加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠
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2019年10月30日(水)
老後資金「2千万円不足」問題…これからの時代に有効な「資産防衛」とは
老後の年金は具体的にどのくらい不足するのか
昨今、金融庁が公表した報告書により話題となったのがいわゆる「老後資金2千万円不足問題」です。真剣に議論されているというよりは、政治家同士の内輪もめの材料に成り下がっているような気がして、私自身は、冷ややかな目で、静観しています。
先日、7月7日~14日、私はニューヨークに行ってきました。帰国して、溜まっていた自宅に届いた大量の郵便物を確認していた際、「年金定期便」なるものが混じっていたことに気がつきました。
そこには、支給開始年齢は63歳~年間1,756,005円(厚生年金)=月146,334円、65歳~年間2,477,949円(厚生年金1,756,005円+14,978円、老齢基礎年金706,966円)=月206,496円との試算が記載されていました。
私(61歳)のような今の年寄りは、過渡期のため、支給が63歳からですが、原則は、65歳からです。サラリーマンの定年は、通常、60歳ですから、まずは、65歳迄の5年間を凌がねばなりません。
現状、老後の生活費として、最低限度の生活レベルで月20万円、通常レベルで月39万円が必要であるといわれています。中間を取って月30万円が必要とすれば、月約10万円が不足します。それを12月×20年間(80歳-60歳)として考えれば、ざっくりいって2,400万円が不足します。政府がアナウンスする「2千万円」というのは、どのような計算の根拠があるのかは、詳細は分かりませんが、個人で計算しても、不足することは分かります。
支給開始年齢は、現状、65歳~となっていますが、70歳~、75歳~などと、どんどん遅らせる構想が出ているようです。この分だとそのうち、100歳~ということになるのも冗談ではなくなりそうですね。
さらには、支給金額も、どんどん減額していく構想もあるようです。仮に、表面的には減額とはならなくても、インフレによる目減りにより、実質、減額となっていく可能性もあるかもしれません。
年金の支払い額と支給額の収支は、61歳の私の世代ですら、トントンといわれています。実質的には、勤め先負担分(勤め先と個人折半)をも考慮すれば、半分しか返ってこないということになります(勤め先負担といっても、その分、給料を減らされているだけのことですから、実質は、全額個人負担です)。
国(社会保険庁)は、税金と同様に勤め先から勝手に源泉徴収して、先に使ってしまっています。まずは、公務員の給与等の経費(無駄遣い含む)で消え、株等の資産運用で目減りし、時には使い込まれ、減った原資を、今の受給世代に配分しているに過ぎません。
現行の「年金制度」はいったん廃止すべき
日本では、不景気・低賃金雇用で、結婚できない(しない)、子どもを作れない(作らない)現状があり、「夫婦2人で子ども1人」の家庭が多くなっています。これでは、年寄りばかりで、若者は減り、人口は、世代ごとに半減していくでしょう。
以前は、現役世代7人で年寄り1人を養えばよかったのが、今は、2人で1人です(収入の3分の1は取られ、残り3分の2が生活費です)。これがやがて、1人で1人となっていくでしょう(収入の半分は取られ、残り半分が生活費です)。
私の個人的な意見ですが、この年金制度は、取られた分はいったん返却した上で、今後は廃止すればよいのでは、と思います。自分と自分の家族は、自分達自身で守り、本当に援助が必要な弱者と呼ばれる人々だけ、税金で守ればいいのです。
いったん国(社会保険庁)を経由するから、人件費等の経費(無駄遣い等も)、資産運用の失敗、時には使い込み等で、目減りしていくのです。そもそも、何に使われているのかも不明で、私たちではコントロールできません。
各種数値にしても、あくまで「大本営発表」であって、昨今流行りの改竄・偽装等の可能性もあり、信憑性は定かではありません。先に述べたように、勤め先負担分は考慮していませんし、全員支払いを前提にしていますが、国民年金等、実際には、6割の人たちしか支払われていません。資産運用の運用想定利回りも、甘いです。人口減少も甘めの想定です。紙幣・国債増刷によるインフレ・貨幣価値減少も甘い想定です……。
日本は実質「財政破綻」状態である
マクロ的な視点で見れば、国家財政は、実質、破綻しています。ざっくりいって、税金等の収入が年50兆円、国債等の借金が年50兆円……と、毎年100兆円の無駄遣いをしています。借金は、毎年50兆円ずつ増え、累計1,200兆円にも達しています。
個人・家庭で置き換えてみましょう。年収500万円の家庭が、毎年金融機関から500万円借金をし、借金が1億2,000万円に達している状態です。個人だと、実質破綻・自己破産・再起不能状態です。
会社でいえば、実質倒産状態です。従って、社会保険・年金制度は、倒産した保険会社の保険に強制加入させられているようなものです。同じ文脈にのっとれば、紙幣・国債は、倒産した会社の発行する不渡り手形のようなものです。諸外国等が、この実態を明確に意識し始めた途端、あるいは何かのきっかけで、円安・国債暴落・金利上昇ということになる可能性もあり得ます。
「預貯金」による資産防衛は有効か?
大局的・長い目で見れば、紙幣等の貨幣価値は下がっていき(借入金の実質負担も下がっていきます)、実物資産(特に、数に限りのある物。貴金属・土地等)の価値は、相対的に上がっていく可能性があります。
例えば、借入金を活用して、不動産(特に、優良なエリアの不動産)を購入しておくことは有効な対策(資産防衛)の一つとなります。借入金の実質負担は目減りし、不動産の家賃・資産価値は相対的に上がっていくからです。その代わり、今後、借入金利は上昇する可能性もありますので、できれば、固定金利、少なくとも、なるべく長期間固定の金利で資金調達しておくほうがより有利です。
ある程度凌げれば、タイムラグはありますが、家賃・給料等も、インフレにスライドして、上がってきます。資産を日本のみに依存するのは、カントリーリスクがありますので、私個人の場合、外国為替・貴金属も保有しています(外国不動産は、保有していません)。
逆に危ないのは、年寄りがやるような、ひたすら「預貯金」することです。インフレにより目減りする可能性は高いですし、最悪ハイパーインフレにまで至れば、「紙切れ」にならないとも限りません。日本も第二次世界大戦後、そのような状態に陥りましたし、昨今でも、ロシア、トルコ、アルゼンチン、ベネズエラ、ジンバブエ等で、ハイパーインフレが起こっています。
実際に必要な「老後資金」はいくらなのか?
老後資金がいくら必要かという算出方法として、基本的な計算式としては、例月必要金額×残存必要年数、というものがあります。
例えば、例月必要金額を月20万円としましょう。一方、残存必要年数ですが、サラリーマンの定年は、通常60歳(雇用延長して65歳)。平均寿命を85歳とすれば、残り20年間となります。例月金額20万円×12ヶ月×定年雇用延長後残存年数20年間=4,800万円となります。
例月必要金額30万円とすれば、30万円×12ヶ月×定年雇用延長後残存年数20年間=7,200万円となります。続いて、ゆとりある生活金額として約40万円を設定すれば、40万円×12ヶ月×定年雇用延長後残存年数20年間=9,600万円となります。これは、老後必要資金1億円説ですね。
いずれにせよ、「老後2000万円」では全然足りないということが分かります。これが自営で会社組織にせずに厚生年金もなく国民年金のみだと、年金支給額は月5万円程度のようです。企業年金もありません。退職金もありません。自営の方は、自助努力になります。
サラリーマンは、「動物園の動物」に例えられます。檻の中だけで過ごし、不自由ですが、死なない程度の必要最低限の「餌」は与えられます。自営は、「野生の動物」です。自由で、成功する可能性があるかもしれませんが、野生動物同様に「飢え死」にする可能性も高くなります。
今まで、平均寿命を基準に老後資金を見てきましたが、その平均寿命は延びつつありますし、当然ですが、各個人で、寿命は異なります。ですから、老後資金として、いくら必要かという発想では、不確定要素も多く、限界があるというのが私個人の見立てです。
毎月安定収入が入る仕組み・システムを構築する
これまで述べてきた不安を解消するには、「月々お金が定期的に入ってくる仕組み・システム」作りが先決です。月々20万円、30万円、40万円と、安定収入が入り続ける仕組みを作っておけば、いつまで生きようが安心ではありせんか。
具体的には、「資産運用と知的所有権」です。資産運用については、預貯金・外国為替・貴金属・株・不動産等がありますが、安定収入たり得るのは、家賃収入のある不動産のみです。一方、知的所有権は、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権です。具体的には、発明・印税(音楽・出版等)等です。ただしこちらは、特殊な能力も必要とし、普通の人ができるものではありません。
私の場合、現在61歳、資産運用先としては、預貯金・外国為替・貴金属・株・不動産ですが、メインは、不動産です。
現状、資産6億円-負債4億円=自己資本2億円。例月受取現預金400万円-例月支払現預金250万円=例月手残現預金150万円です。収入のメインは、不動産経営になっています。あとは、私の不動産経営のノウハウ等(失敗談も多いですが…)を皆さまにお伝えするのが使命だと思っており、コラム・著作・講演活動もお誘いに応じて行っています。
究極的には、生活費以上のお金が「自動操縦状態」で入るような仕組み・システムの構築を目指します。どんなに遅くとも、サラリーマンの定年迄には、この状態にしておくべきでしょう。そうすれば、減給・リストラ・倒産等があっても大丈夫です。順調に行けば、アーリーリタイアも可能です。
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著者紹介
加藤 隆加藤 隆
サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。