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石川貴康の超合理的不動産投資術

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不動産投資で「ババ物件」を選ばないために…プロの選定基準を知る

目次

最近まで過熱気味であった「不動産投資ブーム」。初心者の方が高額な不動産をポンと購入するので、他人事ながらかなり心配していました。

私は2002年に投資を始めて以降、相当慎重に行ってきたつもりです。それでも、失敗や挫折はありました(ほとんどの物件はよく稼いでくれていますが)。失敗も学びのうちとはいえ、不動産投資の場合は1回の損失額が大きく、取り返しのつかない事態に陥ることもあります。

そこで本記事から、不動産投資で「失敗しないための勘どころ」「成功のコツ」などを説明していきます。もちろん、投資の世界に「絶対」はあり得ません。経験をもとにしたアドバイスである点は、ご了承ください。
不動産投資において重要なのは、なんといっても物件選び。購入できれば何でもいいわけではなく、明確な判断軸を持たないと、「ババ」を引いてしまいかねません。何件も資料を見て、視察し、選びに選んで購入することになるわけですから、物件選びにも「コツ」が求められるのです。

【判断軸①ロケーション】物件選びの基準は「自分で住んでもよいか?」

物件を選ぶ際、ロケーションは最も重要な要素のひとつです。当然ですが、物件は文字通り「不動」産です。動かすことができないわけですから、需要はロケーションが左右するといっても過言ではありません。「ババ」の物件を買ってしまうと、入居づけに困ることになります。

私の選定基準は、都内と地方で異なります。都内の場合は、繁華な駅の近辺です。駅から歩いて15分以内、できれば10分以内を選びます。サラリーマンや学生が多いことも大切です。商店街が充実しているなど、買い物に便利な場所に立地していることを重視します。

地方の場合は基本的に車社会なので、駅近である必要はありません。それよりも駐車場が必須です。近隣に、スーパー、病院、学校などがある場所を選びます。こちらも住みやすく、買い物に便利な地域がいいでしょう。

こうした基準の根底にあるのは「自分でも住んでいい」と感じるかどうかです。OKなら「買い」と判断しています。もちろん選ばない基準もあります。都内の場合、駅から遠い地域は、入居づけに苦労すると考えて間違いないでしょう。地方では、あまりに田舎で、周囲に住居が少なく、閑散としているような土地、働き口がなさそうな場所はオススメできません。それなりの規模の都市を選ぶべきです。

【判断軸②使用目的】居住用と事業用で異なる「リスクとリターン」

物件の使用目的は、「居住用」と「事業用」に分けられます。居住用はまさに住むため、事業用は飲食店や事務所など、ビジネスのための物件です。

この選び分けは好みによります。傾向として、居住用は長期入居、利回りはそこそこで、景気変動の影響をあまり受けません。一方、事業用は高利回りですが、テナントの入居が景気に左右され、ややリスクが高くなります。

もちろん、確実に入居がある事業用物件を買うことができれば高利回りでウハウハですが、個人的には長期安定の居住用が好みです。

【判断軸③築年数】利回りが大きく変わる「新築と中古」の違い

新築物件の値段は高く、中古物件は安いです。しかし、あまりに古い物件は考え物でしょう。築年数が経てば経つほど、入居者の需要が減り、利回りに影響するからです。さらに法定耐用年数を過ぎていると、金融機関の融資も難しくなります。中古でも、やはりできるだけ築年数の浅い物件が有利となります。

また、減価償却費は、ローン支払いとの相殺でキャッシュを残すためにも活用したい費用です。その分、新しい物件なら、できるだけ長い期間減価償却をできるので、かなりの税金対策になります。とはいえ、「法定耐用年数が過ぎているから賃貸ができない」というわけでもないので、判断は難しいところです。

実のところ、私の好みは中古物件であり、新築は敬遠していました。しかし最近は、新築戸建てにも投資しているので、長期的なローン支払いと減価償却によるキャッシュの手残りで投資バランスを考えています。減価償却が早く終わるとキャッシュアウトが増大するので、注意したいところです。

【判断軸④利回り】実質利回りとキャッシュフローを重視すべきワケ

利回りは、表面利回りと実質利回りがあります。表面利回りは投資総額で家賃収入を割った利率です。実質利回りは、家賃収入から管理費や固定資産税などの必要経費を引き、その金額を投資総額で割った率です。

経費が多いと、実質利回りは低下します。そのため、表面利回りばかりでなく、実質利回りの高さを気にしましょう。ワンルーム投資などでは、表面利回りが高くとも、管理費や修繕積立金を差し引くと、著しく実質利回りが下がることがあります。こうした物件は、収支が厳しくなるので注意が必要です。

私のかつての投資判断の基準は、都内物件が表面利回り8%以上、地方物件が表面利回り12%以上でしたが、最近の利回りは低下傾向なので、それぞれ表面利回り7%以上、表面利回り10%以上にしています。

【判断軸⑤過度な高利回り】「粉飾物件」には注意せよ!

都内や地方で、極端に利回りが高い物件があります。そうした物件は、満室想定で高利回りを演出していることが多く、売り主もなんとか売りたい「ババ」物件の可能性があります。

私も最近、都内物件で表面利回り10%以上とされる物件を見に行きました。すると、1階の店舗部分は壊れ、補修に相当な費用が発生しそうであること、店舗家賃が算入された名ばかりの「高利回り」であることに気づきました。現況空室である店舗の家賃がないと、とんでもない低利回りになることが判明し、投資を見送りました。

通常、レントロールという入居状況や家賃資料の開示を求めるのですが、この時は開示されませんでしたし、都内の高利回り物件なのでとにかく視察を優先したのです。残念な「粉飾利回り」物件の実例でした。

このように、利回りを高く見せてなんとか売ろうとする「ババ」物件には注意しましょう。もちろん、物件の抱える問題を解決して、入居づけも創意工夫、どんな努力もいとわないというなら構いません。しかし、本業があって、できるだけ楽をして利益を生みたい場合、あえて苦労する物件を選ぶ必要はないでしょう。

利回りだけに目がくらんで、「自分はなんとかできる」と思い込まないように気をつけましょう。とにかく不動産投資では、高利回りに飛びつかず、慎重に選ぶ必要があるのです。かくいう私も、根拠なく「自分ならできる」などと思う時がありますので、自分自身を戒めたいです。

【判断軸⑥キャッシュフロー】 「ローン返済、税金、管理費」の影響とは?

利回りの話が出ましたが、不動産投資で重要なのはキャッシュフローです。「最後にどれだけの現金の手残りがあるのか」が大事なのです。

キャッシュフローに影響するのは、「家賃」と、そこから出ていく「ローン返済費」「固定資産税」「管理費」「修繕費」「その他経費」などです。さらに、ここから所得税や法人税を支払い、最後に手元に残った現金、これが重要なのです。

手残りがあれば御の字、なければ破たんのリスクも高まります。キャッシュフローが生まれる物件こそ買うべきですし、そうでないなら、どんなに見た目が良く高利回りの物件でもNGです。

不動産投資は、手残りが王様。「キャッシュ・イズ・キング」なのです。

【判断軸⑦構造と減価償却】「木造、鉄骨、RC」の違いとは?

減価償却ができる期間に影響が出るため、物件購入の際は「建物の構造」にも、十分注意を配りましょう。木造は、RCに比べ減価償却できる期間が短いです。鉄骨造りは意外と耐用年数が短く、一方で物件価格が高い場合があります。

また、建物の構造は固定資産税にも影響を及ぼします。木造は固定資産税が安く、RCや鉄骨だと高くなります。

私個人は木造が好みです。耐用年数が短いですが、RCなどと比較した場合、家賃の違いはそう大きくありません。それにも関わらず、建築費用、購入価格、固定資産税が安いからです。

建物の構造においても、堅牢さを選択するのではなく、キャッシュフローへの影響を考えましょう。固定資産税の額、長期的に減価償却費の取れる期間と額を考える必要があります。正解はないので、このあたりのバランスはよく考えなければなりません。

※法定耐用年数については、こちらを参照

【判断軸⑧違法物件】出口が描きにくい「違法物件」と「再建築不可物件」

謎に高利回りな物件の場合、違法物件や再建築不可物件の可能性もあります。

違法建築物件は、原則的に金融機関のローンが通りませんが、まれにノンバンクが貸してくれて、買えることもあります。しかし、転売する際にノンバンクが使えないと、当然普通の金融機関融資も通らず、まったく売れなくなってしまうケースもあります。「出口」が描きにくく、流動性が低くなる可能性があるため、私は敬遠しています。

再建築不可物件にも魅力的な物件はありますが、こちらも「出口」が難しくなります。もちろん、「初心者が最初に買う物件」としては避けたほうがいいでしょう。それなりの経験を積んで、うまく対応できるなら投資対象にしてもいいかもしれません。私は本業もあるので、こうした違法物件や再建築不可には投資していません。

焦ってババをつかまないための心がまえ

不動産は高額の投資なため、「ババ」をつかむと大変なリスクに直面します。

ですから、利回りに踊らされず、じっくり選び「手残り」が確実な物件を選ぶべきです。

だれと競争するわけでもないので、ゆっくり、じっくり投資していくことが肝心です。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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