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加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠

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不動産投資物件の「建物・賃貸管理」…専門業者に任せるメリット・デメリット

目次

賃貸物件は「建物管理会社」に業務委託するのがベスト!?

区分所有マンションの場合には、管理組合・建物管理会社があり、文字通り「建物の管理」を行ってくれます。その分、もちろんですが毎月、管理費・修繕積立金を取られます。そして、ことあるごとに、値上げされていきます(給料と家賃は下がり続けますが…)。

一方、一棟物アパート・マンション・戸建てには、原則そのような制度はありません。したがって、大家自身で建物管理を行うことが基本となります。例えば、長期修繕(壁面塗装・天井塗装・水回りなど)については、多額の経費がかかりますので、計画的にお金をプールしておく必要があります。特に、エレベータ・機械式駐車場などは、大家界隈では「金食い虫」といわれるほど、お金がかかるものです(できれば、無い方がいいです)。大家自身の管理が難しいと感じれば、管理費などは覚悟の上で建物管理会社に業務委託しましょう。

大家の中には、修理・リフォーム・リノベーションまでをも自分自身で行う人がいます。「DIY(Do It Yourself)」とばかりに、ハンドメイドです。しかし、素人が下手に行うと、見栄えが悪く、建てつけなども甘くなったりで、かえって手間、時間や費用がかかってしまうことも多いようです。自分で材料を調達しても寸法が合わないこともありますし、たとえば各業者さんに分離発注した場合にも、監督的な立場の人間がいなければ手順がおかしくなったり、何かのトラブルが発生した場合に責任の所在が曖昧になったりもします。

好きだとか、はじめのうちは勉強だと思ってやるのならともかく、原則としては、前述の通り業務委託するのがおススメです。特に、時間のないサラリーマンであればなおさらでしょう。DIYを土日のみでやっていたのでは、作業終了まで数ヵ月におよんでしまうこともあるでしょう。そうすれば、絶好の入居シーズンである「3月」を逃してしまったり、空室期間が長引き、家賃収入を得るための機会損失となってしまいますので自身で行う場合は充分気をつけましょう(日曜大工・DIYなどが好きな人は、ハマってしまう傾向にあるようですが…)。

また、賃貸管理(入居者募集、入居者審査、賃貸借契約締結、家賃回収、滞納処理、クレーム処理、賃貸借契約更新手続き、退去手続き、精算手続きなど)に関しても、自分自身で行おうとする人がいますが無謀極まりないといえます。入居者とのコミュニケーションを大事にしたいという気持ちも理解できます。しかし、所有者と入居者とが直接対面すると、何らかのトラブルが発生した場合に角が立ちやすくなることは明白です。ここはやはり第三者的な賃貸管理会社などをかますことにより、スムーズに進めていくのが賢明といえます。

結論として諸々の管理は専門業者に業務委託すべきです。トラブル回避以外にも、全部自分自身で行うと自宅の近隣しか不動産投資の対象にできなくなるというデメリットも回避できます。私の場合は自宅から歩いていけるような物件ですら、自分自身ではタッチせず業務委託しています。だからこそ、東京以外、博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に108戸と規模の拡大をすることができたのだと思います。

オーナーとしては「自営業者」ではなく、「経営者」を目指すべきなのです。

不動産会社の「耐震偽装事件」が発覚!2棟で6千万円の損失も…?

建物管理におけるトラブルといえば、2005年頃に世間を騒がせた耐震偽造事件がありましたが、実は私も少し被害(?)を被っていたのです。

博多駅・名古屋駅、それぞれの近辺で優良な土地を購入し、アパートを新築したのですが、この物件を担当した不動産会社S社の方で、あの耐震偽装事件に巻き込まれたことが発覚したのです。S社はそれまで博多の一棟アパートが主軸だったのですが、色気を出して東京の一棟ビルに進出した際、A歯の審査機関が関わり、耐震偽装が行われてしまったのです。

S社以外にも、K村建設、Hーザーが関わっていましたが、それらの会社は財務体力も無く、騒動の余波で倒産してしまいました。S社は、財務的な体力があったため、耐震偽装物件に関しては、入居者の転居先を用意し、買主については売却価格と同額で買戻しを実行するなど、適切な対応をしました。それでも当時は風評被害もあり、しばらくは仕事にならなかったようですが…。

私の購入した物件は1棟で約6千万円、内建物は約3千万円でした。もし、私の建物も耐震偽装であったならば、同様に、入居者の方には転居してもらい、物件は建て直しするしかなかったでしょう。2棟で約6千万円の損失となるところでした。外資系の金融機関で、ノンリコース(不遡及)型ローンでしたので、日本のリコール(訴求)型ローンと違って、何かあれば最悪物件を放棄すれば、残債から免れることができました(自己資金と支払済ローンはあきらめるしかないですが)。ただ結果的には、耐震偽装物件は東京の一棟マンションのみであり、私の物件は被害を免れました。

当時は、肝を冷やしたものです。その時以来、財務体力のある不動産会社を選ぶことの重要性を痛感しています。

管理会社が「夜逃げ」…敷金・滞納家賃はどうなった?

私自身が所有する札幌の区分所有マンションでの出来事です。

設計・施工・販売・建物・賃貸管理までをワンストップで行っていた不動産会社でしたが、業績悪化からか、一括借上げ家賃保証契約(いわゆるサブリース)だったのですが家賃滞納が起こり、やがては、夜逃げして、そのまま倒産してしまったのです。

私は別の札幌の管理会社の協力を得て、入居者の方からの家賃は直接当方の口座に入金してもらうべく手続きを行いました。そして敷金や滞納家賃を順次回収しはじめましたが、結局一部しか回収できませんでした。そして、私とその札幌の管理会社が中心になって、管理組合を立ち上げ、管理会社変更手続きを行いました。

管理会社に委託するにも、このようなケースもありますので、前述したように見極めが必要です(その会社の内情はできるだけ把握しましょう)。

次も同様に札幌の区分所有マンションでのエピソードです。

管理組合への管理費・修繕積立金は、通常、所有者(大家)が支払いますが、札幌では、入居者が「共益費」として直接支払う場合も少なくありません。この物件は中古でオーナーチェンジ(入居者付き)で、購入したのですが、所有者・入居者が、それぞれ一部ずつ支払う形式にしていたようです。

当時の入居者が退去、新しい入居者と賃貸借契約を締結したのですが、どうやら、昔の入居者が直接支払っていた分は考慮されない契約内容になっていたようです。結果、所有者である私がすべて支払うこととなってしまいました。賃貸管理会社の方も、実態が把握できていなかったようです。

入居者とのトラブルとしては、近隣トラブル(ストーカー・不審行為・騒音・ゴミ出しなど)、家賃滞納、夜逃げ、不自然死、自殺などがあります。これらも、自分自身で解決するのは、大変です。やはり、信頼できる賃貸管理会社に業務委託することが重要です。

賃貸物件の管理・運営を「ワンストップ」で行う業者を選ぶ

設計・施工・販売・仲介のみで、建物管理・賃貸管理は行わないといった会社もあります。

その場合、建てておしまい、売っておしまいとばかりに、建物がどうなろうと、空き部屋のままだろうと、あとのことは知らないとなってしまいがちです。

その点、設計・施工・販売・仲介・建物管理・賃貸管理、全般にわたってワンストップで行う会社であれば、手間もかからず、やはり安心です。とはいえ、先ほど紹介した夜逃げした業者のケースのようにならないように建物・賃貸管理会社選びは、評判や財政状況を調べるなりして、さまざまな要素を考慮し慎重に行うことです。これから長い期間付き合っていく業者なのですから、その位の手間と時間は惜しまないようにしましょう。

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著者紹介

加藤 隆
加藤 隆

サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。

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