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『融資地獄』連載

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【第18回】本当に借金は「必ず返さなければならない」のか?

目次

返せない借金など放っておいてもいい! 普通の生活はできる!

今回は、ローンが返済不能になったあとの手続きについて見てみます。

返済が1回でも滞ると、銀行などの金融機関は事故の可能性を考えます。事故とは信用事故のことで、返済の遅延を1つの事故として記録し、事故が重なると貸しているお金を全額返済を求められます。ちなみに、信用に関する情報は金融機関全体で共有されます。いわゆるブラックリストと呼ばれるもので、ある銀行で返済を遅延すると、その情報が別の銀行でも共有され、融資審査などに影響します。

さて、返済日に入金がなかったと確認された場合、金融機関はどうなっているのか知るためにオーナーに連絡します。状況を確認し、返済不能だとわかれば、マニュアルに沿って債権回収の手続きに進みます。具体的には、裁判によって債権を確定し、担保になっている物件などを差し押さえ、換金可能な資産を押さえます。
 
ただし、金融機関は差し押さえのプロではありませんので、差し押さえなどに向けて進んでいく流れは緩やかです。返済が滞ってすぐに差し押さえとなるわけではなく、だいたい1年を超えたころから、ようやく物件の差し押さえの手続きが進んでいくようなイメージです。また、差し押さえの実務などについても、金融機関ではなく、金融機関が債権回収を行う債権回収会社などに依頼するケースがほとんどです。
 
差し押さえた物件は、最終的には競売で換金します。
 
ただし、競売にかけると相場よりも安い値段になるため、通常は少しでも高く買ってくれる業者を探し、売却しようと取り組みます。これを任意売却といいます。ローン残高が2億円、物件の時価が1.5億円、競売に出すと1億円になる場合に、1.6億円で買ってくれる業者がいれば、金融機関は6000万円ほど損失を減らすことができるわけです。
 
物件の処理方法が決まったら、次に返済不能となったオーナーの資産などを強制執行します。強制執行の対象となるのは、本人名義の預金や不動産などです。当人名義のものに限られますので、オーナーの配偶者の預金などは強制執行の対象にはなりません。
 
また、サラリーマン大家の場合は本業で稼いでいる給料が対象になりますが、差し押さえらえるのは手取り金額の25%までで、残りの金額(手取り金額の75%)が33万円を超えた場合は、超過分も対象になります。
 
テレビドラマなどを見ていると、強制執行の担当者が家に上がり込み、家電や家具などを次々と差し押さえていくようなシーンが出てきます。しかし、実際には家電や家具は換価価値がなく、差し押さえられないケースがほとんどです。つまり、預金、不動産、給料の差し押さえが済んだところで「これ以上お金になるものがない」と判断され、それ以上は深追いされないのです。この状態を、法律用語で「執行不能」と言います。執行不能になると「執行不能調書」が発行され、一連の差し押さえ業務は終わります。
 
意外に感じるかもしれませんが、仮に大きな負債が残っていたとしても、手元にあるものを差し出せば、それで終わりです。不動産などがなくなり、給料が減ることはありますが、普通に生活することは十分可能でしょう。破産しても債務者の権利は守られるため、あとは金融機関の手続きに任せて、その様子を見守るだけでもとくに問題はありません。

本当は怖くない「破産」――会社にバレずに部長に昇進!? 

強制執行は債務者となったオーナーが自己破産した時の手続きの1つです。破産はイメージが悪いですし、信用事故としてブラックリストにも乗りますのでなるべく知られたくないと思う人も多いことでしょう。
 
しかし、それは避けられません。破産は官報に掲載され、名前や住所も公表されるからです。逆に言えば、官報を見ない人にはほとんど知られる可能性がないということです。金融機関に勤めている人なら官報を見るかもしれませんが、それ以外の業界で働いている人が官報を見るケースは極めて稀だと思います。
 
また、仮に勤め先に破産したことが知られたとしても、それが理由でクビになったりすることはありません。実際、破産してから企業の取締役になった人もいますし、銀行員の中に破産した人もいます。
 
破産から5年間はクレジットカードが作れず、10年間はローンが組めませんので、その点では苦労があるかもしれません。しかし、日常生活の面から見れば特にハンディキャップを負うわけではなく、苦労もしないでしょう。それでも巷で破産が「犯罪」のように扱われるのは、金融機関にとって、そのほうが都合が良いからです。融資を受ける側が破産を恐れてくれれば、真面目に返そうと思いますし、破産を避けるためにあらゆる努力をしてくれます。つまり、破産は本当は怖くないことなのですが、怖いと思わせておくほうが良い人がいるため、怖くないという事実が広まらないということです。

借金をチャラにしてもらうための「あの手、この手、奥の手」

自己破産や、破産に伴う差し押さえや強制執行と関連して、もう1つ押さえておきたいことがあります。それは、破産に至らないようにするための手段がいくつかあるということです。本コラムの最後に、その方法と流れを簡単に列記します。

リスケジュール(リスケ)

リスケは、融資元である金融機関と交渉し、返済のタイミングや返済計画そのものを見直すことです。リスケをすることにより、債務者としては無理のない返済計画になり、破産を避けられる可能性が高まります。金融機関側も、債務者に破産されると損失が大きくなるケースがほとんどですので、債務者から金融機関にリスケをお願いするだけでなく、金融機関から債務者にリスケを提案することもあります。

任意整理

任意整理は、減免を狙う場合や担保に入っている不動産の処理を行う際に取る手段です。任意整理には元本を減らしたり利息を減らすといった方法があり、リスケのように返済期間を調整するだけでなく、負債額や担保などの調整も含みます。「返済不能になったので仕方がない」という前提で、現時点でできることを考え、債務者であるオーナーと債権者である金融機関がそれぞれ譲歩し、お互いが納得できる和解の方法を見つけます。

特定調停

任意整理は債権者と債務者の話し合いによって行うものですので、法律には縛られません。ただし、お金が絡む交渉ごとですので、うまくまとまらないこともあります。そのような時の仲介役となるのが特定調停です。任意整理の交渉はどこで行っても構いませんが、特定調停は簡易裁判所で行い、裁判官または調停委員が仲介役として同席します。

民事再生

交渉がまとまらない場合は、民事再生です。民事再生は、破産と一緒にまとめて法的整理とも呼びます。任意整理が関係者の意思で解決していく方法であるのに対して、法的整理は法律と裁判所が加わり、法的に債権を大幅に減らすといった措置をとります。特定調停における裁判所の役目が「債権を減らしてはいかがですか」という仲介や提案である一方、法的整理では法の執行人として交渉成立に関わります。

破産

ここまでの方法を試し、どれもうまくいかなかった場合は、最終的に自己破産です。自己破産すると、債務返済の義務がなくなります。民事再生は、再生計画にのっとって負債を返済していきますが、破産した場合はその必要がありません。手持ちの資産は裁判所によって管理され、破産手続の費用となり、残った分は債権者に分配されます。自己破産を申告し、公的な第三者が「この申立人は債務を返済できない状態です」と確認すれば、破産手続きは終わりです。前述の通り、クレジットカードを作ったりローンを組んだりする際のハンディキャップはありますが、それ以外の点では特に不自由はなく、経済的、精神的な重荷をリセットし、再出発することができます。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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