Column

星野陽子の金持ち母さん投資術

2,188 view

不動産投資における集中と分散

目次

不動産投資における、集中投資と分散投資について、それぞれのメリットやリスクを考えます。また、不動産投資において分散させることや、実際の自分が経験したケースも一緒にご紹介します。

エリア集中不動産投資はキケン?

ある巨大地震の被災地で、地震前に集中的にそのエリアへ不動産投資をしていた知人がいます。その後大きな地震があって被災地の方々がたくさん亡くなり、被災された人が多くいました。世界が注目するような大きな問題も起こり、私はショック状態でした。

しばらしくて自分の気持ちが落ち着いてから、その土地で「集中不動産投資」をしていた知人のことを思い出し、「自分が彼の立場だったらどうなっているのだろう」と他人事には思えずにいました。

ずっと気になっていたのですが、「本当に大変な事態になっていたらどうしよう。役に立てるかどうかわからない。そんなに親しくないから興味本位で連絡してきたと思われたくないし……」と躊躇して連絡をしませんでした。ところがある時、その人の方から私に連絡があったのです!

用件は、私と取引がある銀行の融資担当者を紹介してほしいということでした。
「さらに物件を取得しようとしているのなら、ひどい状況になっていないのでは」
と思い、やっと状況を聞くことができました。物件の破損に関しては保険がおりたし、入居に関しては地震の直後は人がいなくなったが、その後には復興バブルのようなものがあったとのことです。

その人は「少しエリアの分散をしようと思っている。他のエリアの物件の購入を考えているので、融資をしてくれる銀行を探している」と言っていました。詳細までは聞いていませんが、ある程度のお金の余裕を持っていて、直後の混乱する期間をしのげれば、エリアの集中投資をしていたとしても巨大地震もそれほど恐れることはないのかなと思いました。

集中投資を勧める人たち

私はジム・ロジャーズなど著名投資家のセミナーに時々行っていますが、一流投資家のほとんどは「集中投資がいい!」と言います。それはどうしてかというと、彼らは「勝てる!」と思えるまで、普通の人には想像のできないほどのたくさんの時間とお金と頭脳を投入しているからではないでしょうか。

私を含め90%以上の人は、その域に達するほどの勉強をしたり、経験を積んだりしていないので、集中投資をするとリスクも集中してしまうのではないかと考えると思います。

あらためて、不動産投資における「集中」と「分散」について考えてみました。

分散投資のメリット

資産運用では、「卵はひとつの籠に盛るな」という格言があります。卵をひとつの籠に盛ると、籠を落としたら卵が全部割れてしまう。つまり集中投資は何かあったら危険ですよ、という意味です。

そしてほとんどの金融機関やFPなどは、リスクを分散でき、安定的な収益を目指すことができる「分散投資」を勧めています。

一口に分散といっても、分散させるものにもいろいろな種類があります。不動産投資における分散を説明します。

不動産投資において分散させる項目

・構造
建物の構造としては鉄筋コンクリート造(RC)、鉄骨造り(S)、木造など、いろいろな構造の物件を持つ。

・規模
一棟の物件(アパート、マンション、規模も小さいものから大きいものまで)、区分マンション、戸建てなど、規模の違う物件を持つ。

・エリア
いろいろな場所に物件を持つ。国内だけでなく、海外も含む。海外の物件を買う場合、通貨の分散もできる。

・駅からの距離
駅に近い物件と、駅から遠い物件を持つ。

・用途
居住用(レジ)、オフィス、工場などの不動産を持つ。

・現物とペーパー
現物不動産とREITなどのペーパーアセットを持つ。

・時間
一度に買わずに時間差で買う、REITなどをドルコスト平均法で買う、など。

・管理会社、保険会社など関連する会社
一社に集中して頼んだり、物件ごとに管理会社や保険会社を変えたりする。

・融資
現金、現金と融資、フルローン、オーバーローンなどで不動産を購入する。融資の期間も変える。

・金融機関
複数の銀行とつきあう。一行だけでは、その銀行の経営や方針の変更に左右されてしまうため。不動産投資信託の投資法人は、金融機関を適度に分散させる「バンクフォーメーション」を考える。

・税理士
顧問税理士のアドバイスだけでなく、単発で他の税理士の「セカンドオピニオン」を聞く。

実際の私のケース

私の場合は、2008年にRC物件1棟(3億1千万円)を都市銀行からのフルローンで購入しました。さらに、2010年にRC物件1棟(3億円)を地方銀行からのフルローンで購入しました。

当時は物件価格が下がり続けているデフレ状態でした。物件価格は下がったとしても下がり幅は少なく、価格は底に近いのでは?と思えたのと、都市銀行が個人にも不動産にフルローンを出していたタイミングで、それは長く続かないと考えたので、お金を借りられるだけ借りようと思っていました。

10億円までは拡大しようと思っていたのですが、当初の目的だった子どもの教育費用がそれほど必要ではなくなったので、途中で拡大はやめました。

本当は1億円ぐらいまでの物件を違うエリアでいくつか持ちたいと思っていたのですが、価格などの諸条件も考慮すると、なかなかそのような物件に出会えませんでした。

ご縁のあった2棟の物件は、当時自宅のあった東京の多摩地域にあり、築年数も同じぐらいで両方とも駅から近くありません。2棟目の管理会社を1棟目の管理会社に変更したので、管理会社も一社のみです。

この管理会社が家賃を回収して月に一度まとめて振り込んでくれるのですが、倒産など最悪のケースでは、回収した家賃を振り込んでもらえないということが起こるかと思います(節税も兼ねて経営セーフティ共済には加入しています)。

集中投資にはメリットもあります。まず、物件に目が届くこと。離れた場所に物件を持っていると、頻繁には行けませんが、近くだと気軽に物件に立ち寄ることができます。

最初に不動産投資について教えてくれた元夫の父は不動産で成功した人ですが、あるエリアに集中して物件を持っていました。

拙著『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』にも書きましたが、義父は「牛は毎日、エサをやったり、水をやったり、世話をしないといいミルクがでないものだ。不動産も同じで、きちんと手をかけないとリターンはえられないのだよ」と言い、きちんと管理されているか近くで見ていました。

私はその教えを守り、物件へはよく足を運んでいて、大家仲間からは「そんなに見に行くの?」と驚かれることがあります。

また管理会社が一社だと、連絡一つにしても、とても楽です。エリアについてよく知っているので、エリアの特性に合わせた募集や部屋作りができます。

部屋をたくさん持っていると、そのエリアの不動産会社に知ってもらえるので、リーシングが容易になります。それから修繕や部屋の原状回復工事についても、決まった業者さんに頼めばお得意様のようになるので、繁忙期でも優先して工事をやってもらえたりします。

とはいえ、分散のことを考えていない訳ではありません。

2014年には自分の住む場所を探しているときに見つけた、東京都中野区の平成元年築の木造の賃貸併用住宅(8千万円)を購入しました。新宿にアクセスのよい私鉄の駅から徒歩6分のところにあります。建物構造とエリア、駅からの距離、支払(現金を3割入れて残りを短めのローン)について、少しばかり分散できたのかと思います。

さらには2018年に、池袋駅にアクセスのよい私鉄の駅から徒歩1分と3分のワンルーム・マンションを2つ、現金で購入しました。所有物件の3つのうち2つは駅から10分以上離れているので、駅近のものを選びました。

地方や海外の不動産投資を考えた時、地元の人たちやそのエリアに東京から投資をしている人たちにヒアリングをしました。「xx川の向こうは全然需要がない」など、川一本だけで大きな需要の差があることを知ったり、「悪質管理会社に入居者がいるのに空室だと言われて家賃を取られていた」という話を聞いたりしました。

エリアをよく知らないと不安ですし、遠隔での賃貸にはむずかしさがあると感じています。けれどもペーパーアセットや手がかからないワンルーム・マンションだったら購入してもいいのではないかと思っています。

物件が多摩地域にあるため、都心の一等地のレジ物件やオフィス物件をペーパーアセット(不動産投資信託:REIT)で少しばかり持ちました。ホテルのREITも持っていたことがあるのですが、少し値段が上がったときに売却して利益確定してしまいましたので、またタイミングをみて購入したいと思っています。

海外不動産投資は失敗している人をたくさん見ているので、個別の物件の購入は難しいと考えて、アメリカやイギリスなどの先進国だけでなく、インドなどの新興国REITを少額購入してみたいと思っています。

現在は東京ばかりでなく大阪や名古屋のワンルーム・マンションや、平成元年築などの古い物件ばかりなので、今後は築浅の物件を持ちたいと思っています。積極的に物件を増やす気持ちはないのですが、売却しない限り、物件は増えてしまいますね。

投資用不動産業界に関する情報が毎週届く!
不動産投資塾新聞社メールマガジン登録はこちら

著者紹介

星野 陽子
星野 陽子

不動産投資家。著者。特許翻訳者。
東京都出身。外資系メーカー、シティバンク勤務を経て、イスラエル国籍のユダヤ人と結婚。子ども二人に恵まれるも離婚。フリーランスとして在宅で翻訳の仕事をしながら、シングルマザーとして子ども達を育てた。東欧からの移民の子で、14歳から働き、資産ゼロから財産を築いたユダヤ人の義父からは不動産投資を学び、投資物件(6億円)などの資産を築いた。著書に『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』『ユダヤ人大富豪に学ぶ お金持ちの習慣』『貧困OLから資産6億をつかんだ金持ち母さんの方法』がある。オンラインサロン「マネサロ」主宰。 オフィシャルブログも定期更新中。

関連記事

「お金は無いけど不動産を買いたい」という相談への答えは「●●が先!」

石川貴康の超合理的不動産投資術

2,441 view

「お金は無いけど不動産を買いたい」という相談への答えは「●●が先!」

円滑な不動産投資の実現において、重要な法律『借地借家法』について①

竹村鮎子弁護士の学んで防ぐ!不動産投資の法律相談所

1,369 view

円滑な不動産投資の実現において、重要な法律『借地借家法』について①

円滑な不動産投資の実現において、重要な法律『借地借家法』について②

竹村鮎子弁護士の学んで防ぐ!不動産投資の法律相談所

1,227 view

円滑な不動産投資の実現において、重要な法律『借地借家法』について②