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2021年10月25日(月)
訳あり物件は売れないのか? 不動産売却の心得と注意点を解説
不動産オーナーにとって、売却に難儀するのが「訳あり不動産」です。
「訳あり不動産」は、「事故物件」と呼ばれることもあり、一般的にはマイナスイメージがついています。
今回の記事では、どんな物件が訳あり不動産と呼ばれるのか、その内容を解説しつつ、売却方法や注意点を解説します。
「訳あり物件」の明確な定義はない?
訳あり物件と聞くと、テレビでしばしば紹介される、心霊現象を伴う事故物件を思い浮かべる人も多いでしょう。
不動産売買や賃貸においては、事故物件に限らず「瑕疵(かし)」のある物件全般を、「訳あり物件」と呼びます。
訳あり物件は種類が幅広く、明確に「これが訳あり物件だ」という明確な定義づけはありません。
たとえば、殺人や事故死のあった物件はほとんどの場合、「事故物件」や「訳あり物件」といわれますが、人によって病死や自然死の捉え方はさまざま。
「訳あり物件」とひと言でいわれると不安になりますが、実際どのような理由で「訳あり」になったのか調べてみると、その物件に対する印象が変わるかもしれません。
訳あり物件は瑕疵の告知義務があるのか
もしも所有する物件が訳あり物件で、それを売却したいときに、気になるのは告知義務の有無でしょう。
訳あり物件の明確な定義はなくても、宅地建物取引業者は相手に対し「瑕疵の告知義務」が宅地建物取引業法で定められています。
つまり、瑕疵とわかっていれば、宅建業や不動産会社は、相手側に瑕疵を告知する義務があるのです。
瑕疵と知っていながら、告知や説明義務を怠った場合は業法違反となります。
瑕疵のある訳あり物件は、契約書や重要事項説明書、広告にも「告知事項あり」などと記載します。
ただし、告知をする期間については、明確に決まっていません。
▶参考:「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」については、コラム「不動産売却前に知っておこう! 売主の責任を追及される『瑕疵担保責任』とは?」をご参照ください。
訳あり物件の4つの種類と想定ケース
ここで、訳あり物件の種類と具体的な瑕疵を紹介しましょう。
訳あり物件その1:欠陥や破損のある「物理的瑕疵」物件
建物や土地に重大な欠陥や破損がある物件を、「物理的瑕疵物件」といいます。
具体的には、建物の場合、壁のひび割れや雨漏り、シロアリ被害、アスベストを使用した建材使用、水害による床下浸水や構造物の破損など。
土地の場合は、有害物質での土壌汚染や地盤沈下した土地などが代表格です。
日常生活で簡単につくような床の傷や摩耗は瑕疵とみなされません。
訳あり物件その2:法律に違反した「法的瑕疵」物件
法的に問題のある物件は「法的瑕疵物件」といわれ、建築基準法や都市計画法、消防法に違反している物件です。
たとえば、建築基準法の容積率や建蔽率、建物の安全基準が守られていない物件です。
都市計画法では、基本的に開発行為が認められていない「市街化調整区域」に物件が建っていると違反とみなされます。
消防法の場合は、マンションなどの集合住宅に防災設備の防火扉や避難ハシゴが備わっていない、火災報知器やスプリンクラーが設置されていないなど。
防火設備があっても、古ければ違反になります。
法的瑕疵物件は、それぞれの法律が施行される前に建てられた建物が大半です。
新築や築浅の物件が、法的瑕疵物件とみなされる心配はほぼありません。
訳あり物件その3:事件や事故のあった「心理的瑕疵」物件
一般的に、訳あり物件といわれて最初に連想されるのが、事故や事件などのトラブルにみまわれた物件は「心理的瑕疵物件」でしょう。
建物としての問題はなくても、殺人や自殺、事故死といった、人が住むには心理的に嫌悪感を抱くような物件が該当します。
反社会的勢力の事務所が近隣にあるような場合も、心理的瑕疵物件です。
このような事故物件を専門的に扱う「大島てる物件公示サイト」のような情報サイトもあるため、不安な人はチェックすることをおすすめします。
訳あり物件その4:周辺地域に問題のある「環境的瑕疵」物件
環境的な要因で嫌悪感を感じる物件を、「環境的瑕疵物件」といいます。
物件自体に問題がなくても、住んでみたときに環境に不快感を抱く物件のことです。
たとえば、危険物を扱う工場や下水処理場などの嫌悪施設が近くにある、電車や鉄道などの騒音、工場からの異臭があるなど。
近くの施設からの騒音、振動、異臭、ゴミ屋敷をはじめとした、近隣による迷惑行為などは、一部心理的瑕疵物件に含まれる場合もあります。
訳あり物件に購入メリットはある?
訳あり物件はデメリットが多く、売主側からしたらマイナスイメージかもしれませんが、実は買主側からすればメリットもあります。
買主側が感じる訳あり物件の大きなメリットは、物件価格が相場よりも安い点です。
たとえば、心理的瑕疵のある事故物件でも、事故などを気にしない、安く物件を手に入れたいという人なら喜んで購入する可能性があるのです。
訳あり物件の売却相場は最大90%引き
瑕疵の種類にもよりますが、訳あり物件を売却するは、市場価格の20〜90%でなければ売れません。
たとえば、環境的瑕疵物件のように、売主では根本的に解決しづらい要因で、周辺環境に問題がある場合は、市場価格の70〜80%と大きな値引きをせずに売却できることが多いです。
一方、心理的瑕疵物件の場合、売却価格の相場として市場価格の50〜90%と振り幅が広い特徴があります。
物理的瑕疵は市場価格の20〜30%と安値になることが多いですが、補修をして瑕疵を解消すれば、市場価値に近い価格で売却することができます。
訳あり物件を高く売る方法は?
訳あり物件は値引きすることが当然だとはいえ、売主としてはできるだけ高く売りたいのが正直なところでしょう。
少しでも高く売るためにはどのような手段があるのでしょう。
手段1:瑕疵を解消して高く売る!
物理的瑕疵や心理的瑕疵物件を、少しでも高く売るためには、瑕疵による心配を解消すれば大丈夫でしょう。
物理的瑕疵の場合は、建物の瑕疵を修繕、補修するために、建物状況調査(ホームインスペクション)を実施するのがおすすめです。
物理的瑕疵を解消できれば、市場価格に近い値段で売却できる可能性もあります。
心理的瑕疵の場合は、特殊清掃を行ないましょう。
完全に不安を取り除くことは困難でも、買主側の不安を軽減できるかもしれません。
手段2:更地にして高く売る!
買主が不安要素に思う物理的瑕疵や法的瑕疵の場合は、物件そのものを取り壊して更地にしてしまうのも一つの手です。
瑕疵物件を更地にするには、解体費用がかかりますが、訳あり物件ではなくなるので、高値で売却できる可能性は高まります。
ただし、「住宅用地の軽減特例」が適用外になって、固定資産税が6倍になる恐れも。
また、再建築不可物件となり、建物が建てられない土地になる可能性があるので、事前確認をお忘れなく。
注意してほしいのが心理的瑕疵です。心理的瑕疵の場合は、建物を解体しても告知義務は残ります。
心理的な不安は解体によって軽減するかもしれませんが、解体前にどのような事件や事故があったか購入希望者に告知する義務は残ると覚えておきましょう。
手段3:訳あり物件専門の不動産業者に売却を依頼する!
訳あり物件の売却は、どうしても時間や費用がかかります。
少しでも早く高く売却したい場合は、訳あり物件専門の業者にお願いするのも一案。
一般の不動産仲介業者は、買い手を見つけるのすら苦労しますが、訳あり物件専門業者の場合は独自のルートがあるため、購入者を早く見つけられる可能性が高いです。
訳あり物件が相場よりも安いのは当然!
「訳あり物件」とひと口にいっても、種類はさまざま。
売却までの苦労も、その種類によって大きく異なります。
訳あり物件が相場より安いのは当然のことと心得て、「もっと高く売れるはず」などと欲をかくよりも、訳あり物件が得意な業者を見つけて、確実に早く売却するように心がけてください。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。