Column

不動産投資の最新動向

253 view

「情報弱者が損する業界の構造を変えたい」特別非営利活動法人日本住宅性能検査協会の代表インタビュー(後半)

目次

日本住宅性能検査協会は、サブリース契約やシェアハウス問題に起因するトラブルの相談を受け、ADRによる解決を支援している。その内容について理事長の大谷昭二さんに話を伺った。

不動産投資塾新聞社インタビュー(後編)

日本住宅性能検査協会は、住宅の貸し借りや売買に関するさまざまな相談を受け付けています。物件の貸し手であるオーナーからはどんな相談があるのですか。

大谷 サブリース契約に関するものや、サブリース業者が建てた物件の質に関するものがあります。具体的には、安普請の物件で困っているといった相談や、そのような物件が壊れたときの補修費用を誰が負担するかといった相談です。

オーナー側からの相談で印象に残っているものはありますか。

大谷 たくさんあります。ある人は「節税対策になる」と言われて赤字物件を買うことになり、困っていましたし、いわゆるデート商法のような方法で投資物件を割高な価格で買ってしまったオーナーもいました。サブリース関連では、東日本大震災によって地盤が液状化し、サブリース契約を結んでいるアパートが壊れたという相談がありました。近隣でもそれなりに家が被害を受けていたのですが、大手のサブリース業者が建てたその物件は壊れ方がひどく、大掛かりな修復が必要になったのです。その時点で、まず建物の施工方法などに疑問符がつくわけですが、トラブルはさらに続きます。修復工事についてサブリース会社に問い合わせたところ、自社で直すので8500万円かかるという回答が来ました。

適正な価格だったのですか。

大谷 いいえ、法外な価格でした。地元の業者に見積もってもらった1500万円という金額が出たのです。しかし、そのことを伝えてもサブリース業者は引かず、逆に自分たちに工事をさせないのならサブリース契約解除するという一種の脅しのようなことも言われたそうです。

サブリースは家賃収入を安定させるためオーナーにとっては安心材料です。そこを逆手にとったのですね。

大谷 そうです。サブリースの仕組みが必ずしも悪いわけではなく、オーナー側の不勉強にも原因はあるのですが、サブリースなら安心と思い込んでいる人もいますし、業者側がそう思わせている部分もあります。結果、30年家賃保証という契約に安易に飛びついてしまったり、リスクが大きい多額のローンを組んでしまったりするのです。

サブリース契約からローンや融資といった金融分野の問題につながっていく流れは、一連のサブリース問題と全く同じ構図ですね。

大谷 全く同じです。その結果として誰が困るかというと、情報弱者であるオーナーが困ることがほとんどなのです。例えば、ローンを組む際に金融機関から担保不足と言われれば、共同担保で自宅を担保に入れてしまいます。相談者の中には、自分の子供を連帯保証人につけてしまった人もいました。自己資金がなくても大丈夫、オーバーローンで借りた方が得などと言われ、必要以上のお金を借りてしまう人もいます。そのような人が、サブリース会社が潰れたり逃げた時などに不利益を被ることになるのです。

日本住宅性能検査協会では、サブリース関連のレオパレス21と、スルガ銀行の融資を含むシェアハウス投資について個別の相談窓口を設けています。これもオーナー向けの支援なのですね。

大谷 はい。オーナーがローンを返済できなくなれば、期限の利益が喪失し、残金を一括返済することになります。自宅を担保に入れていれば自宅がなくなり、子供を連帯保証人にしていれば子供が借金を肩代わりするか、できなければブラックリストに載ってしまいます。そういう状況に追い込まれている人から相談を受けて、主にADR(裁判外紛争解決手続)でのトラブル解決を目指します。

ADRは、紛争調停機関で、裁判と比べて短期、低コストでのトラブル解決が見込めます。オーナーはどのような解決を求めているのでしょうか。

大谷 金利の減免、返済計画のリスケジュール、元本カットなどです。例えば、サブリース業者の施工不良や家賃減額請求などによってローン返済が厳しくなったオーナーがADRを通じ、融資元である金融機関に融資条件の見直しなどを実施してもらいます。ただし、そのような話し合いに持っていくためには根拠が必要ですので、我々が物件の運用状況やレントロールなどを検証し、収益性を予測しながら調査報告書を作ります。その報告書を持って金融機関などと話し合いを行うのが基本的な流れです。

トラブル解決に向けた現実的な支援も行いながら、一方では業界全体の健全化につながる取り組みも重要ですね。

大谷 そうですね。今回の一連の問題を経て、金融機関の融資基準は以前より厳しくなりました。結果としてサブリースと融資をめぐる環境は健全化しましたが、問題は他にもあります。不動産に関わる相談がなくなるのが理想ですが、現実的に考えてゼロにするのは難しいでしょう。ニッチもサッチもいかなくなった人が「最後の砦」として頼ることができるセーフティネットとして、我々のようなNPOはどの時代でも必要だと思っています。

オーナーの中にはNPO法人のようなセーフティネットがあることを知らない人もいるかもしれません。さらなる認知度の向上を期待しています。

大谷 ありがとうございます。我々の協会には専門知識を持つメンバーが多く、業界のおかしな点を変えていこうと取り組んでいる志が高いメンバーもたくさんいます。業界内や行政とのルートをさらに強くしながら、彼らとともに業界のさらなる健全化を目指します。

著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

関連記事