星野陽子の金持ち母さん投資術
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2018年7月19日(木)
不動産投資に出口戦略は不可欠だけど相続も一つの選択肢
「遠足はお家に帰るまでが遠足です」と小学生のときに言われた人たちもいるのではないでしょうか。不動産投資も、実際に売却しなくてよいのですが、売却などの出口までを考えるのが不動産投資です。今回は「相続」を出口とした戦略の考え方をお伝えいたします。
不動産投資において重要な出口戦略
出口としては、建物が古くなったら売却をする、建て替えてアパート経営を続ける、建て替えて売却をする、建物を壊して駐車場などにする、建物を壊して土地を売却するなどが考えられます。また法人で物件を持ち不動産賃貸業をしていた場合、法人ごと売却するというのも一つの選択肢でしょう。子どもなど相続人に相続させるのであれば、その対策も考えておきます。そして出口まで見て、その投資が本当に良いのかどうかを考えます。
高利回り物件への投資はよいのか
例えば、「どのような物件を選ぶのがいいのでしょうか」と聞く人に、「地方の高利回りの物件がいいですよ」と答える人がいます。
もちろん、表面利回りなどの利回りは高い方が良いに決まっています。しかしながら実際のところは、需要と供給の関係があり、高利回りにはそれなりの理由があります。たとえば、金融機関はリスクが高い貸し出し先には金利を高くしたりします。同じように、高い利回りにはリスクが織り込まれている場合がほとんどです。
例に出した「地方高利回りの物件」への投資ですが、私はその投資手法を悪いと言っているわけではありません。実際に高利回りで家賃を得た後、物件の売却をして、トータルで利益をきちんと出している人たちを知っています。さらにはキャピタルゲインを得ている人たちもいます。
要は売却などの出口まできちんと考えて投資をすればいいのです。
けれども「高利回り」ばかりに意識がいって出口まで考えていないということであれば、それはとても危険です。
例えば、都心に住んでいる人が、地方高利回り物件を所有して、うまく賃貸経営をしているという話の本や記事を読むと、人口が少なくても、空室率が高くても、エリアを選べば大丈夫だとか、地主の高齢の大家さん達は努力をしないから空室率が高いだけで、空室対策など手を打てば大丈夫だとか、そういう気持ちになってしまいます。
それを信じて物件を購入し空室が埋まらずに苦しんでいる人たちや、諦めて損切りした人たちもいます。エリアの選定がよくなかったのかもしれませんし、空室対策が不十分だったのかもしれません。私が知っている限り、人口が少なく、空室率が高い地方の高利回りの物件で満室にできている人たちはかなり優秀で努力をしています。私では無理だろうと思うので、そういう場所に不動産を購入することはしません。もし私が地方出身または地方の大学で勉強したり会社勤めをしたりしてエリアを熟知していて、いざという時になにかを頼める人がいるのでしたら、話は別ですが……。
都心の物件であれば利回りは相対的に低いです。ただ都心は人口減少がそれほどなく、不動産価格は下がりにくいので、1億円で買った物件が将来1億円で売れれば、保有していた間に得たキャッシュフローや残債の減った部分を得ることができます。さらに価格が高騰して2億円になっていれば、1億円のキャピタルゲインを得ることができます(ここでは税金などは無視しています)。
人口減少が激しく、価格が下落傾向の地方高利回り物件を1億円で買ったのに、売る時には5千万円になっていたとしたら、保有期間や利回りなどによりますが、収支がとんとんになってしまうかもしれませんし、むしろ投資をしなければよかったというマイナスの収支になるかもしれません。最悪の場合、そもそも売れないという事態に陥ることもあります。出口を考えていなかったために起きる事態と言えるでしょう。
売却を断られる可能性も考えてみる
最近、「住みたい街」として人気の神奈川県の横浜辺りで、相続した家と土地の売却を大手の不動産会社に断られたという記事を読みました。
少し前に不動産投資家たちから横浜でも入居付けがすごくむずかしくなったと聞いたので(中には物件を売ったという人もいらしたので)、横浜辺りでも厳しい状況なのかと驚いたのですが、売却を断られたというこの記事には衝撃を受けました。
野村総合研究所の予測では、日本の住宅戸数全体に占める空き家は2033年には30パーセントを超えます。地方だけでなく、都市部、さらにいうと23区内でもエリアによっては安心できなくなるかもしれません。
私は「物件を売れないリスク」については、投資用物件を買う前から考慮していました。正確に言うと「物件がなかなか売れないリスク」つまり「物件の流動性が低い」ということを認識していたのですが、売却を断られるということは都内の物件については考えてみたこともありませんでした。
しかしながら、横浜ほどの人気エリアでも売却が難しくなったという現状が訪れたため、今後は都内でも売却を断られる可能性についてもきちんと考えなくてはいけないと思いました。築古の物件や、人気のあまりないエリアの物件についてはなおさらです。
売却は本当に必要か
「建物が古くなると大規模修繕が必要になったり、エレベーターの交換などが必要になったりして、多額の費用がかかることもあるので、売却して、新しい物件に組み替えたらいい」「インカムゲインを取りながら、キャピタルゲインも狙ったらいい」などというアドバイスをよくいただきます。
出口戦略は不動産投資に必要不可欠ですが、売却に関しては、私は、状況を見てトータルで考えたいと思っています。というか、最近では売却かホールドか決めかねるようになりました。
きちんと経営をしていれば、修繕費用も積み立ててあるはずです。うまく経営できているものを手放すのはどうかという気持ちが今は強いです。
長く不動産賃貸業をしていて成功している人たちが「ローンの支払いが終わった後が一番おいしい」と言っているのを聞いたりするからです。ニューヨークのマンハッタンの物件をいくつか見に行ったことがありますが、築100年ぐらいの古い物件でもメンテナンスをして使われています。
入居者が入れかわるたびにドアのペンキを塗り直しているため、とてもぶ厚くなっていて驚いたことがあります。ドアのペンキの厚さは、それだけ長い間、何度も入居者が入った証しなのです。
相続も選択肢
私は法人で物件を購入しているのですが、必ずしも売却のみを出口戦略とせず、相続も選択肢として準備をしていて、相続税対策として、子どもたちも株主にしています。
相続で物件を突然引き継いだ二代目大家さんたちで、アパート経営に困っている人たちを知っているので、私は子どもたちを幼い頃から、アパート経営に巻き込んでいます。トラブルがあればその話をしたり、一緒に解決策を考えたりしました。
ほとんどの入居者さんとのトラブルは管理会社がやってくれるのですが、管理会社の手に負えず、最終的に私が直接入居者さんに話をしたことが二度ほどありました。素行が悪く他の入居者さん達に多大な迷惑をかけ、しょっちゅう警察を呼ばれている男性に、夜中に私が話をしに行ったときには、内心ドキドキしていましたが、うまく交渉をすることができました。
子どもたちは、そんな場面も見ていました(本当は一人で行くと言ったのですが、男の子たちなので、いざという時には私を守るつもりでついてきたのです)。
税理士さんが来るときも、部屋にいてもらうようにしていました。話はわからないと思ったのですが、税務もやるのだということがわかればいいという気持ちでした。子どもたちは高校生ぐらいになると、率先して電球を交換してくれたり、掃除を一緒にやってくれたりするようになりました。細かい経理や管理のことはまだ教えてないのですが、突然相続するようなことがあっても、大丈夫なのではないかと思っています。
私自身、売却したものは現金買いをしたワンルームマンション(区分)と自宅だけなので、売却という出口の選択肢については、もっと勉強しないといけないと思っています。
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著者紹介
星野 陽子星野 陽子
不動産投資家。著者。特許翻訳者。
東京都出身。外資系メーカー、シティバンク勤務を経て、イスラエル国籍のユダヤ人と結婚。子ども二人に恵まれるも離婚。フリーランスとして在宅で翻訳の仕事をしながら、シングルマザーとして子ども達を育てた。東欧からの移民の子で、14歳から働き、資産ゼロから財産を築いたユダヤ人の義父からは不動産投資を学び、投資物件(6億円)などの資産を築いた。著書に『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』『ユダヤ人大富豪に学ぶ お金持ちの習慣』『貧困OLから資産6億をつかんだ金持ち母さんの方法』がある。オンラインサロン「マネサロ」主宰。 オフィシャルブログも定期更新中。