Column

石川貴康の超合理的不動産投資術

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都心部でも可処分所得が減った⁉ 賃借人の「入居」が長くなったワケ

目次

「都内」も「地方」も不動産投資には逆風が吹いているが……

こんにちは、石川貴康です。今年の夏は猛暑が続きましたね。東京オリンピック開催まで1年を切ったなか、各地で実地検証が行われています。この時期の気温・水温で、かつ、東京周辺の水の汚染状況で競技が行うことができるのかどうか、が課題になっているようです。個人的には、気候変動・温暖化の影響を考えると、この時期の開催は厳しい気がします。

私は、現在都内に住んでいますが、東京オリンピック期間中は都内を脱出しようかと思っています。交通も規制されるでしょうし、仕事に支障が生じるかもしれませんので……。

さて、不動産投資についても、かなり前から市況がいいのは東京オリンピックまでといわれていました。しかし、状況を見ると、そこまでは持たず、すでにピークを過ぎているように思います。

ここ数年は金融庁の指導もあり、金融機関の融資姿勢が厳しくなり、サラリーマン大家や初心者には融資がつきにくくなっています。そこに、スルガ銀行とかぼちゃの馬車のスマートデイズ問題が起き、不動産投資熱を一気に冷ましています。物件も高騰してしまい、この利回りでは買いにも入れません。

都内は価格高騰、頭打ち。地方は少子化、相続アパートの供給過剰、金融機関の収益悪化などが起き、不動産投資には逆風が吹いています。特に、地方は長期的に人口減・人口流出が続き、首都圏や大都市圏に人口が集中する傾向が明らかになっています。

とはいえ、不動産投資は続きます。このような中で、都内と地方物件で、どのように物件を構えていくべきか、私なりの考えを述べたいと思います。実際に、都内と地方に物件を持つ私にとっては、深刻な課題でもあります。

好景気といわれていても「家賃」を簡単に上げられない事情

首都圏は引き続き人口流入が続くと予想されています。そのため、賃貸需要は継続的にあるものと想定しています。実際、私の持つ物件はすべて満室です。

2006年ごろの不動産プチバブル後に起きた2008年のリーマンショック、そして2011年の東日本大震災後など、一定の時期はやや賃貸市場に陰りが出て、少し家賃が下がりました。しかし、ここ数年は、家賃下落はありません。

このような市況から判断すれば、家賃を上げたいところですが、これがなかなかできないのが実情です。なぜかというと、昨今の好景気という政府の喧伝とは裏腹に、非正規雇用の拡大、社会保険料の増額、増税により多くの人の可処分所得が減っているからです。ここで、もし家賃を上げ、それに嫌気されて退去されると、次の入居者を探すのが大変になります。

ただ、可処分所得が減っているせいか、一度入居すると、引っ越し代がもったいないのか、以前より長く入居してくれるようになった気がします。私の複数の都内物件でも退去が減り、入居期間が長くなっています。

これらは転居にかかる諸費用を抑制したいというあらわれだとも考えています。ですから、長く入居していただくために家賃を上げないでおこうと思っています。また、修繕や設備更新も迅速に行って、入居者サービスに努めています。もちろん、少しでも長く入居してほしいからです。

こうした可処分所得の低下、転居費用の抑制を考えると、仮に空室になっても対応策があります。要は、転居費用が掛からないようにしてあげるのです。

敷金や礼金の低減、あるいはフリーレント(※入居後の1ヵ月から3ヵ月程度の家賃を無料とする契約形態)の提供などです。もっと踏み込んだ支援として、「引っ越し代を持ちます」などでもいいかもしれませんが、費用が見積れず対応できないので、フリーレントが関の山でしょうか。

賃貸に関しては、とにかく一度入居してくれたら入居期間をできるだけ長くしてもらえるように気を配ります。また、退去が出たら、新入居者の転居費用が抑制できるように支援し、入居を促進します。もちろん、客付け不動産業者へのサービスを必要に応じて行い、とにかく入居を確保します。

繰り返しになりますが、人口流入は続いているものの、都内とはいえ人々の可処分所得が減っていることを実感します。この状況下での消費税増税は、単純に経済を悪化させることになりかねませんね。

「都内不動産の購入」……東京オリンピック後の価格下落を待つべきか?

都内投資不動産の購入に関しては、本当にここ数年できていません。買い付けを入れても負けたり、売り止めになったりです。利回りのいい物件を見つけるのが難しいうえに、見つけても「現金買い」に持っていかれたり、売り止めになったります。

仮にいい売り物があっても、あまりに利回りの低い物件ではペイしません。新規参入者や業者が表面利回り3%、4%程度で買っていくのが信じられません。私が2000年初頭に買った物件では表面8%くらいで、やっとこネットで2、3%くらいのキャッシュが残るのが関の山です。表面利回りがわずか3%や4%ではキャッシュが残らないと思うのですが……みなさんよく買いますね。

都内物件の購入は、引き続き探しはするものの、ムリはせず、東京オリンピック後に想定される値崩れを狙っていこうと思います。東京は有望な土地ですが、今は、とても投資不動産を買える状況ではないと思っています。

東京以外では、やはり「大都市圏」が好調であるが……

東京圏以外では、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台といった大都市圏も不動産取引は堅調なようです。ただし、私は、唯一福岡に一棟持つだけです。札幌や名古屋での購入も長年検討しましたが、結局買うに至っていません。

福岡は今も都内に売りに来る業者もいるにはいるようですが、私の福岡市内の物件はだいたいいつも1室空きくらいです。福岡は2012年に購入し、その後も増やそうと通っていましたが、ふたを開けてみると供給過剰でした。当時ワンルームは空室だらけでした。

今はどうなのでしょうか。いずれにせよ土地勘がないので、もう、これ以上の追加投資はしないと思います。逆に、タイミングを見て売却したいと思っているほどです。

札幌もこの10年以上物件を探していましたが、結局買えていません。過去には何度か買い付けを入れては玉砕していました。今では札幌も物件が高騰し、以前ほどの利回りがなく、購入は当面見合わせています。

大阪、名古屋は土地勘がないため、こちらも購入検討はしたものの、買い付けには至りませんでした。その土地に住む人にはいいかもしれませんが、都内に住み、都内の物件を持つ私が大阪や名古屋に持つ必要性も感じなくなりましたし…。

いずれにせよ、首都圏や大都市圏への人口流入は止めようもないトレンドです。首都圏や大都市圏の物件を維持しながらも、さらなる新規購入を検討するのであれば、当然首都圏や大都市圏でしょう(前述したように、利回りが下がり、旨みは減っていますが)。

地方物件でも狙い目となる「人口流入」が期待できる地域とは?

地方は人口減が続いています。どんどん不便になり、職場がなくなり、学校がなくなり、病院が進出せず……という負のループに陥っているように見えます。

ただ、地方が全部だめかというと、もちろんそんなことはありません。私は地方の物件もたくさん持っていますが、最近購入しているのは、地方でも周辺からの人口流入が期待できる地域の物件です。

要は、冒頭の状況とは逆に、職場があり、学校があり、病院があり……という便利な地域に人が集まるからです。私が最近買っているのは、茨城県のつくば市近辺。つくばエクスプレスが走り、都内への通勤もでき、かつ、学園都市ということで、学校、病院ともに充実しているのです。住人の生活レベルも高く、便利です。人口流入は続いていますので、当面は買い続けていくつもりです。

地方の「アパート」「マンション」はますます厳しくなる……!?

一方、明らかに人口減、流出が続いている地方での賃貸経営は今後縮小していく予定です。もちろん、地方でも確実に居住ニーズはあるので、そのような物件は維持します。

特に、地方は家あまりになりますから、今後はあえて狭小なアパートは買わず、買うなら「戸建て」と決めています。現在、私が持っている戸建て賃貸は満室です。

「アパート」や「マンション」は入退去が激しく、儲かりません。今もそうなのですが、今後、都心部同様に地方でも可処分所得の低下によって、高額の家賃を払える人がさらに減るでしょう。そうなると、マンションタイプで高額の家賃を取ることが、厳しくなっていくと読んでいます。

また、親との同居が前提になり始めているため、実は単身者のアパート事情も苦しい。特に、地方大学の近隣のアパートは、学生が親元から通うため、空きが埋まらず、競争が激しくて儲からなくなっています。私も地方大学の傍に2棟のアパートを持っていますが、空室が目立ちます(儲かりません)。

地方物件は「入居の堅いロケーション」の物件、もしくは「賃貸ニーズ」に合った物件のみを維持し、あとは売却も検討しなければならないでしょう。

人口減の地方では「ニッチな市場」を見つけて投資していくしかない

都内に物件を持つのは、今後の人口減・都内集中のトレンドから、王道になるでしょう。ただし、多くの投資家も集中するでしょうから、収益を上げるのは難しくなるでしょう。いわゆる「レッドオーシャン化」です。

それでも、古くから物件を持っているなら、維持すべきだし、新規に買う場合は、上手にいい物件を見つけたり、工夫によっていい物件に変えていったりしなければならないでしょう。

一方、繰り返しになりますが、地方は人口減で厳しいのです。一部の人口増・流入の地域に注目するか、賃貸の競合がいない、あるいは入居者ニーズと賃貸物件のミスマッチといったニッチな市場を見つけて投資していくしかないでしょう。

いずれにせよ「人口減・都内集中」は、今後不動産投資家にとって厳しい選別の流れになるでしょう。ここから退場しないように頑張っていきましょうね。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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