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加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠

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ますます加速する「不動産投資による節税」封じ…その現状は?

目次

消費税がどんどん上がって陥る「悪循環」

増税・社会保険料増、そして不動産経営などへの「節税封じ」と、国が財政難なのでしょうか、国民からの搾取がますます加速してきています。

2019年10月に消費税率が8%から10%に上がったばかりですが、すでに15%という案が出はじめているほどです。

日本は、昔から外圧に弱いですが、IMFかどこかからの勧告なのでしょうかね。

そもそも、消費税というものは、支払者、預かり者(事業者)、税務署、それぞれその導入に際し膨大な時間・手間・経費がかかるものです。昨今のように、商品・サービス・消費場所(店舗・持ち帰りなど)ごとに複雑な区分をしていたら、なおさらではないでしょうか。

それでも、3%から始まって導入を実施してきたのは、今後、税率を上げて増税していくための布石だったのでしょうか。昔は、消費税などありませんでしたが、3%、5%、8%、10%、15%(予定)と、どんどん上がっていきます。この分だとやがて、20%、30%、40%に達する勢いです。そうなると、ますます消費は落ち込み、不景気になり、国の財政は更に悪化し、悪循環に陥っていくのではないでしょうか。

「年金支給開始」の年齢も上がりはじめて…

その昔、年金支給開始は60歳からでしたが、現在は原則65歳からとなっています。

昨今では、70歳から説・75歳から説も出はじめました。また、ある程度の収入がある人は支給額を減らそうという動きもあります。そのうち80、90歳から、やがては100歳まで生きたら祝い金として飴玉代が支給されるという時代が来るかも知れません。

高齢者(70歳以上)の医療費は、現状、本人1割負担ですが、2割負担にあげようという動きもあります。本人負担は一挙に2倍になるわけです。こちらもある程度の収入がある場合には、本人負担の比率を上げようという動きもあります。

最終消費者でもないにもかかわらず、消費税を負担させられる不動産経営者の不条理

消費税というものは、「最終消費者」が負担するものという発想でつくられています。

具体的には各事業所が販売の際、最終消費者から預かった消費税から、仕入れの際、仕入業者に預けた消費税を差し引き、差額を税務署に納税する方式です。

不動産経営においても同様の構造、つまり、最終消費者である入居者から、消費税込みの家賃を受取り、預かった消費税から支払った諸経費のうちの消費税を差し引き、差額を納税すべきです。消費税が導入された当初はそうでした。

ところが後日、税務署は立法的な政策の観点からか、家賃には消費税がかからないように変えてきたのです。かたや不動産経営に関わる諸経費は、従来通り消費税がかかったままです。つまり、不動産経営者としては、家賃の受け取りの際には消費税をとれないのに、支払う諸経費のみに消費税が課されいるのです。思いきり搾取されている…というのはいい過ぎでしょうか。

結果的に不動産経営者は、最終消費者ではないのに消費税を負担させられることになってしまったのです(おかし過ぎます)。支払諸経費に消費税が課税されるのであれば、家賃にも消費税を課すべきですし、その逆もしかりです(いったん支払っても、後日、別途、還付受けできるようにすべきです)。

一世を風靡した「タワーマンション(タワマン)節税」だったが…

タワーマンションの価格は上階が下階より割高というのが基本です(景観がいいからでしょう)。

しかし税務上において、同じ建物内の評価は上階・下階によって差はありません。したがって、上階の方が時価と税務上の評価とで評価減が大きくなり、節税となるのです。このスキームは「タワーマンション(タワマン)節税」として一世を風靡しましたが、税務署に目をつけられてしまいました。時価にならって、上階の方を下階より評価を高くすることとしてきたのです。

ちなみに、海外では、下階の方が割高の場合もあります(下階の方が駅には近いからです)。私も個人的には下階が好きです。上階は外に出にくく駅まで遠いことや、地震発生時の揺れが激しいこと、停電時にはエレベータは止まり昇り降りが困難を極めるなどの理由からです。

なお、タワーマンション自体については、高層ビルなだけに建物の比率が高く、土地の持ち分は少ないです。節税効果は高いものの「資産価値」は正直低いといわざるを得ません。

また、これらを購入するための不動産ローンの支払い金利ですが、以前は全額経費計上可能でしたが、こちらも税務署に目をつけられてしまいました。

支払い金利は「建物分」については経費計上可能ですが、「土地分」については、黒字の範囲内でしか経費計上できなくなってしまったのです(ちなみに、法人化して会社としてローンを支払う場合には、「土地、建物」分ともに経費計上可能になります)。

多額の減価償却費を早期に計上できる「海外不動産投資」の今後は?

海外不動産の場合、日本に比べて、土地より建物の比率が高く、減価償却期間も短い傾向にあります。したがって多額の減価償却費を早期に計上でき、節税しやすいということで一躍注目を浴びることになりました。

そのかわり、将来の売却時には、不動産譲渡税が多めになる傾向にあります。

不動産譲渡税は、売却益(売却金額―簿価―諸経費)をもとに計算されるからです。取得費ではなく、簿価を控除するわけですから、減価償却費が多い分、控除できる簿価が下がっているからです。税務署は、この海外不動産の多額・早期の減価償却費を認めない方向で企んでいるようです(実際、昨年末に公表された税制改正大綱(令和2年度)でも、海外不動産節税を封じ込める方向性が明確となっております)。

さらには、資金の海外流出や資産把握・没収の困難性なども気にしているのではないかと思われます。その証拠ではありませんが、5千万以上の海外送金には届出が必要になるなど、中国同様、海外への資金流出には、規制を加えはじめています。

注目すべき「法人化」という選択肢

「節税対策」と税務署の「節税封じ」はいたちごっこのようでもあります。

消費税節税、タワーマンション節税など、まだ歴史の浅い小手先のテクニックでは、税務署による節税封じにあってしまう可能性が高いと思われますので、今のところは減価償却の活用など、不動産経営においてはある程度歴史のある節税対策を取り入れていきましょう。

あとは、将来的には個人から法人化して不動産経営することをおススメします。法人化は手間や経費はある程度かかりますが、支払い金利、不動産譲渡税、その他各種経費計上などが可能になり、節税の幅がぐんと広がります。

いずれにせよ、不動産経営者は常に政府の動向をウォッチしていくしかありません。その上で、各人にとってベストといえる節税対策を考えていくべきでしょう。

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著者紹介

加藤 隆
加藤 隆

サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。

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