ、誠実さに欠けていて、賃貸ビジネスのパートナーとして不適格だったのです。

同様の業者に地方でも関わりました。地方のため、周りに不動産業者が少なく、ずっと昔ながらのやり方で来てしまったようです。選択肢がなく、この業者しかいないので、仕方ありません。何年もかけてこの業者を育てるしかありませんでした。

保障会社を教えたのも私ですし、督促から回収、行政執行、退去にいたるまでの手順を教えたのも私です。その後優良業者に育て上げ、物件も常時満室になったのでした。

今時保証会社を知らないような業者がいるとは思えませんが、もしいたら、管理会社として付き合うのをやめた方がいいでしょう。今の賃貸事情の厳しさを知らず、勉強していない可能性があります。苦労させられる可能性が高く、プロフェッショナリズムに欠ける業者は、避けるべきです。

「ホウ・レン・ソウ」ができない、大家にウソをつく業者は即変更

次に、私はホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)ができない業者も変えるようにしています。やはり以前、ひどい目に合ったのです。

ある管理会社は、勝手にリフォーム発注していたことがありました。身に覚えのない高額の請求が来て、発覚したのです。私の物件で、私の許可なくリフォームして、高額費用を請求するというのは、もう、感覚がおかしいのです。私の資産の管理を委託しているのに、ホウ・レン・ソウなく、勝手なことをしていることがさらにいくつか発覚し、即、管理会社を変更しました。

また、別の物件では銀座にオフィスを持つ管理業者にウソをつかれました。詳細は書きませんが、大家にウソをつくというのは論外です。パートナーとして付き合っていけません。こちらも即、管理業者を切り替えました。

不動産賃貸はサービス業ですから、入居者に適切な対応をしなければならないのですが、大家にホウ・レン・ソウがなければ、適時、適切な意思決定ができず、入居者に迷惑をかけます。

また、ホウ・レン・ソウなしに勝手なことをされてしまうと、高額な資産を扱うため、とんでもない迷惑を被る可能性もあります。

現在15棟超の物件を所有していますが、管理会社を変えたのは3社だけです。この3社以外は今も大事なパートナーです。それでは、どういう視点で私が管理会社を選んでいるのかを教えましょう。

入居者審査を大家に報告し、損害を与えない業者を選ぶ

まず、入居者を選ぶ時点で大家に報告をし、大家も安心して入居者を確認できる管理会社を選ぶべきです。以前、私が確認しなかった入居者にひどい目に遭わされました。最初から悪意があって、なんと一度も家賃を支払わないまま2年以上居座られたのです。それ以来、必ず入居希望者の審査と報告をしてもらう重要性に気付きました。

とはいえ、戸数も増えるとすべて見ていられないので、審査は管理会社にまかせ、必ず保証会社を通して安心な方を入居させてくれるようにしました。微妙なラインで、大家の判断を仰いだ方がいいと判断した時だけ、報告をもらい、私が決裁をしています。保証会社を通し、人としても安心な方を選び、大家に損害を与えない管理会社と管理契約を結びましょう。

管理会社を選ぶ際には、まず管理対象物件が多く、入居率が高く、保証会社を必ず使う管理会社を選ぶというのが王道だと思います。

管理会社に訪問し、社員を見て、健全な会社かどうか見極める

管理会社を選ぶときは、必ずその会社(オフィス)に訪問しましょう。その際は、オフィスの立派さよりも、役職者を見て、社員を見て、働いている人たちが健全そうな会社を選びましょう。明るい雰囲気で、対応もテキパキしていて、誠意を感じる会社を選びましょう。雰囲気は大切です。

また、妙に精神主義的に頑張る管理会社や、役職者と一般社員になんらかの壁・溝を感じるような会社は避けた方がいいと思います。こうした組織は、のちにトラブルを生む可能性があるからです。

訪問したら、入居率実績を聞き、管理サービス内容を確認します。入居率をきちんといえることは最低条件です。自社の状況を把握し、改善を心がけているからこそ、入居率がすぐ答えられるのです。健全さの証拠です(もちろん、数字の根拠はきちんと聞きます。入居率の数値がいい加減な可能性もゼロではありませんから…)。

また、すぐ管理サービスの内容が説明できるというのも重要です。資料化されていないという場合は、管理のお願いは避けた方がいいでしょう。標準化されておらず、社員も自社のサービスの特徴を理解してない可能性があるからです。

長期空室時などの対策を提案できる管理会社を選ぶ

さて、晴れて管理を委託しても、その後も注意が必要です。まず、管理担当者の退職が続くような管理会社は要注意です。社内の状態が悪い可能性が高く、後々トラブルが発生する可能性があるからです。

また、長く付き合っていると、長期空室になることもあります。そうした時に、こちらから相談をするだけでなく、管理会社から対策を提案するくらいの姿勢が欲しいものです。

以前はそうした管理会社もありましたが、最近は私の管理会社達も、そのような気概に欠けているように感じます。切り替えるかどうかの判断は、賃貸業のパートナーとしてどこまで真摯にしてくれるのかどうか、ということです。大家がつぶれれば管理会社もつぶれるのです。

できれば自主的に提案が欲しいところですが、それができなくとも、大家が空室対策の相談を持ちかけたら、きちんと誠意をもって対応できる相手を選びましょう。

不動産投資をはじめたころは、いい物件さえ手に入れれば安泰だと思っていました。しかし、経験を積んでみると、物件そのものよりも管理が重要だと気付きます。

不動産の成功は、物件もさることながら「1に管理、2に管理、3、4がなくて5に物件」です。金の草鞋を履いてでも、いい管理会社を探しに行きましょう。今イチの業者なら、育てるという手もあります。

古い業者、入居者を下に見る昔ながらの業者、大家に誠実に対応しない業者とは付き合ってはいけません。優良な管理業者には、末永く不動産投資のパートナーになってもらいましょう。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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