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石川貴康の超合理的不動産投資術

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不動産投資のリスクに備えるには? 不測の事態を考える

目次

不動産投資にはリスクがつきものです。リスクとは、よく思われているような「危険」ではありません。「不確実性」ということです。「不確実性」とは、想定外のことが起きる可能性を指します。

不動産投資のリスクはさまざまです。以下に挙げてみましょう。

① 空室リスク
② 家賃下落リスク
③ 滞納リスク
④ 修繕リスク
⑤ 損害・災害リスク
⑥ 事故物件化リスク
⑦ 税金リスク

以上でしょうか。

それぞれにリスク対応の方法があります。この7つに対してできる対策は、自分の努力でリスク対応をする方法、制度化されたリスク対応を利用する方法、そしてその複合になります。

大家になると、この7つのリスクには常に直面します。対応策を講じておかないと、大変な目に遭います。「備えあれば憂いなし」ということで、一つずつ見ていきましょう。

空室リスクは、大家の努力+パートナーの力を最大限生かす

不動産投資にとって最大の恐怖、それは空室リスクです。

満室経営を志したいところですが、そう上手くいかないときもあります。空室リスクを減らすには、大家の努力とパートナーである不動産業者との付き合いがカギになります。

空室はなぜ起きるのかというと、入居者が減るからです。
では、入居者がなぜ減るのかというと、物件に魅力がなくなるためです。

例えば、近隣に新築アパートができたり、競合が家賃を下げたりすれば、競争力が低下します。物件の競争力を上げるには、常に賃貸で求められる設備や清潔さを維持しておかなければなりません。

もちろん、そのためには資金が必要なので、すべての最新設備がつけられる訳ではありませんが、今では当たり前の設備は頑張ってつけざるを得ません。追加投資が必要なのです。

必要な設備を調べ、投資対効果を図り、資金を準備して設備投資をします。
大金を使わずとも、クロスの模様を選ぶ、ウォシュレットをつける、TVモニターフォンをつけるといった比較的低額でできる設備投資もあります。リフォームは単なる原状回復だけでなく、常に最新化を心がけましょう。

もちろん、物件を清潔に保つことも必要です。
設備だけでなく、清潔で整理された物件は魅力的です。ごみが散らかっていたり、自転車が放置されていたりしたら、最悪の印象になります。清掃が行き届き、整理された環境は管理レベルが高いという印象を持ってもらえます。

また、不動産業者との連携も密にします。不動産業者が儲かるようにすることが重要です。不動産業者が儲かれば大家も儲かるのです。

例えば広告料。広告料は悪と思う人も多いかもしれませんが、お互い商売です。そもそも不動産は装置産業で、空室で失った収入はのちにどんなに頑張っても回収できません。
であるならば、「損して得とれ」ではありませんが、稼働を優先させて入居を促進したほうが機会損失をしなくてすみます。

できるだけ、不動産業者の要望は聞きましょう。ただし、鵜呑みにするのではなく、費用対効果を考えます。広告料も常に設定するのではなく、非繁忙期に設定するなど、メリハリの利いた対応が必要です。

こうした努力とはよそに、例えば近隣の環境変化で空室になることがあります。例えば、工場の撤退、大学の撤退、商標施設の撤退などです。こうしたリスクは顕在化したあとではどうにもできません。
購入前のリスクを見極め、危ない場合にはその地域での投資をあきらめることも重要です。

家賃下落リスクは空室リスクと同じように、設備投資で乗り切る

家賃の価格がしだいに減っていくことは致し方ありません。高度経済成長期と違ってインフレでもありませんし、売手市場でもありませんから、家賃を上げられる環境ではありません。よほどのことがない限り、家賃は下がっていきます。
こればっかりは、トレンドでもあり、なかなか努力が難しいところです。

とはいえ、何もしないと家賃下落スピードが大きくなります。家賃下落リスクは空室リスクと同じように対応します。経年劣化は仕方ないので、経年劣化による家賃下落を減らすために、設備投資は積極的に行います。 
 
とはいえ、家賃下落を避けるには、入居者に長く住んでもらうことがある意味ではリスクを低減することにもなります。新規の方はどうしても今の家賃実勢で入居を申し込んできます。一方、長く住んでいる入居者は、以前の家賃で住んでくれているのです。家賃維持のために、できるだけ長く住んでももらえるように努力しましょう。

たとえば、私の練馬区の物件では、現在6万円くらいの家賃に対し、10年以上住んでいる方は7万円の家賃を支払ってくれていました。これは大きいです。
私は以前、長く住んでくれている方たちに、お礼として商品券を配ったりしたこともあります。どこまで意味があったのかは不明ですが、それほど長く住んでくれるというのは大家にとってはメリットが大きいのです。

もちろん、実勢を理解して、更新時に家賃交渉が入ることもあります。そうした要望はもちろん相談に乗ります。長く住んで家賃をずっと支払ってくれたお客様でもあるし、お礼もしたい。また、拒否して退去されると、リフォーム、新規募集と大変です。ですから、できるだけ長く住んでほしいのです。

滞納リスクは、起きたら即対応、さらに入居前に対策しておくべし

滞納は大きな痛手になります。すぐ回収できればいいのですが、長くなるほど入居者も家賃が支払えなくなります。滞納が起きたら、様子見せずに、即督促すべきです。
オーナーチェンジ物件だと、家賃支払いにルーズな入居者がいることがあります。こうした人を放っておくと、そのうち家賃を支払わなくなる可能性があるので、すぐ対応しなければなりません。

滞納は起きた後だと対応が大変になります。精神衛生上もよくありません。そこで、入居前に保障会社を使って審査し、保障会社を通った人に入居してもらいます。

保障会社を経由すれば、もし滞納があった場合、保障会社が弁済してくれます。3か月以上の滞納は退去を含め対応してくれます。私は、保障会社の存在によって、どれほど滞納リスクが減らせたでしょう。本当に助かっています。

保障会社に入っていないときは、保証人をつけていましたが、実際何度か滞納があった経験では、保証人はほぼ役に立ちませんでした。滞納の弁済に応じてくれる保証人は少なく、大家が泣き寝入りになるといった感じでした。不動産管理会社に協力してもらって、粘り強い督促と退去依頼をしますが、長期間家賃が入らないまま占有され、回収ができたためしがなく、大きな痛手を負うことが何回もありました。

保障会社は迅速に家賃を弁済してくれますし、悪質な滞納の退去を取り仕切ってくれます。
入居者保護が強い日本ですが、最近大家は経済的に弱っています。大家に負担を強いては、優良な賃貸物件が出てこなくなる可能性もあります。賃貸借は契約行為ですから、契約を破るのはルール違反です。

家賃滞納リスクを低減するには、保障会社の活用は必須ともいえるでしょう。もちろん、かつてはその保障会社が破たんしたこともありましたので、会社の信用度チェックも必須ですね。

修繕リスクは定期積立金を積むことで資金を準備する

修繕はリスクというよりも自明のことなので、リスクとは呼べないかもしれません。不動産経営をしていると、当然修繕が必要になります。修繕に対応するには、修繕用の資金を準備しておくことが必要です。

私は今まで修繕費用はすべて家賃で賄っていましたが、大規模修繕に向けて1棟ごとに修繕用の積み立てを行っています。外壁塗装や屋根の補修は大きなお金がかかります。もちろん、修繕をローンで乗り切る手段もありますが、急な大規模修繕のリスクもありますので、資金はキープしたほうが良いと思います。

以前私の物件も東日本大震災に被災し、その修繕を自費で行う必要に迫られたことがありました。東京の物件は地震保険に入っていたのですが、茨城の物件は入っていなかったのです。うかつでした。
今ではすべての物件で地震保険に入っていますが、地震以外で急な修繕が必要になることもあります。そのためには、資金を積み立てておくことが重要です。

損害・災害リスクは保険で対処、地震保険は必須、水災・風災は状況次第

先にも書きましたが、不動産投資をするにあたっては、損害保険と地震保険は必須です。損害保険は火災保険とセットになっていて、火事、事故、災害等に対応してくれます。地震保険は損害保険の特約的な保険にあたりますが、先に書いた通り必須です。日本は地震大国なのですから。

私の20年弱の不動産投資経験で、損害保険に何度助けられたかわかりません。車が突っ込んだ、屋根の破損、アンテナの破損と近隣への損害、水漏れ、などなど枚挙にいとまがありません。こうした費用を全額自費で払っていたら大変なことになったでしょう。

保険は、欲しいタイミングでは加入できす、ずっと以前からリスクを見込んで加入する必要があります。火災や地震を100%は避けられませんから、不動産投資をするなら保険は必ず加入しましょう。

とはいっても、すべての特約をつける必要はありません。例えば、水災。私の物件では、高台の物件は水災の特約には入っていません。

また、風災といった大風、竜巻などの害もケースバイケースです。私は、一度だけ風災の特約に助けられましたが、後にも先にもこの1回でした。アンテナが飛んで隣家の屋根を壊したときです。
しかし、この1回なので、今は特約をつけていません。風災は、つけたほうがいいのか、いらないのか、なんとも言えないといったところです。

事故物件化リスクがあるからといって、私は高齢者の入居は断らない

リスクの一つに事故物件化のリスクがあります。事故物件とは賃貸している物件で死亡事故や犯罪が起き、物件価値を著しく毀損してしまうことです。

私の物件でもかつて死亡事故がありました。一人暮らしの若い方が衰弱死していたのです。亡くなった方はお気の毒でした。
事故物件化すると通常家賃が取れず、清掃やリフォームなどで大きな金額がかかります。ご供養もします。そして、家賃が半分以下になります。

こうした費用は保証人に損害賠償できるらしいですが、気の毒でとてもそんなことはとてもできません。すべて大家が負担することになるでしょう。私はそうしました。

事故物件化を避けるために、高齢者の入居を避ける大家も多いのですが、私はそうしません。若くても、高齢であってもリスクはあります。リスク低減のためにある層を排除するのは、私にはできません。ですから、事故物件化はしかたないと受け入れるしかありません。

ちなみに160戸を超える私の物件のうち、事故物件化したのは2戸だけです。事故物件になると入居がなくなるかというとそんなこともなく、逆に安い家賃を求めて事故物件に平気で済む方もいます。
家賃は大幅に減りますが、人が生きている限りは起きうることです。そういう意味でも、物件が少ないと打撃があるので、複数物件を持つことで、リスク対応となるのかもしれません。

日本は重税国家、税金リスクには資金を貯めておくしかない

不動産投資の最後のリスクとして税金に触れましょう。税金はまったなしで取られるため、支払わないわけにはいきません。事前にある程度計算できるので、リスクではないかもしれません。

それでも、利益が出すぎて税金支払いが大変になることもありますし、税法の変更で資金繰りに影響が出たりします。
2019年は消費税増税が予定されています。消費税は、大家にとっては痛い税金です。個人の入居者からは消費税は取れないのですが、反面経費支払い分は消費税の支払いが発生します。

消費税は、預かりと仮払いの相殺になるのですが、個人に貸している率の高い大家は、消費税は持ち出しなのです。消費税が増税されると、より持ち出し金額が増えるのです。
また、所得税、法人税等も利益が出れば金額が大きくなり大変です。固定資産税も自治体によっては値上げも可能です。不動産投資は特に税金の支払いが大きくなり、納税のための資金繰りや積み立てが必要なほどです。そういった意味で、不動産投資家はいつもキャッシュ不足で、大変なのですね。税負担に対する重税感は大きなものです。

不動産投資は、常にキャッシュフローに気をつけないと大変です。まったく贅沢できないのです。こんなことを言うと夢も希望もありませんかね。
でも、リスクに対して備えさえあれば、不動産投資は有効な投資です。株やFXと違って、リスクを読むことができ、長期的な対応も可能です。長い時間をかけてゆっくりとリッチになるには、不動産は良い投資対象なのだと思います。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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