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加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠

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定年後のお金をどうする?「相続」を見据えながら行う「資産運用」のススメ

目次

会社員の退職金…一括と分割、どちらで受け取るべきか?

サラリーマンの場合、会社を定年まで勤めれば、通常、わずかではありますが、退職金が出ます。受け取り方として、「一括」と「年金分割方式」があります。

一括現金の場合には、「事業開業資金」としてそれを使う場合、失敗しないようにすることです。大体、10年間で1割しか残らないといわれているくらい、独立開業は難しいものです。そもそも、今まで勤め先の看板を背負って、リスクを取らず一部のことしかやっていない歯車にしか過ぎなかった者が、いきなり事業を起こすなど、リスクが高いのも当たり前です。

一方、年金分割方式ですが、自分の退職金を分割して返してもらうのにも関わらず、所得と見なされ、「所得税」が課税されてしまいます(厚生年金も同様です)。一見、表面運用利回りは高そうに見えますが、税引き後の実質利回りで判断しなければなりません。

また、勤め先の業績悪化・倒産等の場合、減額・返還不能になるリスクもあり得ます。N航空倒産の時もそうでした。私の勤め先の関係会社でも、運用会社の破綻によって、巨額損失を被っていました。ちなみに、私の場合は、自分自身で、きっちり運用していますし、倒産リスクを避ける意味でも、一括現金で受け取りました(年収2年分にも満たないわずかな金額でしたが…)。

退職金を有効活用し「資産運用」をすべき

定年は、通常、60歳です。昨今では、日本・年金制度も財政破綻し、65歳からの年金支給までは、雇用しろと国から各企業に御達しが出ています。実態はといえば、嘱託・雇用延長ということで、仕事は変わらないのに、給料のみ半額と激減させられてしまいます。前回も申しましたが、後輩・かつての部下から顎でこき使われ、雑用をやらされる場合もあり得ます。それでも、生活費のため、働かざるを得ない人が多いのです。私の勤め先でも、9割が嘱託・雇用延長を選んでいるとのことです。まあ、給料は安くても、同じ勤め先・同僚・仕事の方が抵抗無く続けられるということなのでしょう。

今まで、平日の朝から晩まで家を空けていた夫が、定年後は家でゴロゴロしはじめる。家族にとっては、邪魔そのものです。家事(炊事・洗濯・掃除等)の手伝いは、通常、ほとんど役に立ちません。暇潰し・健康・小遣い稼ぎのためにも、適度に勤めに出るのもいいかも知れません。

収入(源)についても、徐々に軸足を勤め先からその他のものに移していくべきです。勤め先は嘱託・雇用延長ですら、長くても65歳まで。その後の収入はありません。国の年金制度も破綻寸前ですから、それもあてにはできない状況です。ではどうするか? 種銭を貯めたり、退職金を有効活用し、資産運用(預貯金・外国為替・貴金属・株)をはじめることです。さらに余剰資金があれば、定期的安定収入をもたらすものとして不動産経営を検討してもいいでしょう。

昨今、「人生100年時代」ともいわれ、いつまで生き続けるかわかりません。いくら貯蓄があっても、無収入で、徐々に資産が減っていくのを見るのは心配なものです。その点、毎月いくら入るといった安定収入があれば安心です。最低限の生活費は月20万円、旅行代・孫への小遣い等多少は余裕を持たせて月40万円必要ともいわれています。毎月、その位の安定収入を確保するのは簡単ではありません。そのような不安を払拭するためにも、やはり「不動産経営」という選択が最適であるといえます。

すぐに現金化できる「流動資産」を持つメリット

定年後の資産運用を見据えて、流動資産(現預金・外国為替・貴金属・株)をある程度、貯めておきましょう。いざというときのために、すぐに現金化できる流動資産は大切です。後は、余剰資金の範囲内で、不動産経営を行います。もちろん、ある程度のリスク(家賃滞納、修理費、空室による敷金返却・空室フリーレント時家賃無し、リフォーム、広告費、家賃下落 等)も想定しましょう。

諸外国にも通用する資産を持っておくことも、リスク分散になります。例えば、外国為替、貴金属、外国株、海外不動産等です。私の場合は、外国為替としては、米ドル、イギリスポンド、ユーロ、スイスフラン、オーストラリアドル、ニュージーランドドルを定額購入・スポット購入しています。貴金属は、金・白金・銀、地金の定額購入・スポット購入、地金型コイン・記念コインを購入しています。

「50万円」の争いのために使った100万円の裁判費用…

相続対策の3本柱と呼ばれているのは、「遺産分割対策」・「節税対策」・「納税資金対策」です。

その中でも、最も大切なのは、「遺産分割対策」です。これは、被相続人(通常:親)がきちんとしておかないと、相続人(通常:配偶者・子)の家族間で「争族」となりかねません。最悪、なまじ利害関係があるだけに、「兄弟は他人のはじまり」と他人同士の争いより始末が悪くなる可能性もあります。

私の知り合いでも、もめて裁判にまで発展している事例も聞きます。裁判などしょせん他人事で、いい加減な弁護士・裁判所が儲かるだけです。知り合いの場合も、弁護士費用・裁判費用で、100万円もかかったそうです。

ところで、いくらの金額を争っているのかを聞いたところ、なんと、「50万円」とのことでした。もう意地だけでやっているという状態です。ここまでくると、時間と金の無駄以外の何物でもありません。できれば生前に、兄弟公平に分割計画を立て、遺言書で明確にしておくことです。

その際、通常は、生前贈与(学費・結婚費用・マイホーム購入費用等)、特別寄与分(介護等)も考慮しましょう。流動資産(現預金、外国為替、貴金属、株)については、すぐに現金化できますし、価格も明確で、分割も容易です。反面、不動産については、すぐには現金化できませんし、価格も不明確で、分割も困難です。売り急ぐと、物上げ業者等によって、足元を見られ、二束三文で買い取られてしまいます。

価格についても、同じものは二つとなく、明確な相場があるわけではありません。分割も困難で、下手をすると、道路づけができなくなって(原則、4メートル幅以上の道路に2メートル以上接していないと不可)、再建築不可となったりします。旗竿地ができてしまい、資産価値が下がってしまうこともあります。かといって、共有にしてしまうと、賃貸、リフォーム、建て直し、売却等、何をするのにも全員の合意が必要となります。各自、家族構成・性格・性別・年齢・職業・収入・資産状況等異なため、合意を取るのは困難です。従って、不動産については、なるべく、共有は避けるべきです。

その意味でも、不動産物件は、複数(できれば、子供の数以上)所有しておくのが理想的です。最も遺産分割のトラブルとして多いのは、居住しているマイホームしかなく、他に分ける資産が何もない場合なのです。

不動産を活用した相続税の「節税対策」

なお、遺言については、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」がありますが、確実なのは、公正証書遺言です。この遺言書は、何度でも作成でき、最新のものが有効となります。ただし、遺留分制度というものがあり、いくら遺言書があっても、法定相続分の半分は、請求することが可能(相続開始を知ってから1年以内)となっています。

生前の遺留分放棄は、家庭裁判所の許可が必要です。法定相続分は、相続人が配偶者・子の場合には、配偶者:半分、子:半分(子が複数の場合は平等に分割)となっています。子がいない場合には、配偶者:3分の2、親:3分の1です。子も親もいない場合には、配偶者:4分の3、兄弟:4分の1(兄弟には遺留分無し)です。

相続税としては、非課税枠は、(基礎控除3000万円)+(600万円×相続人の数)です。妻1人・子1人の場合、3000万円+(600×2)=4200万円となります。それを超える場合には、相続税が課税されます。

相続税の節税対策としては、毎年の無税範囲(年間110万円)内で贈与し続け、相続財産を減少させる方法もありますが、時間がかかります。婚姻期間が20年以上で居住用不動産の場合、贈与税の配偶者控除2000万円を活用するという手もあります。

流動資産(現預金・外国為替・貴金属・株)には、節税の余地はありません。不動産については、評価は、実勢価格より下がります。建物が建っていれば、「建付地」として評価が下がります。賃貸に出せば、「貸付地」として評価が下がります。併せて、「貸家建付地」として評価が下がります。大体、半分以下に評価が下がります。借入金を活用して、不動産経営を行った場合、借入金の方は、そのままマイナス評価される一方、不動産の方は評価が下がるので、トータルの相続税対象資産を圧縮し、相続税を節税することが可能です。

先の節税対策等も駆使した上で、納税が発生しそうな場合にあっては、納税資金対策も必要です。相続が発生した場合、10カ月以内に納税しなければなりません。

被相続人が亡くなった場合、「死亡届」提出(7日以内)、通夜・葬式・四十九日、相続(単純相続・限定承認・放棄)(3カ月以内)、相続税納税(10カ月以内)と、あっという間に、時間がなくなってしまうものです。

先述したように、不動産は固定資産で、すぐには現金化できません。従って、ある程度は、流動資産(現預金・外国為替・貴金属・株)を持っておくべきです。納税資金としてもさることながら、不動産経営を行っている場合には、家賃滞納、修理費、空室(敷金返却、リフォーム、空室フリーレント時家賃無し、広告費、家賃下落)等、急な出費が発生することがあるからです。

相続と祭祀継承は別物とされています。実家の仏壇・墓等の祭祀継承は、通常、実家の者が行いますが、皆、都会に出て、田舎の実家に身寄りがいなくなった場合、管理に困るものです。昨今では、仏壇のミニ化・仏壇じまい、墓の掃除代行・墓移転・墓じまい等も流行っているようですね。

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著者紹介

加藤 隆
加藤 隆

サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。

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