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星野陽子の金持ち母さん投資術

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インバウンドと地価上昇の関係から、今後の投資を考える

目次

国土交通省官公庁でも外国人旅行客の増加を掲げている昨今、日本ではインバウンド(訪日外国人旅行客)が訪れる観光地の地価が上昇しています。都会への不動産投資だけでなく、地方の観光スポットにフォーカスし、不動産投資ビジネスの裾野を広げていくと思わぬチャンスが転がっているかもしれません。

地価の上昇は都市部と観光地に集中

先日、数年ぶりに広島に行きました。広島駅は、以前の古い駅ビルではなく新しい駅ビルができていて、観光客でとてもにぎわっていました。待っている人たちで長い列ができている飲食店がいくつもあり、駅の周辺にも高層のきれいなビルがたくさんあることに驚きました。

このように、にぎわいを感じる場所は地価も上がるものです。気になって調べてみると、やはり広島駅周辺の地価は上がっていました。

3月19日、国土交通省から2019年1月1月時点の公示地価が発表されました。
日本経済新聞によると、商業・工業・住宅の全用途(全国)で1.2%のプラスと4年連続で上昇し、1991年のピーク時の4割にまで戻りました。

商業地域では、札幌、仙台、広島、福岡の4市の平均上昇率が9.4%に達しました。訪日外国人観光客が訪れる地域の上昇率が高く、都市部と観光地に回復の動きが集中していて、全国では3割の地点で依然として下落が続いていて、二極化が進んでいます。

上昇率の1位から3位は以下の通りです。

商業地
1 北海道虻田郡倶知安町南1条1丁目40番1外 58.8%
2 大阪市中央区日本橋1丁目16番4外 44.4%
3 大阪市北区茶屋町20番17 44.2%

住宅地
1 北海道虻田郡俱知安町字山田83番29 50%
2 北海道虻田郡俱知安町字北7条西4丁目1番33 32.4%
3 那覇市おもろまち3丁目6番11 30%

商業地で上昇率第1位の倶知安(くっちゃん)は、ニセコ観光圏にあり、ニセコスキー場は外国人スキー客に人気で、外国人向けの施設がたくさんできています。第2位の大阪市中央区日本橋には、訪日外国人観光客が多い黒門市場があります。東京圏の商業地は4.7%上昇し、特に訪日客が増えている浅草がある台東区の上昇率は高く、11%です。やはり、インバウンド(訪日外国人観光客)需要のあるところは上昇率が顕著です。

今後、地価は上がり続けるのか?

一方、マンションなどの市況では、頭打ちを感じます。「オリンピック後には地価は下落する」「オリンピックまで地価は持たずに下落する」という予測が巷にあふれ、投資家や消費者が高値に警戒を強めている影響と思われます。

地価が上がったり下がったりするのは、金利や銀行の融資などのさまざまな要因が絡んでおり、投資家としては予測する力が必要です。

予測することは難しいのですが、ゲームのように楽しい面もあるように感じています。

ニセコが外国人に人気であることは数年前に知っていたので、物件か土地を買っていたらよかったと今になって思います。

以前自宅があった東京都の多摩地域にある立川市も、上昇率が5%を超えました。ずっと所有しようかと思っていたのですが、結局面倒になり売却してしまいました。
けれども、地価は上がるのではないかと予測しており、現在の上昇率を見ると、その予想が当たっていたことが分かります。ガツガツとお金を増やしたいわけではないのですが、投資家の端くれとしては、予想が当たるとうれしくなります。

一部の東京都内のマンションや戸建ては、私からすると高額で頭打ちである感じがしますが、外国人に人気の土地は、今後もインバウンド需要の関係で上昇を続ける気がします。

インバウンドの目線から広がる、新しい魅力と価値

経営コンサルタントの大前研一氏は、「50代からの『稼ぐ力』」という本の中で、「外国人観光客が訪れるのは、すでに有名観光スポットだけではなくなっている」と書き、「外国人に人気の観光スポットランキング」(トリップアドバイザー)を紹介しています。
トリップアドバイザーのサイトはこちら

大前氏は、「インバウンドの目線で日本の各地を回ると、まだまだ外国人に訴求できそうなスポットは多い」といいます。ランクインしなかった場所でも、外国人にとって魅力的な場所はたくさんあります。

私はかつて外国人と結婚しており、現在でも日常的に外国人との交流があるため「インバウンドの目線」というのがある程度分かります。

オートバイで旅行し、見聞を広めている大前氏。東北地方をオートバイで2,750キロも巡ったという大前氏は、東北の潜在能力に注目しています。

「東北は北海道よりもはるかに潜在能力が高く、きっかけがあれば東北は今後インバウンドの主たる目的地になり得るのではないか。だとすれば、東北に点在している空き家が価値を持ち始めると思う」と言っています。

民泊用の家や、「地方の空き家も分散ホテルという方法で利用できる」というコラムに書いています。もし本当に分散ホテルができて、観光で活性化し、地方が元気になったらいいですね。

インバウンドを重要視する理由

私は現在東京都に住んでいますが、新宿や渋谷などの都市だけでなく、住宅地にも外国人旅行者が増えています。訪日した外国人旅行者数は、2007年には約835万人でしたが、2018年には3,000万人を超えたと聞いたときは、すんなりと納得しました。

日本を訪れる外国人旅行者数はさらに増えることでしょう。なぜなら国土交通省観光庁は観光ビジョンとして、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに、3つの視点で10の改革を用意しているからです。外国人旅行者数の目標は、2020年には4,000万人、2030年には6,000万人としています。(国土交通省観光庁ホームページ)

株の格言に「政策に売りなし」というものがあります。

国の政策に関連した業種や銘柄は値上がりしやすいという意味ですが、不動産にも当てはまるのではないでしょうか。不動産投資ビジネスに国土交通省観光庁が掲げる目標=外国人旅行者数を生かせるということです。

例えば、宿泊施設。現在、ホテルや民泊など宿泊施設は現状で足りておらず、さらに外国人旅行者数が増えるのであれば、インバウンド向けにビジネスを発展させる余地があるといえるのではないでしょうか。

前出の大前氏の本では、インバウンドは“モノ消費”から“コト消費”にシフトしてるとしています。

コト消費で外国人旅行者に人気の観光地では、宿泊施設が圧倒的に不足しているので、民泊ビジネスを勧めています。

ここれまでも観光地だった定番の有名スポットではなく、現在コト消費という価値の視点で人気を集めている土地には、まだ低い価格の空き家などがありそうです。

「東京、大阪、京都でホテルがないとなれば、電車で1時間かかるロケーションでも民泊の需要はある」と大前氏の本には書かれていますが、そのようなロケーションであれば、それほど価格の高くない物件もあるのではないでしょうか。

情報通信総合研究所の試算によれば、2016年の民泊の取引金額は6,783億円に達しており、2020年代の潜在市場規模は2倍の1兆3,121億円になるというデータもあるので、やはり民泊ビジネスにはチャンスがあるかと思います。

投資家として、このインバウンド需要をどう生かしていくべきか

今後物件を購入するならば、インバウンド向けの民泊としても使うことができるようなものがほしいと思っています。

住宅宿泊事業法(民泊新法)には、住宅地では年間180日までしか営業ができないというルール(180日ルール)があるので、1年のうちの半分は営業し、残りの約180日はマンスリーで契約する賃貸物件にしようと考えています。

もしくは旅館業法に基づく「簡易宿所営業」の許可を取得して、簡易宿所として運営したいと思いますが、許可を取るには、物件の用途地域が限られてきます。簡易宿所をしている大家さんの友人知人が増えてきたので、いずれ詳しく書きます。

インバウンドには、不動産投資家としての視点から見ても、たくさんのビジネスチャンスがあります。どの業種でもそうですが、ビジネスにおいては語学力があると、さらに強いと思います。インバンドを前提に考えれば、今後は投資家も英語だけではなく、中国語を身に付けておくとさらにチャンスが増えるかもしれません。

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著者紹介

星野 陽子
星野 陽子

不動産投資家。著者。特許翻訳者。
東京都出身。外資系メーカー、シティバンク勤務を経て、イスラエル国籍のユダヤ人と結婚。子ども二人に恵まれるも離婚。フリーランスとして在宅で翻訳の仕事をしながら、シングルマザーとして子ども達を育てた。東欧からの移民の子で、14歳から働き、資産ゼロから財産を築いたユダヤ人の義父からは不動産投資を学び、投資物件(6億円)などの資産を築いた。著書に『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』『ユダヤ人大富豪に学ぶ お金持ちの習慣』『貧困OLから資産6億をつかんだ金持ち母さんの方法』がある。オンラインサロン「マネサロ」主宰。 オフィシャルブログも定期更新中。

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