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石川貴康の超合理的不動産投資術

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「旅するように暮らす」がコンセプトのOYOは不動産投資家への朗報か?

目次

「旅するように暮らす」というコンセプトで、OYO(オヨ)が鳴り物入りで登場しました。賃貸市場に対する煩わしい手順を、スマホだけで一括で完了できるようにし、簡単に住み替えができるというコンセプトです。

遊休不動産の活用方法として民泊やAirbnbが登場し、ホテル業界や旅館業界を震撼させましたが、今度は賃貸市場に黒船がやってきたという印象です。
賃貸市場は契約が煩わしく、物理的に相当な時間が取られます。こうした不便さを一気に解消しようということでしょう。

OYOはインド発のホテルベンチャーで、Airbnbのような存在です。しかし、日本市場ではAirbnbのようなビジネスではなく、賃貸市場に的を絞ったようです。

今回はこのOYOについて、不動産投資家の目線からレビューしてみましょう。
もちろん、新しいサービスでもあり、詳細はうかがい知れない部分もあるので推測も入りますが、そこはご容赦。

では、みてみましょう。

OYOのビジネスの特徴

OYOのビジネスの特徴を、以下のように整理してみます。

①物件検索から予約までを、オンライン上で短時間で完了できる
OYOは物件の検索から契約まで、すべてオンライン上で完了できます。
契約は1カ月からで、90日まではWebでの申込みが可能。90日を経過しても住みたい場合は、別途書面での定期借家契約をすることで、長期間住むこともできるようです。

②敷金、礼金、仲介料がゼロ
OYOでは、敷金、礼金、仲介料がかかりません。
日本の賃貸市場では、敷金、礼金、仲介料がかかるため、引っ越しの初期費用がかなりかかります。

最近でこそ、敷金0礼金0という物件が出ていますが、仲介料は必ず取られます。一般的に、敷金2カ月、礼金2カ月、仲介料1カ月、プラス前払い家賃1カ月で、最低でも6カ月分の家賃相当額を支払わなければなりません。
これは大きな負担です。

OYOでは、こうした敷金、礼金、仲介料がかからないため、引っ越しの初期費用が抑えられます。
ただ、その分は支払い家賃側に上乗せされているため、似たような物件でいえば、賃貸による家賃より高くなります。

短期間で住み替えるならば、こうした費用が抑えられるため、多大なメリットがあるでしょう。
「旅するように暮らす」というコンセプトに合致する内容です。

③駅近で設備があらかじめそろっている
OYOの物件は、駅近10分くらいをうたっています。
さらに、最初から部屋に設備がそろっています。
洗濯機、冷蔵庫、掃除機、テーブル、電気ケトル、ハンガー、ゴミ箱、TV、電子レンジ、エアコン、ベッド、デスク、チェア、照明器具、バスマット、カーテン、タオル、シーツ、キッチン用具、食器、Wi-Fi、などです。

生活に必要なものすべてが備えられているといってもよく、すぐに引っ越して暮らし始めることができそうです。

④さまざまな付帯サービスのパートナーが存在する
OYOでは、さまざまな付帯サービスのパートナーが存在していて、こうしたサービスは拡大予定のようです。

発表されている主なものは、カーシェアリングサービス、シェアオフィス、家事代行、家電や日用雑貨のレンタルなどのサービスです。
まさに、居住だけでなく、生活のすべてを旅するように構築できるという感じがします。

入居者にとってのメリット

入居者のメリットとしては、以下のようなことが考えられます。

①物件探しから契約までの物理的な煩わしさがない
OYOは物件探しから契約まで、すべてスマホで完結します。これは大きなメリットです。引っ越し先が遠隔地の場合は、絶大な効率化でしょう。

いちいち内見をし、不動産会社で対面で契約を交わし、やれ印鑑だ、保証人だ、印鑑証明だ、といった煩わしさがありません。また、「保証人から印鑑を押してもらってください」などと言われたり、面倒な書類の持参や郵送といった作業もいりません。

②光熱費の手続き、振込・精算・立合いなどの煩わしさがない
OYOは家賃をいちいち振り込む必要がありません。スマホでクレジット決済をすることができます。
また、光熱費の手続きも不要です。入居してすぐ電気・ガス・水道が使えるというのは、何度も引っ越しした経験がある人には、とんでもないメリットです。

場合によっては、使用開始時に入居者として立会いが必要なこともあり、ものすごく面倒なのですね。ガスが開くまで風呂に入れない、火が使えない、といった煩わしさもありません。

また、退去時の立会いも不要で、敷金返還もないのです。退去後は清掃費が取られますが、これは普通の賃貸でもかかることなので仕方ありません。

入居時も退去時もスムーズにこなせるというのは、まさにシェアリング・エコノミーといったところでしょうか。

③家電・家具不要、引っ越しの初期費用が抑えられる
最初から家電・家具がついているというのも大きなメリットです。日本ではこのようなサービスは稀ですが、海外のサービスアパートメントでは普通のことです。

また、海外の賃貸でも賃貸付けの競争力強化のために家電・家具付きは当たり前になってきています。お金がセーブできるので、入居者にとっては多大なメリットです。

国内での話ですが、最近知人の引っ越しを見ていて、やはりゼロからモノをそろえる場合は多大な費用がかかるなと驚いたものです。テーブルや椅子は安くありません。ラグやカーテン、家電、調理器具、食器と買いそろえれば、大きな金額になります。

こうした費用が抑えられるのは大きな魅力といえます。

ただし、すでに家電・家具を持っている場合はダブったり、邪魔になったりします。好みのものでない可能性もあります。
そういったことを差し引いても、引っ越しにかかるこうしたモノに関わる費用が抑えられるのは大きなメリットでしょう。

入居者にとってのデメリット

一方、デメリットとしては、以下のようなことが想定されます。デメリットは主に長く住む場合に生じるように感じます。

①長く住む場合、サービス費用が普通の賃貸に比べて高い
OYOは引っ越しの初期費用は抑えられますが、その反面、相対的に家賃が高くなります。だいたい1.2倍、1.3倍程度でしょうか。

公開されている家賃見込では、マンションタイプが月額10万円~100万円、一軒家タイプが月額30万円~100万円、シェアハウスタイプが月額5万円~8万円とのこと。さらに、別途共益費・清掃費といった管理費がかかります。

長く住むなら通常の賃貸に分があります。短い住み替えなどなら、圧倒的にOYOにコストメリットがあります。

②長く住む場合、通常の賃貸借契約をすることになる
OYOでは居住が90日を超える場合、改めて賃貸借契約を結ぶ必要が出てきます。つまり、一般の賃貸借になるわけです。
この辺は、日本の法律の規制もあり、致し方がないところです。
OYOの良さである、すべてスマホで済むといったことがなくなってしまいます。

しかし、こうしたデメリットは、長く暮らすといった普通の賃貸との比較や普通の賃貸への移行に関わる話です。

そもそも、OYOと賃貸を比較することが間違っているのかもしれません。暮らし方を変えようという提案でもあり、暮らし方で選べる選択肢の一つといった見方が必要かもしれません。

不動産投資家・大家にとってのメリットとデメリットとは?

不動産投資家や大家にとっては、OYOの登場は良いことも多いと思います。OYOが集客力を伸ばせば、以下のようなメリットがあるでしょう。

メリット:借り上げによる家賃収入の安定化
OYOは大家から物件を借り上げて、ユーザーに貸します。大家にとっては入居の有無にかかわらずOYOが借りてくれるので、家賃収入が安定します。
ある意味、家賃保証のサブリースのようなものです。

一方、大家にとってのデメリットがあるのか、というと、OYOとの取引形態が詳細に分からないので挙げにくいのが正直なところです。
しかし、現状のサービスから考えられる不動産投資家や大家にとってのデメリットを3つ挙げてみましょう。

デメリット①:入居者の質をどう確保するか
OYOは、保証人を取りませんし、契約時に保証会社を通すといったことはしません。これは大家にとって不安です。

とはいえ、クレジットカード決済なので、家賃未回収の恐れはないでしょうし、そもそもOYOが家賃保証しているに等しいので、お金の面でのリスクは低いでしょう。
また、入居者の質に関しても、同様に問題ないのではないかと思います。

デメリット②:駅近でないなどの競争力の弱い物件にとっては救いにならない
OYOに期待したいのは、賃貸付けが弱い物件でも借り上げてくれることですが、そうした期待には応えてくれなさそうです。
駅近をうたっていますから、駅から遠く、競争力のない物件はOYOのビジネス対象の俎上に載らないかもしれません。

デメリット③:設備投資が必要なため、事業コストアップ?
OYOとの契約形態が詳細には分かりませんが、備え付けの家具、家電などの投資はだれがするのか、ということです。

私の経験では、国内も海外も、こうした投資は大家の負担になります。
OYOもそうだとすると、大家にとっては追加投資ですし、常にメンテナンスが必要な消耗性の高い物品になるため、常に費用がかかり続けることになります。

OYOの登場は、不動産業者にとっては脅威か、福音か?

OYOの物件はオンラインだけではなく、不動産屋で紹介するサービス「OYO Partner 不動産」を展開するとのこと。
不動産業者にとっては、短期の賃貸物件の紹介が可能となることによりビジネス拡大の余地が出てきます。

一方で、一般賃貸がOYOとの競合にさらされるので、戦々恐々といったところでしょうか。パートナーとなるか、ならないか、さまざまな分析がこれからされていくことでしょう。

OYOの登場は不動産業者にとって、朗報となるか?
それは大家の持っている物件にもよりますし、OYOの契約形態にもよりますが、確実にいえるのはOYOがいろんな意味でこれからの賃貸での住まい方を先取りしているということです。

なによりも、今の遅れた不動産賃貸業界に対する、ちょっとしたショックにはなるでしょう。
特に、契約までの煩わしい流れがスマホで完了できるというのは、大きなインパクトです。

また、家電や家具付きというのも、日本の賃貸市場にサービスレベルの向上要求を突き付けています。
これには、大家としての私も心穏やかではありません。

追加投資が必要になるので、「これ以上、大家をいじめないで」と言いたくなります。
世間で思われているほど大家は左団扇ではありませんし、どちらかというとお金がかかる投資になっていて、大家業も大変なのです。

しかしながら、住まう人にはいいことですから、結局はこの方向に行くのでしょう。

住まいも、家電も家具も、必要なものは「所有」するのではなく、シェアして「使用」するという世界にサービスは移行していく。不動産業界にとって、OYOの登場はそんな未来を予想させる出来事といえるかもしれません。

著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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