加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠
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2020年1月20日(月)
不動産投資を成功に導く「融資交渉」…スムーズに進める秘訣
融資の活用にはさまざまな「メリット」がある
不動産投資において、資金調達(融資)は、物件選定と並んで、車の両輪ともいえる重要なものです。もちろん、現金で購入する手法もあります。そうすれば、悪徳金融機関とのトラブル、金利上昇、ローン支払不能などのさまざまなリスクの回避ができます。
しかし、借入金を活用すれば、様々なメリットがあります。金融機関が第三者的な視点で、自分・物件を見てくれること、現金を貯めるまでもなく、早く、より高額な物件も購入できること、イールドギャップ・レバレッジ(梃子の原理)を活用できること(低金利で資金調達し、高利回りで運用できる)、団体信用生命保険(団信)による生命保険機能を活用できること、節税機能(支払金利等による所得税・住民税節税、借入金・不動産評価減・資産圧縮による相続税節税)を活用できること等です。
そこで、今回は、不動産投資における融資関連の失敗や交渉がうまくいったエピソードなどを紹介いたします。これから不動産投資を始める、あるいはもう物件を持っている方にも参考になれば幸いです。
「団体信用生命保険」をつけることができなかった理由とは?
以前、名古屋駅近くの一棟アパート新築(約6千万円)・博多駅近くの一棟アパート新築(約5千万円)の不動産投資を同時に進めていた時のことです。いずれも、団体信用生命保険(以下団信)をつける予定で進めていました。建築許可の関係もあり、博多駅の一棟アパートの方が先に進んでいました。
ところが、名古屋の一棟アパート関連の業者から突然、団信が使えないとの連絡があったのです。借入の上限が1億円までということが判明したとのことでした。
住宅ローンの融資上限として、よく「8000万円まで」や「1億円まで」と明記されていることがありますよね。この額がどこからくるのかというと、実は団信で保障される上限額からきているのです。つまり私は博多の一棟アパートで、既に、5千万円を使っており、名古屋の一棟アパートの購入でその上限を超えてしまったということなのです。
1億円の範囲内で再度融資の申請をやり直す時間も、それが承認される保証もないとのこと。やむをえず、名古屋の一棟アパートについては、「団信なし」でいくことも考えましたが、残りの枠5千万円は、別の物件で使おうと思いました。しかし、その後、当該金融機関(外資系T銀行)は、不動産投資用の融資から撤退。その機会がやって来ることはありませんでした…。
直前での融資条件の「変更要求」は意外と多い!?
不動投資用の融資を受ける際には、融資条件・融資金額・融資期間・金利・連帯保証・別件共同担保・その他定期預金・定期積立預金など、まず自らの状況を客観的に判断することが重要です。
実際には、いざ、「金銭消費貸借契約(※1)」締結の段階で、融資金額減額・融資期間短縮・金利上昇・連帯保証、別件共同担保要求などといった条件の変更、あるいは最悪キャンセルなんてことが発生するケースもあります。
大勢に影響がなければまだしも(そんなケースは少ないと思いますが)、購入の手続きが進んでいた場合など、融資がこれではどうしようもありません。
最近は、かなり早い段階から条件提示してもらい、自身の状況と合っているのか確認するため、あらかじめ書面でもらうようにしています。
※1 借主が、貸主から金銭を借り入れてその金銭を消費し、その借入額と同額の金銭(利息付の場合は利息分も含めて)を貸主に返済するという契約のこと。
決済の前日に融資が「ドタキャン」…いったい何が?
札幌駅そばの大規模一棟マンション(約600坪:2億円)の物件を購入しようとした時のことです。
以前からお付き合いのあったS銀行で融資の話は進んでおり、その後、正式に融資承認(電話・電子メール有り)、「金銭消費貸借契約」締結まで進み、あとは融資実行・決済を待つまでとなっていました。ところが、決済の前日になって、特段の理由も無く、融資を「ドタキャン」されてしまったのです。
不動産会社は手付金(500万円)を返還せず、それどころか、違約金(2割:約4千万円)、仲介手数料(約600万円)まで請求してきました。
その後、裁判になったのですが、S銀行は、お抱えのコンサルタント不動産会社P社と一緒になって「手付金領収書」・「重要事項説明書」・「売買契約書」を偽造しており、それを、当方がやったと濡れ衣を着せてきたのです。今でこそ、S銀行の「書類偽造」は有名となっていますが、当時は、まだ暴露されておらず、銀行が偽造などするはずはないとばかりに、誰も信じてはくれませんでした。
当方の弁護士、他の宅地建物取引(宅建)協会、消費者庁、金融庁、警察、裁判所など、誰も信じてはくれませんでした。裁判所の方も、苦し紛れに、そもそも、不動産購入時には、自己資金を1割とか出すのが当たり前であり、フルローン(物件価格と同額を融資受け)・オーバーローン(物件価格に諸経費を含め融資受け)自体が違法なことであって、保護するに値しないとか、わけのわからない理由をいっていました。
優良物件を割安価格(売り急ぎ・決算期・相続等)で購入していれば、更に、本件のように、別件共同担保を提供していれば、金融機関にとってもリスクは低くなるため、フルローン・オーバーローンは、普通にあることです。逆に、いくら自己資金を出しても、不良物件を割高価格で買っていればリスクは高いでしょう。
しかし結局、違約金・仲介手数料・金利(年利6%※サラ金並みです)・当方先方の裁判費用・弁護士費用など、約6千万円の損失を被らされました。
もちろんS銀行とは手を切らせてもらいましたが、それ以来、不動産取引をする際には、違約金は少な目(上限は物件価格の2割まで)にしてもらい、白紙解約期限(※2)はなるべく遅めにし、白紙解約期限迄に、融資実行・決済までするようにしています。
もし、それが難しいといわれたら、「融資承認書」を書面でもらう、あるいは「金銭消費貸借契約書」は当方の署名・捺印のみの差入方式だけではなく、金融機関からも一筆もらっておくなどの自己防衛策を講じておくべきです。
※2 買主が売買代金に住宅ローンを充当できない(融資を受けられない。)場合、はじめから契約が無かったことになる白紙解約(契約解除)が適用されることになります。この場合、売主は、受け取った手付金の返還義務が発生することになります。
金融機関に対し「金利の引下げ交渉」をする価値は大いにアリ
不動産経営を成功させる上で最も効果的なのは、ローン金利の引下げです。
ローン返済が、半年、1年間と順調に進んだ場合、金利の引下げを提案してみましょう。金融機関に対し、自分で直接、あるいは不動産会社経由でいってもらってもいいでしょう。私の場合、「固定金利」であるにもかかわらず、他の金融機関からの借り換え、新規案件の融資受け提案も抱き合わせにし、金利の引下げに成功したこともあります。
他の金融機関への借り換えと違って、手間暇・諸経費もかからず、電話1本で進めることが可能です。トータルで支払金額数百万円削減にもなる場合もありますので、試す価値があります。
トータルで1億8000万円もプラスに!他の金融機関への借換えも検討すべき
当該金融機関内での金利の引下げも難しく、新規借入も難しいということであれば、これまでと見切りをつけ、他の金融機関への借換えも視野に入れましょう。
手間暇・諸経費はかかりますが、トータルで、メリットが出ればオーケーなのです。諸経費としては、旧金融機関の違約金・解約手数料(2%程度)、抵当権抹消費用、借換え先の新金融機関の「金銭消費貸借契約書」の収入印紙代、融資手数料、抵当権設定費用などがかかります。
大体、融資残金額100万円以上、融資残期間10年以上、金利低下1%以上であれば、ペイするようですが、そのあたりは新金融機関にて、見積もりして貰えます。私の場合もこの借換えを実行して年間600万円、トータルで1億8000万円を浮かすことに成功しました。
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著者紹介
加藤 隆加藤 隆
サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。